ホームにうっかり忘れ物→「不審物」と勘違いされ駅パニック!電車も運行停止され…こんな場合、罪に問われるの?【弁護士が解説】

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2025年06月11日 12:00  まいどなニュース

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これは忘れ物?それとも…? ※画像はイメージです(tatsushi/stock.adobe.com)

いつものように満員電車に揺られ、Aさんが勤務先の最寄り駅のホームに降り立つと普段とは明らかに違う、緊迫した空気に包まれていました。改札へ向かうAさんの耳に、「駅構内で不審物が発見されたため、安全確認を行っております。そのため現在運転を見合わせております」というアナウンスが飛び込んできました。

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周囲を見渡すと物々しい装備の警察官が数名、駅員と共に規制線の内側で何かを確認しており、乗客たちは遠巻きにその様子を不安げに見守っています。Aさんも、このただならぬ事態に足止めを食らい、言いようのない不安感を覚えました。まさか“テロ事件”では、と最悪の事態も頭をよぎります。

その後、電車が運転を再開したのは1時間ほど後のことでした。Aさんは大幅な遅刻を余儀なくされ、その日の業務にも少なからず支障が出ました。周囲の乗客も、疲労と安堵が入り混じった表情で遅延証明書を手にそれぞれの目的地へと急いでいきました。

数日後、あの時の不審物騒動の原因が気になっていたAさんは、思い切って駅員さんに聞いてみました。駅員さんの話では、不審物は観光客が置き忘れた土産物だったことが分かり、中身に危険物は一切含まれていなかったようです。

それを聞いたAさんは、騒動を起こした原因が観光客の土産物だったことに、呆れるような安心したような複雑な気持ちになりました。

このようなトラブルが発生した場合、原因となった観光客は電車を止めてしまったことに対して何らかの責任を問われてしまうのでしょうか。まこと法律事務所の北村真一さんに聞きました。

ついうっかりの“忘れ物”が罪になる?

ー忘れ物が原因で電車の運行が止まった場合、罪に問われますか?

単なる忘れ物が原因で電車の運行が止まった場合は、直ちに刑事罰としての罪に問われる可能性は低いと言えます。忘れ物は通常、「過失」、つまりうっかりした不注意によるものですので、犯罪として処罰の対象とはなりにくいのです。

ただし民事上の責任、つまり損害賠償を請求される可能性はゼロではありません。鉄道会社は列車の遅延や運休によって、人件費の増加、振替輸送の手配費用、乗客への払い戻しなど、実際に損害を被ることがあります。

忘れ物が原因で大規模な遅延が発生した場合、鉄道会社がその忘れ物の持ち主に対して、これらの損害の賠償を求める権利は法的には存在します。しかし実際に鉄道会社が個人の忘れ物に対して損害賠償請求を行うケースは、極めて稀です。

ー故意に不審物を置くとどうなりますか?

単なる忘れ物とは全く異なり、明確な犯罪行為となると考えます。意図的に不審物を置き、鉄道の運行を妨害した場合には、偽計業務妨害罪(刑法第233条) に問われる可能性が非常に高いです。偽計業務妨害罪は、「虚偽の風説や偽計を用いて人の業務を妨害した者」を罰するもので、法定刑は3年以下の懲役または50万円以下の罰金と定められています。

実際に爆発物でなくても、爆発物と誤認させるような物を置いたり、脅迫的なメッセージを添えたりする行為も含まれます。駅に不審物を置く行為は、鉄道会社の安全確認作業や運行計画という「業務」を著しく妨害するものですから、この罪に該当すると考えられます。

単なる忘れ物で直ちに罪に問われることは稀ですが、社会に大きな影響を与える可能性があることは心に留めておきましょう。

◆北村真一(きたむら・しんいち)弁護士 「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないといわれる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)

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