機械メーカー「大川原化工機」を巡る冤罪(えんざい)事件について謝罪した後、大川原正明社長の発言を聞く警視庁の鎌田徹郎副総監(右)と東京地検の森博英公安部長=20日午後、横浜市都筑区 「誠に申し訳ありませんでした」。大川原化工機を巡る冤罪(えんざい)事件で、警視庁の鎌田徹郎副総監と東京地検の森博英公安部長が20日、同社を訪れ深々と頭を下げた。起訴取り消しから約4年。ようやく聞かれた謝罪の言葉に、大川原正明社長(76)は「やっと無実を認めた」とほっとした表情を浮かべた。
午後1時、横浜市の同社本社。鎌田副総監と森公安部長は硬い表情のまま、大川原社長や元役員島田順司さん(72)と対面した。それぞれ亡くなった相嶋静夫さん=当時(72)=の冥福を祈った上で、一連の捜査で「多大な負担をかけた」と述べ、深く一礼した。
発言の際、鎌田副総監が島田さんを「ヤマモト様」、森公安部長が社名を「大川原化工機工業」と言い間違える場面があった。退出後に報道陣に問われ、両氏は「申し訳ない」と陳謝した。
冒頭の謝罪後、双方は非公開で約30分面談した。同社と地検によると、起訴した検事の「捜査や起訴の判断に当たり、慎重にすべきところがあったと反省している。同社と関係者におわびする」などのコメントが伝えられたという。
面談後、記者会見した大川原社長は「訴えてきたのは無罪ではなく無実だということ。やっと謝罪という形で彼らが認めた」と安堵(あんど)した様子。「精いっぱいの謝罪だったと思う。副総監と公安部長には、国民に信頼される組織になってほしいと伝えた」と明かした。
島田さんは「できれば『違法な逮捕、起訴、勾留により』という言葉が(謝罪の)前に欲しかった」と注文を付けた。

警視庁と東京地検から謝罪を受けた後、記者会見する大川原化工機の大川原正明社長(左)と元役員の島田順司さん=20日午後、横浜市都筑区