51号車フェラーリ499P(フェラーリAFコルセ) フェラーリは、6月14〜15日に行われたWEC世界耐久選手権第4戦ル・マン24時間レースで、ワークスマシンがサテライトチームであるAFコルセの83号車に勝利を奪われたことをまったく気にしていないと述べた。レース終盤、ワークスである『フェラーリAFコルセ』の499Pは2台ともエンジントラブルで失速を喫していた。
■3年で3台のフェラーリが勝利した“意味”
フェラーリの耐久レース部門グローバル責任者、アントネッロ・コレッタは、信頼性の問題でフェラーリの表彰台独占のチャンスが阻まれたにもかかわらず、ロバート・クビサ/イェ・イーフェイ/フィル・ハンソンの3人が獲得した勝利を「素晴らしい結果」と評している。
フェラーリは日曜日の午前中、トップ3を形成して無敵の状態に見えたが、ワークス車両である50号車と51号車の両ドライバーは、レース終盤にエンジンを保護するよう指示され、勝利のチャンスを逃した。
これらのトラブルにより、ケビン・エストーレ/ローレンス・ファントール/マット・キャンベルが駆る6号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)は、優勝した83号車にもっとも近いライバルとして2位に浮上した。なお、83号車はWECのマニュファクチャラーズポイント獲得資格は保持していない。
コレッタは、3年連続で異なるカーナンバーのフェラーリがル・マン優勝を飾ったことに喜びを表明し、ハイパーカー時代におけるフェラーリの完璧な勝利記録をサルト・サーキットで維持できたのは83号車のおかげであると語った。
「この勝利は非常に重要だ。なぜなら、すべてのフェラーリがまったく同じであることを証明したからだ」とコレッタはレース後、集まった報道陣に語った。
「これは、ル・マン・ハイパーカー、GT3、そしてフェラーリが製造するすべてのレーシングカーにおける我々のマシンの優れた品質を表している」
「我々の歴史には、いくつかのスクーデリア(プライベートチーム)による多くの勝利が含まれている。アメリカでは、スクーデリアNARTが最も重要なスクーデリアのひとつだった」
「AFコルセはフェラーリの第一パートナーであり、ピットボックスの片方の側ではオフィシャルカー、そしてもう片方の側でプライベーターカーの管理をしてくれている」
「だが結局のところ、我々はフェラーリだ。最も重要なのは、フェラーリが勝利したことなのだ」
「もし赤いクルマ(50、51号車)でもっと多くのマニュファクチャラーズポイントを獲得できていれば、とても嬉しかっただろう。だが、赤いクルマにトラブルが発生し、ポルシェが2番手だったため、黄色いクルマがノートラブルでなければ勝利は不可能だっただろう。黄色いクルマがなければ、今日、ポルシェがル・マン24時間レースを制していたはずだ」
■クビサの不満とメーカーとしての優先度
レース中の印象的なインタビューで、クビサは当時トップを走っていた51号車フェラーリを守るために指示に従わなければならなかったことに不満を抱いていることを、強く示唆した。
しかしコレッタは、83号車に発生していたシフトダウンの問題など、信頼性への懸念を考慮し、チームオーダーはすべて同ブランドの利益を最優先に考慮して出されたものだと述べた。
「我々はフェラーリにとって、そして最終的な結果にとって最善の方法で状況を管理した」とコレッタは語った。
「最初の1時間から(日曜の)午後3時か3時半まで、何かしらの問題が発生していたことは明らかだった。この状況を何とか管理しなければならなかった」
「ドライバー全員に、我々にとって最善の選択をするよう求めた。ドライバーに尋ねると、まずナルシシズムが出て、それから『OK』と言うのは明らかだ。でも、これがモータースポーツなのだから」
「結局のところ、ドライバー全員が『カーサ・フェラーリ』だった。皆で力を合わせて、またしても素晴らしい勝利を祝うことができた。私にとって、これは最高の勝利だ」
コレッタは、わずか1回のセーフティカー出動と、さらに数回の短時間のフルコースイエローでハイパーカーの走行距離記録を更新したレースの激しいペースが、499Pの新たな信頼性の弱点を露呈させたことを認めている。
「レースのリズムは非常に速かったため、おそらく我々のマシンだけでなく、他のマシンにも問題があったので、信頼性を向上させる必要がある」と彼は認めた。
「おそらくすべてのマシンの品質を向上させる必要があるだろう」
「セーフティカーが1台しか出なかったから、まったく違うル・マンになった。昨年は夜間に4時間半もセーフティカーが出ていたからね」
「セーフティカーが出ていれば、エンジン部品やメカニカルパーツ全般の点検に時間をかけることができる。しかし、フルコースイエローが1分、あるいは1分半しか続かない状況では、そのチャンスはまったくない。メカニカルパーツに大きな負担がかかっていたのだ」
[オートスポーツweb 2025年06月17日]