浅輪直樹(演:井ノ原快彦)=『特捜9 final season』より(C)テレビ朝日 テレビ朝日系で2018年から放送されてきたドラマ『特捜9 final season』が、いよいよ今夜(11日 後9:00)最終回を迎える。2006年に始まった『警視庁捜査一課9係』から数えて、シリーズ通算20作目。浅輪直樹という“普通”の刑事の姿が、多くの視聴者の心に残る理由とは?20年にわたり演じ続けてきた井ノ原快彦が、節目の時を前にその思いを語った。
【場面写真】最終回にシリーズオールスターが集結! 浅輪直樹を演じた20年は「感謝しかない」
――20年にわたり同じキャラクターを演じ続けてこられたご経験について、どのように感じていらっしゃいますか?
【井ノ原】こんなにありがたいことはないですね。僕は本来、一つのことを長く続けられないから芸能人になったような人間なんですが、そんな自分が20年も一つの役をやらせてもらえたというのは、本当に感謝しかありません。しかも、これだけ長く続けられたというのも奇跡のようです。撮影期間中でなくても「浅輪直樹をやって」と言われたら、おそらくすぐにスッと入れる。体にしみつくほど続けさせてもらえたのが、本当にありがたいです。
“普通の人”を演じるということ
――2006年から17年まで放送された、渡瀬恒彦さん主演の『警視庁捜査一課9係』から通算20作目。当初新人刑事だった直樹も『特捜9 season1』(18年)で主任になり、『特捜9 season7』(24年)で班長に。浅輪直樹というキャラクターをどう演じてきましたか?
【井ノ原】実は、あまり深く考えたことがないんです。僕がいない時に、僕の話題が出ることで存在が浮かび上がるような、そんな演出や脚本にも生かされてきたと感じています。
直樹には強烈な個性があるわけでもなくて、本当に“普通”の人。しかも出世に興味がないタイプ。事件に巻き込まれた人たちのために、地道な捜査をいとわず真摯(しんし)に向き合う。肩書が変わっても中身は変わらない。だから、班長になっても特別気負うこともなかったですね。むしろ、いろんなことに駆り出されて意外と忙しかったです(笑)。
――“普通の人”が主役であることが、この作品の共感の源かもしれませんね。
【井ノ原】“普通”だからこそ視聴者の目線になれる。事件を彼の視点で見ることで、視聴者が自然と感情移入できる存在だったのかなと思います。改めて振り返ってみると、僕自身、役作りらしいことはしてこなかった。印象に残っているのは、渡瀬恒彦さんの言葉です。「お前は何もしないな。でもそれはすごいことなんだぞ」って言われたことがありました。最初は皮肉かなと思ったのですが、あとからその意味がわかってきました。役者って、どうしても“演じたがる”もの。でも、何もしないという選択もまた、ひとつの大きな表現なんだと気づかせてもらいました。
共演者と築いた「宝物のような関係」
――長年共にしてきた共演者たちについては?
【井ノ原】仲良しこよしという感じではなく、視聴者に楽しんでもらうことを一番に考えて、そのために言いづらいこともちゃんと話し合える。間違ったと感じたら謝って軌道修正できる関係。そういう仲間がいてくれたことは、本当に宝物です。
――20年続いた理由のひとつでもあるかもしれませんね。
【井ノ原】そう思います。シリーズが続いていくと、制作スタッフは入れ替わっていき、キャストが一番の古株になってくる。自分たちが作品の軸を保たなければという意識は常に持っていました。台本に書かれていることをそのままやるだけじゃなくて、現場でのアイデアや空気感を大切にして、柔軟に対応できるチームになったのは大きかったと思います。
――この経験を今後のキャリアにどう活かしていきたいですか?
【井ノ原】この20年で得た経験はどんな現場に行っても活きると思います。その時、その状況のベストは何かを考える。言うべきかどうか、動くべきかどうかを判断する。そういったバランス感覚は、実はキャンプに行った時にも使えるんですよ(笑)。ただ、この作品はこの作品。こだわりすぎないことも大事だと思っています。別の作品の現場に行ったら、そこでの“今”を楽しもうと思っています。
最終回を迎えるにあたって
――最後にファンへのメッセージをお願いします。
【井ノ原】20年という長い時間の中で、最初から見てくれていた方もいれば、最終回だけ見るという人もいると思います。どんな方にも「ああ、彼らは本当に刑事だったんだな」と思ってもらえるような終わり方にできたらいいなと思っていて。いつも通りの“水曜の夜”を、僕たちらしく届けたいと思っています。