
インド西部で242人を乗せた旅客機が墜落しました。離陸から墜落するまでの時間はわずか30秒。その間に一体、何があったのでしょうか?
【写真で見る】離陸の数秒後には…ゆっくり地上に落ちていく様子
高度約195mまでしか上がらず 医科大学の宿舎に墜落日比麻音子キャスター:
事故があったのは、イギリス・ロンドン行きの「エア・インディア171便」です。乗客は242人で、そのうち241人が亡くなり、1人が生存しました。
この飛行機は、インドのアーメダバード空港を出発しました。その付近には住宅街や寺院などが広がっています。
離陸から約30秒後、空港から約1.5kmしか離れていない場所に墜落しました。
墜落現場は、インド西部「メガニ・ナガル」という場所です。
周辺には、医科大学や集合住宅などもあり、医科大学の宿舎に墜落したということになります。
現時点でわかっているだけでも、医学生5人が亡くなっています。
現地メディアによると、60人以上がけがをしたということですが、まだ情報が錯綜していて全貌が明らかになっていません。
墜落までは約30秒ということですが、墜落するまでの映像からわかることを見ていきます。
空港から離陸しましたが、緩やかに高度が下がっていきます。
機体が少しゆらゆらとしているようにも見えますが、その後、地上に墜落。そして激しい炎と煙が上がっています。
一見すると、大きなトラブルがあったようには見えませんが、フライトレコーダーでは高度約195mまでしか上がっていなかったということです。
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日比キャスター:
エンジントラブルという可能性はあるのでしょうか。
航空評論家 小林宏之さん:
映像を見ると、やはり飛行機がその揚力を失っている、いわゆるエンジンの推力を失っているということで、二つのエンジンが同時に停止した可能性が考えられます。
日比キャスター:
映像を見ると、高度がほとんど上がらずに、ゆっくり地上に落ちていったということになりますよね。
航空評論家 小林宏之さん:
離陸直後はかなり通常に近い上昇率だと思いますが、離陸の数秒後には、もう推力・揚力がなくなったという動きから、可能性として、二つのエンジンが同時に停止してしまったことが考えられるのではないかと思います。
日比キャスター:
燃料トラブルやバードストライクの可能性はあるのでしょうか。
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航空評論家 小林宏之さん:
エンジンは正常であっても、エンジンに燃料を供給する、いわゆる燃料システムのトラブルによって、燃料がエンジンに供給されなかったということが一つの原因として考えられます。
もう一つの可能性としては、少ないですが両方のエンジンに鳥の群れが衝突して、同時に停止してしまった可能性も考えられます。
映像を見る限り、現時点ではバードストライクの可能性はかなり少ないと考えていいと思います。
日比キャスター:
整備の不具合に関してはどうでしょうか。
航空評論家 小林宏之さん:
現時点では、すべての可能性を排除できません。
定期点検、あるいは出発前の点検も行っていますが、それでも不具合が生じてしまうこともあると思います。
場合によっては、正確な整備がされていなかったという可能性も一つ考えられると思います。
日比キャスター:
小林さんによると、今回の機体はボーイング787で、2011年に就航したということです。
世界では2000機以上、日本では141機が運行されていますが、今回のような大規模事故は初めてのことだということです。
航空評論家 小林宏之さん:
機体の考え方も最新で、14年くらいなので、最新鋭の飛行機だと言っていいと思います。
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日比キャスター:
現時点で、墜落の原因がわかっていません。アメリカの国家安全運輸委員会がインド当局の支援のため、調査チームを派遣しています。
また、日本でもボーイング787は使われているので、日本の国交省もボーイング社などに対して情報提供を求めています。
調査は、今後どのように展開していくのでしょうか。
航空評論家 小林宏之さん:
中心なのは当然インド当局ですが、飛行機の製造国であるアメリカから調査チームが送られてくると思います。日本でも141機運行しているので国土交通省もかなり関心を持っています。
その調査結果には非常に関心を持って、場合によっては何らかの措置をとらなければいけないことも出てくる可能性もあると思います。
日比キャスター:
この機体自体は、6月10日にも羽田空港に来ていました。この航空会社は、どういった会社なのでしょうか。
航空評論家 小林宏之さん:
この航空会社は、インドで一番大きいです。
東南アジアの中でも、非常に安定した航空会社と言えるでしょう。決して信頼性がない航空会社とは言えません。
日比キャスター:
ただ、こういったニュースも入ってきています。
タイからインドに向かう別のエア・インディア機(乗客156人)において、離陸後に爆破予告がありました。
引き返し、緊急着陸しましたが、ロイター通信によると爆発物は発見されませんでした。
もちろん因果関係はわかりませんが、引き続き、こういった影響も出ることは考えられるのでしょうか。
航空評論家 小林宏之さん:
はい。インドとパキスタンは、かなり厳しい状況になっています。
機体のトラブルというより、政治的・治安的な問題になってくるのではないかと思います。
日比キャスター:
ボーイング787は、日本でも141機が運行されているということですが、利用する人はかなり心配だと思います。今後どういったところに注目していけばいいのでしょうか。
航空評論家 小林宏之さん:
ボーイング787という飛行機は、非常に安定した信頼性の高い飛行機です。エンジン自体も、非常に信頼性が高いです。
たしかにバッテリー関係で色々なトラブルがありましたが、飛行機が墜落した、あるいは全損事故ということはありませんので、大きな心配はないかと思います。
ただ、今回の事故原因で新たなトラブルが見つかった場合は、製造会社のボーイング社、あるいはアメリカの航空当局が何らかの対策や改善も必要になってくるケースもあると思います。
ただ、事故調査には今後少なくとも1年近くかかるので、できるだけ早くの原因究明が待たれるのではないかと思います。
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<プロフィール>
小林宏之さん
航空評論家
元日本航空機長・首相特別便機長
入社以来42年間で地球800周分を飛行