実写版「リロ&スティッチ」に大満足のマンガ家、その裏でふと思う「白雪姫とは何だったのか?」

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2025年06月15日 13:31  ITmedia NEWS

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 ディズニーの実写映画「リロ&スティッチ」が6月6日に日本でも公開され、週末3日間で興業収入が約5億6300万円、観客動員数は約38万人を記録しました。一足早く公開した米国でも3週目でランキング1位を継続するなど世界中で大ヒットとなっています。さっそくボクも見てきたところ、実写化に際しての“改変”のうまさに感銘を受けました。


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 今作は、2003年に日本で公開されたアニメ映画の実写化作品です。両親を亡くし姉妹2人で暮らすリロとナニ、2人だけでの生活に限界を迎えつつあるなか、乱暴者のエイリアンであるスティッチに出会うことで二人の生活が大きく変わっていく……というのが大まかなストーリーですが、今回の実写映画ではリロとナニの生活がクローズアップされています。


 特に、ナニについてかなり丁寧に描かれている印象でした。リロを育てるために、自分の夢を捨ててまで働いているのにうまくいかず、福祉施設にリロを引き取ってもらわないといけないところまで追いつめられてパンク寸前の彼女の姿をじっくりと描いているので、序盤は見ていて結構しんどかったです。イタズラを繰り返すリロに対する周りの人の態度なども、アニメに比べるとリアルかつシリアスに映るので、アニメのイメージを期待していると結構驚くかもしれません。


 しかし、ハワイにおける貧困層として生きるリロやナニの状況を鮮明に描くことで、ファンタジー要素の強いリロ&スティッチの世界観をうまく実在の世界に落とし込んでいるなと思いました。アニメのとき以上に苦しい生活を送る2人をサポートする、今作オリジナルのキャラクターの配置も素晴らしく、全体的にうまく元の作品を改変できているなと感心しました。


 一方でスティッチと二人の関わりやスティッチの心情の変化についてはアニメほど丁寧に描かれていないので、スティッチの行動に違和感を覚えたりもします。他にも不満な点が決してないわけではありませんが、全体的な完成度の高さ、何より原作のリロ&スティッチをしっかり踏襲している内容は素晴らしく、見終わった後の満足感は相当高かったです。


 こうなると首を傾げてしまうのが、同じディズニーの実写映画「白雪姫」です。詳しい感想は過去のマンガを読んでいただきたいのですが、作り手の思想が強く影響した結果、ストーリーがメチャクチャになってしまい、かなりの不評を買ってしまいました。白雪姫を演じたレイチェル・ゼグラーさんのアニメ版を否定するような言動も残念でした。


 リロ&スティッチにせよ、白雪姫にせよ、元になる作品はどれもディズニーを代表する名作。原作にしっかりリスペクトを持ったスタッフやキャストが取り組めば、面白くならないわけがありません。今回のリロ&スティッチは、それを証明してくれたと思います。この大ヒットを受け、ディズニーが今後どのような実写映画を生み出していくのか、注目していきたいと思います。


●著者紹介:サダタロー


1998年にテレビ番組「トロイの木馬」出演をきっかけに漫画家デビュー。代表作は「ハダカ侍」(講談社、全6巻)、「ルパンチック」(双葉社、1巻)、「コミックくまモン」(朝日新聞出版、既刊7冊)など。現在、熊本日日新聞他で4コマ漫画「くまモン」を連載中。Pixivはsadataro、Twitterは@sadafrecce。


●連載:サダタローのゆるっと漫画劇場


漫画家のサダタローさんが、世界初の電脳編集者「リモたん」と一緒に話題のアレコレについてゆる〜く語るまんが連載。たぶん週末に掲載します。連載一覧はこちら。過去の連載はこちらからどうぞ。



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