トップ4台が30秒以内の歴史的大接戦! クビサ組フェラーリ499Pが第93回ル・マン24時間を制す

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2025年06月15日 23:10  AUTOSPORT web

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ロバート・クビサ/イェ・イーフェイ/フィル・ハンソン組の83号車フェラーリ499P(AFコルセ)
 6月14〜15日、フランス西部のサルト・サーキットで2025年WEC世界耐久選手権第4戦・第93回ル・マン24時間レースの決勝が行われ、終盤まで続いた僅差の戦いを制し、非ファクトリーチームであるAFコルセの83号車フェラーリ499P(ロバート・クビサ/イェ・イーフェイ/フィル・ハンソン)が総合優勝を飾った。フェラーリはこれで3年連続でル・マン24時間レースを制覇している。

 2025年のル・マンは前年から一転、安定した天候の下で開催された。公式予選でフロントロウを独占したキャデラックVシリーズ.R勢は序盤からポジションを下げていき、代わって上位に進出したのは、今季WEC開幕から連勝を続けているフェラーリ499Pの3台だった。これに、クラス最後尾21番手スタートだった6号車ポルシェ963が絡む展開となり、夜の戦いへと突入。

 未明、レース折り返しを前に導入されたセーフティカーにより各車のギャップは霧散し、8号車トヨタ GR010ハイブリッドが一時首位を奪う走りを見せるも、次第に3台のフェラーリがポジションを巻き返していった。

 スタートから16時間が過ぎても、12台がリードラップに残る接戦となるなか、51号車フェラーリは首位走行中、ピットレーン入口での単独スピンにより83号車フェラーリへとポジションを譲る。そして残り2時間強のところから2台のフェラーリをパスした6号車ポルシェが、ポディウム圏内へと進出した。

 終盤はピットシークエンスがオフセットした51号車フェラーリが勝機を伺うも、83号車のチェッカードライバーとなったクビサは盤石の走りを見せてポジションを堅持し、プライベートエントリーとなるイエローのフェラーリが伝統の一戦を制した。4位の50号車フェラーリまでは、わずか29秒666という激戦だった。

 終盤まで5番手につけていたトヨタGAZOO Racingの8号車GR010ハイブリッドは、ピットアウト直後に左フロントにトラブルが発生。ナットが外れたと見られ、最終的にはホイールが脱落してしまう。スロー走行でコースを1周してピットへと戻り、修復作業を行って大きく順位を下げた。7号車トヨタは複数回のペナルティを受けるなど厳しい展開となったが、最終的には1周遅れの6位でフィニッシュしている。

 LMP2クラスはインターユーロポル・コンペティションの43号車オレカ07・ギブソン(ヤコブ・スミエコウスキー/トム・ディルマン/ニック・イェロリー)がクラス優勝。LMGT3では、マンタイ・ファースト・フォームの92号車ポルシェ911 GT3 R(ライアン・ハードウィック/リカルド・ペーラ/リヒャルト・リエツ)が栄光を手にしている。


■痛恨のスピンで首位陥落

 現地14日(土)16時のレーススタートから18時間、フィニッシュまで残り6時間となった時点でのトップは51号車フェラーリ499P(フェラーリ499PAFコルセ)。僅差の2番手はサテライトの83号車フェラーリ、さらにもう一台の499Pである50号車(フェラーリAFコルセ)が加わり、跳ね馬勢がワン・ツー・スリー体制を築いている。

 これに6号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)と、夜間に一時トップに立った平川亮組の8号車トヨタGR010ハイブリッド(トヨタ・ガズー・レーシング)が続きトップ5を形成。小林可夢偉がドライブする7号車トヨタは8番手だ。

 LMP2クラスはインターユーロポルの43号車オレカがクラス首位を快走中。LMGT3クラスでは21号車フェラーリから首位の座を奪った92号車ポルシェがトップに立っている。

 この18時間目は、51号車を駆るアレッサンドロ・ピエール・グイディが後続を引き離し、イェの83号車とのギャップを7秒から24秒に拡げた。今大会6回目のフルコースイエロー(FCY)もこの時間帯に出された。ごく短いピリオドだったが、7号車トヨタと8番手を争っていた38号車キャデラックVシリーズ.R(キャデラック・ハーツ・チーム・JOTA)は、これが運悪く燃料補給のタイミングと重なったことで不利益を被り5号車と4号車のポルシェ963ペアの間、11番手に下がっている。

 19時間目の初め、LMGT3クラス6番手を走る78号車レクサスRC F GT3(アコーディスASPチーム)がポルシェコーナーでクラッシュ。フィン・ゲルシッツがマシンをピットまで戻したが、ボディ左側のほか左リヤの足回りにダメージを負いガレージに収められた(その後リタイア)。この際、デブリ回収のため短いFCYが入っている。

 それからまもなく、首位の51号車がピットエントリーで単独スピンを喫しタイムを失う。これにより83号車がトップに浮上。対して51号車は姉妹車50号車の4秒後方、3番手に順位を下げた。4番手6号車ポルシェとは9秒差だ。

 フィニッシュまで残り4時間となるのを前に平川亮がドライブする8号車トヨタが、左フロントホイールに起因するアクシデントでガレージへ。約17分の修復作業後にコースに復帰するも5番手から7周遅れの19番手となっている。

 約30分後にはLMP2クラスの3番手を走っていた28号車オレカ(IDECスポール)も、同様に右リヤのホイールが外れるアクシデントでストップする悲劇に見舞われる。これによりふたたびFCYが入るが、各クラスの大勢には影響を与えていない。


■みたびのワン・ツー・スリー崩壊

 20時間目は51号車が姉妹車50号車をアンダーカットし2番手に浮上するも、終盤にニクラス・ニールセン駆る50号車が再逆転し2番手に返り咲く。その後51号車はややペースを欠き、残り2時間10分で6号車ポルシェにもコース上でかわされ4番手にダウンした。

 残り2時間6分でのトップ3同時ピットインで、マット・キャンベルの6号車が短いピットストップで50号車を逆転。ピットイン前は約40秒あった83号車とのギャップを17秒に縮め、首位に対してプレッシャーを与える。

 4番手となった51号車は、残り1時間10分のピットストップで表彰台圏内に戻るが、チームからのオーダーでアントニオ・フォコがドライブする50号車に順位を譲っている。その50号車はフェラーリのワン・ツーを完成させるべく、ケビン・エストーレ駆る6号車攻略を図る。残り50分の段階で両者の差は1.2秒だ。

 残り40分でラストピットを迎えた83号車は、ドライバーはクビサのままタイヤ交換をして最終スティントへ突入すると、そのままトップを維持して栄光のチェッカーフラッグを受けた。これによりフェラーリ499Pは2023年の初参戦・初優勝からル・マンで3連覇を達成している。またクビサ、イェ、ハンソンはいずれもル・マン初優勝。ポーランド人と中国人ドライバーの総合優勝も初の快挙となっている。

 総合2番手を争う6号車ポルシェと50号車フェラーリのバトルは、残り30分でフォコがカーティングでコースオフしたことで勝負アリ。6号車はトップから14.084秒の2位でフィニッシュした。さらに、このミスはピットタイミングのずれによってラストピットの給油量が少ない51号車の逆転をもたらすことに。

 レース最終盤、赤い499Pはコース上で2度順位を入れ替えたが、その後はチームからの指示によりポジションキープに移行。結果、51号車が3位表彰台を獲得し、50号車は4位フィニッシュとなった。

 ポールポジションからレースをスタートした12号車キャデラックVシリーズ.Rが5位。終盤にFCY中のスピード違反によるドライブスルーペナルティを受けた可夢偉の7号車トヨタが6位。7位以下は5号車ポルシェ、38号車キャデラック、4号車ポルシェと続き、35号車アルピーヌがトップ10リザルトを締めくくった。初参戦のアストンマーティン・ヴァルキリーは2台揃って完走を果たし、ホイール脱落のトラブルに見舞われた8号車トヨタも16位でチェッカーを受けている。


■“天国から地獄”からの再逆転

 LMGT3クラスはスタートから18時間を経過した段階で、後続に1分近い差をつけていたマンタイの92号車ポルシェが盤石も盤石の走りを披露する。

 これを追いかける21号車フェラーリ296 GT3(AFコルセ)は残り4時間半の時点で、一時その差を50秒としたが、その後はふたたびギャップが増え、1分〜1分10秒の差を保ったまま膠着状態に。その差は最終的に33.259秒に減ったものの、ディフェンディング・ウイナーは最後までポジションを譲らずル・マン2連覇を達成した。

 トップ2の後ろでは27号車アストンマーティン・バンテージAMR GT3エボ(ハート・オブ・レーシング・チーム)と81号車シボレー・コルベットZ06 GT3.R(TFスポーツ)が表彰台をかけた“静かな戦い”を展開。最終盤までピットタイミングごとに順位を入れ替える展開が続くなか、コルベットが表彰台の最後の場所を獲得している。

 今年が自身7度目のル・マン挑戦となった日本人ドライバー、木村武史が乗り込んだ57号車フェラーリ296 GT3(ケッセル・レーシング)は、安定した走りでトップ10圏内での走行を続け、最終的にクラス7位入賞を果たした。

 一方、WECフル参戦2年目の佐藤万璃音が乗り込んだ95号車マクラーレン720S GT3エボ(ユナイテッド・オートスポーツ)は、メカニカルトラブルの影響で無念のリタイアとなっている。

 LMP2クラスは、残り6時間の時点で1分半ほどあった43号車オレカ(インターユーロポル・コンペティション)と48号車オレカ(VDSパニス・レーシング)のタイムギャップが1時間後には約5秒に。

 両車はその後も約5秒から15秒のギャップを維持した状態でLMGT3クラスのトップ争いと同様に、一歩も引かないバトルを展開した。それでもトップの座を譲らないインターユーロポルが有利にレースを進めていたなか、フィニッシュまで残り35分でクラス首位にまさかのドライブスルーペナルティの裁定が下る。理由はピットロードでの速度違反だ。

 ペナルティの消化後、ニック・イェロリー駆る43号車は2番手に後退する。これにより48号車が逆転勝利を飾るかに思われた。しかし、エステバン・マッソンがドライブするマシンはトラブルからか、ペースが著しく低下。通常のラップタイムより20秒以上遅い4分台のタイムを繰り返す。この間にイェロリーがトップ車両に接近し、フォードシケイン前で一気にオーバーテイクを決めて再逆転に成功すると、一度はこぼれ落ちたかに見えたクラス優勝を手にしている。

 VDSパニスの48号車は最後までペースが回復しなかったが、それまでに築いていた“貯金”のおかげでクラス2位を確保し、LMP2プロ・アマクラスエントリーのAO・バイ・TFの199号車オレカが3位表彰台を獲得するとともにクラス優勝を果たしている。

 WECの次戦となる第5戦は、7月11〜13日にブラジルのインテルラゴス・サーキットで行われるサンパウロ6時間レースだ。

[オートスポーツweb 2025年06月15日]

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  • フェラーリ3年連続であると同時に23年・51号車、24年・50号車、そして今年は83号車と毎大会車体が違うこと。さらに今年は(一応)カスタマーでの優勝。そしてトヨタがいない表彰台が嬉しすぎる!
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