はっしーはっぴーさん “売れるまで軽トラキャンピングカー住みます芸人”として、2021年から軽トラキャンピングカーで生活を続けているお笑いコンビ「コンピューター宇宙」はっしーはっぴーさん(30歳)をご存知だろうか。
彼はなぜ芸人を志し、軽トラキャンピングカーで暮らすようになったのか。今回は、詳しい経緯について直撃した!
◆「目立ちたい」芸人を目指した理由は取捨選択の結果
生まれは大阪だが、小学校低学年から神奈川で育ち、友達とコンビを組んで漫才をするなど、目立ちたがり屋な少年だった。とはいえ、「コアなお笑い好きではなかった」と話す。
「芸人って誰かに憧れを持って目指した人が多いけど、僕は特にないですね。テレビに出れるようになってからもいろんな芸人さんに会えて、嬉しいことは嬉しいんだけど、憧れというよりライバルって感じですね」
はっしーはっぴーさんがお笑い芸人を目指した理由を聞けば、「取捨選択」の結果だとキッパリ。
「とにかく『目立ちたいな』と(笑)。進路を考えたときに、容姿がカッコよかったらジャニーズだっただろうし、歌がうまければミュージシャンだったと思う。そういうなかで取捨選択して、『お笑いならばイケるかも?』って」
◆養成所を選ぶ基準は「安さ」だった
高校卒業後、松竹芸能の養成所に通ったはっしーはっぴーさん。数あるお笑い養成所の中から、松竹芸能を選んだのは「どこよりも学費が安かったから」。
「当時は松竹の養成所を卒業したら、ほとんどが所属できたんですよ。ダメでも仮所属で1年何かしらお手伝いをしたら所属できる。よっぽど面白くないとか問題がなければ所属できる環境だったんですが、僕のコンビは所属できなくって……」
その頃にコンビを組んでいた相方は、結婚して子供が産まれたばかりだった。そんな事情から活動を続けることが難しく解散してしまった。そして次に考えたのは、新しい相方を探すことではなく……。
「養成所の中で、松竹の次に安かったのが今所属している太田プロでした(笑)。太田プロの養成所は100人ぐらい入学者がいるんですが、卒業できるのは20組とかで、そのうち所属できるのは7組でした」
狭き門をくぐり抜け、見事に所属することができた。それを本人はこう振り返る。
「僕は面白いっていうよりも19歳でとにかく若くて元気で『なんでもやります!』って言ってたのが評価されたみたいです。『お前はなんか元気でいいぞ!』って(笑)」
最近では、メディアで見る機会も多くなってきたが、本人曰く「25歳までには絶対に売れるだろ!」と信じて疑わなかったようだ。しかし、現実はなかなか厳しかったそうだ。
◆25歳までに売れる予定が全く売れず…
はっしーはっぴーさんは現在、芸歴10年で30歳。
「全然売れなくて、普通に毎日バイトをしていました。朝8時から夕方17時まで警備のバイトをして月収15万円。バイトで生活している自分を振り返って、『覚悟が足りないな』と思ったんです」
そこで彼がとった行動は、“バイトを全て辞める” だった。しかも貯金はゼロ。バイトを辞めた先に勝算などはあったんだろうか?
「全然なかったです!バイトを辞めてすぐに事務所まで行って、『コンピューター宇宙のはっしーはっぴーです!このたびバイトをぜんぶ辞めました!仕事ください!』と挨拶しました」
結局もらえた仕事は有名バラエティ番組のリハーサル要員の仕事だった。ちなみに、今回のインタビューに同席していたマネージャーさん曰く「芸歴1、2年目の子がやる仕事でしたね……」とのことだ。
「それでも芸能に関する仕事だったので、僕にとっては警備の仕事よりも大きな意味がありました」
◆売れるために考えた3択
とはいえ、仕事が継続的に入ってくることはなく、次に考えた策が、現在の形である“軽トラキャンピングカーに住む”だった。
「もうこうなったら『家出よう!』と。その頃、家賃6万円くらいのアパートに住んでいたんですが、そこを出てホームレスになるか、事故物件に住むか、軽トラキャンピングカーに住むか……この3案を思いついて。
ただ、ホームレスと事故物件に住んでる芸人は前例があったので。軽トラキャンピングカーを自作して住んでる人はいないなって。ちょうどその頃、軽トラキャンピングカーブームが来ていたので、“これはいけるぞ!”と確信しました」
この選択はまさに大当たり。「水曜日のダウンタウン」や「アメトーーク!」などの人気番組に出演が決まった。
はっしーはっぴーさんは「よし!ここで売れるぞ!」とガッツポーズしたものの、そう簡単にはいかなかった。
◆苦しい時期を救ってくれたチャンス大城の言葉
「どどっと仕事が増えたけど、半年くらい何もない時期があって。実家に帰ったらお母さんから『次は何でるの?』と聞かれて、予定が立っていなかったのでしんどかったですね。一部の芸人の間でも『あいつは一時期出ただけ』『売れないよ』と陰口を叩かれたりもして……」
落ち込んでいた彼を救ってくれたのは、人気芸人のチャンス大城さんの言葉だった。
「チャンス大城さんに仲良くしていただいているんですが、もうずっと売れているように見えているけど、実は僕みたいに人気番組に出たのに跳ねないっていうのを何回も何回も繰り返しての今だって教えてくれて。『そんなに焦らんでもいいよ』って言ってくれたんです」
芸人になる以前は「憧れている人はいなかった」と話していたが、今となってはチャンス大城さんをはじめ、尊敬する人ができたと話す。
「あとは『アルコ&ピース』の酒井(健太)さん。僕は“酒井軍団”なんですが、『水曜日のダウンタウン』や『さんまのお笑い向上委員会』に出演できたのもアルコ&ピースの酒井さんがプッシュしてくれたおかげなので。早く売れて恩返しがしたいですね。また、元太田プロで今は心霊系YouTuber『オカルトスイーパーズ』のターチャイさんには、お笑いの全てを教えていただきました」
お世話になっているのは芸人だけではない。音楽業界の大物にも可愛がられているそうだ。
「ロックバンド『ヤバイTシャツ屋さん』ヴォーカルのこやま(たくや)さんにはずっと可愛がってもらっています。SNSの使い方や、エンタメをやる上で大切なことを沢山学びました。こやまさんのソロ活動の“寿司くん” のライブでは、物販の手伝いをさせてもらったり。今度はコラボグッズも出すんです」
◆「売れるためなら何でもやる!」
誰よりも「売れること」に貪欲だと語るはっしーはっぴーさん。稀に「お前は何も考えていない方がいい!」と指摘されることもあるようだが……。
「切り絵もやっているんですが、これも花火職人か切り絵をやっている芸人が他にいなくて、でも花火だと夏しか活躍できないから切り絵の方がいいだろうなってことで。
他にもバルーンアート、占い、パワースポット巡り、VRスポーツ……売れるために若手芸人が手を出しそうなことは全てやりました。僕はめっちゃ打算的です。軽トラキャンピングカーに住みはじめたのも“売れるため”。
僕は高卒なので学歴はないですが、ある意味で頭はいいと思います。みんな早く気づいてほしい(笑)。とにかく売れるためならなんでもやる貪欲さは誰にも負けません!」
そんなはっしーはっぴーさんの近々の目標を聞くと「賞レースで結果を出すこと」だと話す。
「今年で10年目なので、M-1やキングオブコントでそろそろ結果を出したいです。あと、今はバイトはしていませんが、やっぱり収入は安定していないので、お笑いの仕事だけで月収15万円もらえるくらいになりたいですね!」
“売れるまで軽トラキャンピングカー住みます芸人”の今後やいかに!?
<取材・文/吉沢さりぃ、撮影/長谷英史>
【吉沢さりぃ】
ライター兼底辺グラドルの二足のわらじ。著書に『最底辺グラドルの胸のうち』(イースト・プレス)、『現役底辺グラドルが暴露する グラビアアイドルのぶっちゃけ話』、『現役グラドルがカラダを張って体験してきました』(ともに彩図社)などがある。趣味は飲酒、箱根駅伝、少女漫画。X(旧Twitter):@sally_y0720