OSの大幅進化で近づいたMacとiPadの「立ち位置」 しかし「方向性」に違いあり

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2025年06月18日 12:11  ITmedia PC USER

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OSの進化でMacとiPadの“境界”はなくなった……?

 米カリフォルニア州クパチーノで開催されたAppleの開発者会議「WWDC25」(World Developers Conference 2025) では、同社の全プラットフォームに共通する開発面での新要素と、OSの刷新について明らかになった。中でも読者の皆さんが気になる所が、「macOS Tahoe 26」と「iPadOS 26」のアップデートだろう。


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 Apple Intelligenceや新UI「Liquid Glass」も興味深いが、いずれも機能面で大きく進化している。とりわけiPadOSではマルチタスク/マルチウィンドウでの操作を前提としたデザインとなり、「ファイル」アプリの強化でファイルをハンドリングする際の制約が減ったことで、Macがカバーしていた領域とオーバーラップ(重複)する場面が増えた。一方のmacOSでも、生産性を高める機能が加えられている。


 AppleはiPadをあくまでも「タッチとApple Pencil(ペン入力)」を中心とした使い方のユーザーに、より柔軟性の高い使い方を提供すると話している。しかし、ここまで機能が向上すると、PCやMacと“直接”比べたくなる人は多いだろう。


 新しいmacOSとiPadOSを使い比べてみると、確かに両方がカバーできる領域は重なっているが、目指している方向は異なることが分かる。


●あくまで「キーボード指向」のmacOS 26と「タッチパネル指向」のiPadOS 26


 macOS Tahoe 26は、いろいろな面で進化しているが、特に大きく変化しているのが検索機能「Spotlight」と、作業自動化機能のショートカットだ。


 Spotlightはデスクトップ操作の考え方はもちろん、利用の手順を見直したくなる大きな変化を遂げている。キーボードの「Command+スペース」で呼び出せるこの機能を使うMacユーザーは多いだろうが、今回にアップデートで単なる検索ツールではなくなった。システム全体のさまざまな要素に直接アクセスするための“司令室”のような存在となったのだ。


 インテリジェントにランク付けされた検索結果は、ファイルだけではなく、Macで扱うさまざまな情報をミックスし、重要度を自動判別した上でリスト化してくれる。カスタムの検索パラメーターを登録し、クイックキーでアクセスしたり、現在だけではなく過去のクリップボード履歴に即座にアクセスできたりと、キーボード中心の操作で情報を操れるようになる。


 数百に及ぶシステムアクションへの直接アクセスも可能で、スラッシュコマンドによるフィルタリング機能(例:/screenshots)も使える。複雑なファイルシステムをテキストベースで制御し、プログラマーやパワーユーザーがコマンドライン的な操作をGUIの中から利用しやすくなる。


 少々マニアックかもしれないが、キーボード中心の操作を好むなら、効率性を追求したくなるはずだ。言い換えれば、そうした伝統的なPCの操作に最適化した進化をしているのが、今回のアップデートといえる。


 一方、iPadOS 26のマルチウィンドウシステムは、タッチ操作の直感性を損なうことなく、デスクトップ級の生産性を実現する巧妙な設計となっている。


 同OSでは、あくまでも“従来通りの”使い方を規定値としている。一方で、コントロールセンターでマルチウィンドウを有効にすると、オーバーラップウィンドウに切り替わり、ウィンドウにタッチ操作しやすいグラブハンドルが現れる。


 グラブハンドルによる直感的なウィンドウサイズの調整やフリックによるワークスペースの管理、そしてホーム画面からの上スワイプによるウィンドウの一時的な隠蔽(いんぺい)は、iPad miniから12.9インチiPad Proまで、あらゆる画面サイズで一貫して利用可能だ。


 あくまでもiPadOS 26におけるマルチウィンドウ対応は、「タッチパネルを使うタブレット向けOSの拡張」であって、macOSとは重視するものが異なっている。


●「ショートカット」と「Apple Intelligence」で実現する自動化


 macOSの「Shortcuts(ショートカット)」機能による自動化機能は、イベント駆動型プログラミングの概念を簡単に使いこなせるように拡張された。イベントに対してショートカットが自動的に動作するようになる。「特定フォルダーにファイルをコピーする」といったファイルシステムイベント、外部デバイスの接続、フォルダー内容の変更など、OSが検知するイベントをトリガーとして、ショートカットを自動実行可能だ。


 その上、実行の際にApple Intelligenceに組み込まれた多様なAIモデルも呼び出せる。作文ツール、Image Playground、プライベートクラウド、そしてChatGPTへのアクセスにも対応する。


 その効果は大きく、例えば「受信メールの内容を分析し、重要度に応じて自動分類し、緊急案件については要約を生成して通知する」といった、従来のルールベースの自動化では不可能だった高度なワークフローを構築できる。


 筆者が気に入ったのは、Appleのプライベートクラウドに書類を分析させ、その結果に応じて異なるフォルダーに入れるという設定だ。「デスクトップにファイルを保存すること」をトリガーとして、「プライベートクラウドに書類の内容を分析して分類する」というプロンプトを与え、その結果によって異なるフォルダーに保存するということもできてしまう。


 ちなみに、これらのショートカット機能はiPadOSでも利用可能で、さらにApple Pencilやタッチ操作に特化したトリガーが追加されている。例えば、特定のジェスチャーや手書き入力をトリガーとした自動化により、ワークフローの効率化に取り組める。


●「ファイル管理」と「プロダクティビティツール」の統合も


 iPadにおける“柔軟な作業”を阻んでいた要素の1つとして、ファイルの取り扱いがある。Macにいくら近くなっても、ここがハードルになっている人は多いのではないだろうか。


 そこでiPadOS 26の「ファイル」アプリでは、従来よりも柔軟なファイル操作を可能としている。リスト表示が一新され、ファイルリストの属性絡むをカスタマイズできるようにした上で、(iPadOS全体として)アプリでメニューバーを使えるようになったため、macOSにおける「Finder」に匹敵する機能性を確保した。


 「フォルダへ移動」機能や、特定ファイル形式に対するデフォルトアプリ設定にも対応し、ある意味でiPadに初めてPC的な「ファイルシステム」の概念が導入されたと見ることもできる。よって、PCでのファイル操作に慣れた人が抱く戸惑いは大きく減る。


 また、iPadOS 26(とiOS 26)には、macOSでおなじみの「プレビュー」アプリも実装された。PDFの編集、手書き注釈やフォームの自動入力といった機能は、ペーパーレスワークフローの完成形といえるが、iPadならではApple Pencilも利用できるため、一層便利に使える。


 署名機能やファイル形式変換といった高度な機能も、タッチインタフェースに最適化されており、むしろmacOS版のプレビューよりも高機能だ。


 macOS Tahoe 26では、フォルダーのパーソナライゼーション機能が地味ながら重要な改善となっている。


 特定フォルダにカラータグを割り当てると、当該フォルダが指定した色で表示され、カスタマイズするとアイコンも追加できる。ラベル設定はiCloud経由で同期されるので、MacとiPad間で共有ファイルの見え方を統一できる。


●さらに深まった「連係」機能


 macOS Tahoe 26に関しては、iPhoneとの「連係」(連携)がさらに進んでいる。


 例えばiPhoneのアプリで表示される「ライブアクティビティー」(タクシーが到着するまでの時間グラフやフードデリバリーの調達状況など)を、連携先のMacのメニューバーに表示できるようになった。iPhoneをわざわざチェックしなくとも、フードデリバリーの状況やフライト情報、配送の追跡といった時間的に変化する情報を作業中のMacの画面で確認できるようになるので、気が散りにくくなるだろう。


 また、macOS Tahone 26とiPadOS 26にも「電話」アプリが投入される。通話そのものはiPhoneを通して行われるが、iOS 26でアップデートがアナウンスされている「着信スクリーニング」(迷惑電話撃退機能)や「保留アシスト」(長時間保留対策機能)といった機能にも対応しているため、デスクワーク中の電話対応がより効率的になる。


 これから2025年末に向けて、新しいOSではさらに多くの機能や改良が明らかになっていくだろう。


 iPadOS 26の発表だけをみると、MacからiPadへの誘導が始まったかのように感じる読者もいるだろうが、むしろ両者のキャラクターの違いによる開発方針の違いが明確になっている。


 新OSのパブリックβ版は、7月に公開される予定だ。なお、macOS Tahoe 26に関しては、Intel Macに対する最後のアップデートになることがアナウンスされている。



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