京都市在住の画家・キムラトモミさんが描く「ネコに変身イラスト」が猫好きたちを和ませている。お客さんを猫に見立てて描く変身似顔絵だ。飼い主が猫に変身し、愛猫と一緒に描いてもらったり、描いてもらった絵を結婚式のウェルカムボードに使ったり。京都の人気猫スポット「寺院風猫アートミュージアム 猫猫寺」で個展開催中のキムラさんを訪ねた。
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キムラさんが「ネコに変身イラスト」を始めたのは、今から約11年前。自身の個展で「在廊中、来場者の方々に喜んでもらえる何かができたら」と始めた。その後、個展のときだけでなく、猫関連のイベントでも披露すると次第に人気に。これまで年間200〜300人を描いてきたという。
「SNSのプロフィールにしたい」「結婚式のウェルカムボードに」「84歳のおばあちゃんを猫にして、誕生日プレゼントしたい」など、お客さんのニーズはさまざま。中には「猫の私が亡くなった愛猫を抱っこしている姿を描いてほしい」「猫アレルギーで実際には触れないので、いっそ猫になりたい」「猫の私、今飼っている子、亡くなった子がみんなで一緒に野原で遊んでいる光景を」などといったリクエストもあったそう。
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「普通の似顔絵だと、その人がコンプレックスを抱いている部分が誇張されたり、気恥ずかしく感じたりすることもあると思うんですけど、自分自身が猫になってしまえばそういうこともないし、愛する猫ちゃんと同じ外見になれるという親近感もあって、みなさん、すごく喜んでくれています」（キムラさん、以下同）
ミニ色紙（13.5×12cm、1名1500円税別）の場合、オーダーを受けると20〜30分ほどで出来上がる。好きなものや色、性格、趣味などを聞き、その人をどんな柄の猫にしようかとイメージを膨らませる。飼っている猫と一緒に描くときは、愛猫の写真を見せてもらう。「たとえば飼っている猫がいつも遊んでいるおもちゃも一緒に描いたり、音楽や釣りが趣味の方なら、楽器や釣り道具を入れてみたり。思いつくまま、自由に描いています（笑）」
「前に一度、描いてもらった」という男性（64）は「顔がライオンみたいに勇ましく堂々とした猫だったので、他人からみたら自分はこんなふうに見えているんだと（笑）でも、周囲からは『雰囲気がよく似ている』と褒められ、自己肯定感が上がり、なんだか元気がでました」と話す。この日描いたのは全部で5人。完成した作品を受け取ったとたん、みんな笑顔に。大事そうに色紙を持って帰っていた。
キムラさんは京都精華大学造形学部出身。在学中は主に銅版画を学んだ。卒業後、精神障害者支援施設勤務を経て、精神保健福祉士の国家資格を取得。病院の精神科で訪問看護やデイケア、就職支援などを担当した。
「仕事はすごくやりがいがありましたが、仕事に力を注ぐと、それだけ絵を描く時間がなくなって絵から離れてしまう、というジレンマがありました。40歳になる前、病気で入院したのを機に、本当に自分がやりたいことをやって生きようと決め、思い切って退職し、本格的に絵を描くようになりました」
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社会人として働き始めたころ、1匹の黒猫との出会いがあった。名前は「チハトマ」（メス）。キムラさんにとって初めて飼う猫だった。研修の出先で、子猫4匹を保護したという女性から「1匹預かって」と託されたのがきっかけだ。「仕事で落ち込んだり辛いことがあったりしたとき、チハトマはいつも私を元気づけてくれました」
チハトマが17歳で亡くなると、ロスで相当塞ぎ込んだが、あるとき、住んでいたマンションのゴミ置き場で母猫と子猫3匹が保護され、「やんちゃな子なので猫を飼ったことのある人じゃないとなつかないから」とその中の1匹を引き受けることに。その子が今一緒に暮らしている三毛の「牡丹（ぼたん）」（メス、11歳）だ。キムラさんの作品には黒猫や三毛猫がよく出てくるが、チハトマと牡丹がモチーフになっている。2匹はキムラさんの創作活動をいつも励まし、支えてくれる存在だ。
6月1日には、芦屋市立美術博物館で開催中（2025年3月15日〜6月15日）の「隙あらば猫 町田尚子絵本原画展」で「猫に変身イラストワークショップ」を開催。変身イラストの描き方を初めて教えた。定員20名は3日ですぐに埋まるほどの人気だったという。
変身イラストだけでなく、猫をモチーフにした絵画、壁画、挿絵、造形などの作品を数多く手がけているキムラさん。「前に描かせてもらった方が、友だちを紹介してくれたり、私の個展を観にきて作品を気に入って購入してくれたりすることもあり、変身イラストを通じていろんな方々との出会いがあります。これまで描かせていただいた方々や猫ちゃんたちは、私にとってかけがえのない宝物。これからも人や猫ちゃんとの繋がりを大切にしながら、幸せを感じてもらえるような作品を制作していけたらと思っています」と話した。
（まいどなニュース特約・西松 宏）
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