正直なところ、どんな顔をして見たらいいのかよくわからなくなってしまった『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』第11話。とうとうラスボス的に初代ガンダムが登場した現在、この作品をどう見ればいいのだろうか。絵面的にはかなり悪ふざけっぽかったですが……。
イオマグヌッソの中心部で対峙するマチュとニャアン。あくまでキシリア抹殺を狙うシャリア・ブルとそれを阻止せんとするエグザベ。ふたつの戦いが同時進行し、さらにイオマグヌッソの開発スタッフとして生存していたシャアがキシリアと対面する。それぞれの戦いと会話は、「本物のニュータイプのありよう」を浮き彫りにするものだった。
マチュは「本物のニュータイプ」として覚醒つつあり、ビームライフルを捨ててGFreDのビットを手掴みで投げつけるという奇策を見せつける。ニャアンはその戦いぶりを見て、GQuuuuuuXに搭乗しているのはマチュだと見抜く。「ビットの投擲」という乱暴極まる戦い方を見てGQuuuuuuXのパイロットを見抜いたようにも見えるが、これはどちらかといえば「本物のニュータイプにしかできない戦闘方法を使った=マチュが乗っている」と判断したと受け取りたい。続くシーンで明確に「悲鳴」を聞き取ったマチュと気持ち悪くなっただけのニャアンという対比も描かれており、どちらが「本物のニュータイプ」であるかは明確にされている。
シャリア・ブルはキケロガの恐るべき戦闘能力を用いて、キシリア配下のニュータイプ部隊を次々に撃墜していく。シャリアとて、自分と同じ能力を持つニュータイプのパイロットを殺したいわけではない。だが、それをしてでもキシリアを抹殺せねば、彼が理想とするニュータイプと他の人類との共存は果たせない。なんせキシリアは地球の人類をイオマグヌッソで一掃しようとしているのだ。
そんなキシリアは、生き残っていたシャアを自らの仲間にしようとする。地球に固執する古い人類を皆殺しにし、人は宇宙で進化していくべきだというキシリアに対し、シャアは「洞察に満ちたやさしさを持つものがニュータイプである」と反論する。この結論は、今回になっていきなりニュータイプ論を語り出したコモリ少尉の意見と一致しているように思える。シャリア・ブルにせよキシリアにせよ、「誰かを排除してニュータイプが生きていける世界を作る」という点については同じなのであり、それは本質的には「本物のニュータイプ」たりえないというのが、『GQuuuuuuX』でのニュータイプの定義のように思う。
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ここまではいい。問題は「本物か偽物か」「その行動はニュータイプとして真か偽か」という議論を重ねた果てにゼクノヴァが起こり、「本物のガンダム」が『GQuuuuuuX』の世界にやってきてしまうという終盤の展開である。本物と偽物というテーマは、これまでのエピソードでも何度も言及されてきた。マチュとニャアン、強化人間とニュータイプ、「本物」として選抜されることだけを考えていたエグザベと「偽物」でも自分なりの正義のためにフラナガンスクールのパイロット候補を暗殺していたミゲル……。『GQuuuuuuX』には「本物」と「偽物」の対比関係に置かれるキャラクターや立場がいくつも登場する。
それはおそらく、この終盤の展開と重ね合わせるためだったのだろうと思われる。『GQuuuuuuX』の世界の外に「正しいガンダムの世界」があり、ゼクノヴァはふたつの世界をつないでしまう。そして別世界からやってきたララァの思念によって歪んだ『GQuuuuuuX』の世界に、「本物」のガンダムがやってくる。
『Beginning』を見た時に自分が期待した物語とは、ずいぶん違うものになってしまったと思う。建て増し旅館のように無計画に拡張されてきたガンダムシリーズの年表を一度全部吹き飛ばし、『機動戦士ガンダム』の第一話という本当の一番最初の地点から語り直すことで、誰も見たことのないガンダムを作り出すことができる……。『GQuuuuuuX』はそのような、大胆極まる試みになると思っていた。
だが、もはや「正史」の存在が明らかになり、「本物」のガンダムが『GQuuuuuuX』世界に侵入してきてしまった。建て増し旅館は建て増し旅館のまま、『GQuuuuuuX』世界の横に初めから存在していたのである。してみれば、作中で散々対比されてきた「本物」と「偽物」の関係に照らし合わせてみれば、『GQuuuuuuX』の世界は偽物だったということになってしまう。我々は11話にわたって「偽物のガンダム」を見せられていたのだ。驚愕である。
しかし、「偽物」の主人公にしては、マチュにはポテンシャルがありすぎる。思いつきと勢いで行動し、思春期らしい苛立ちを隠さず反抗的ながら、優しさも持った暴れん坊で反骨の主人公である。このキャラクターが「お前たちの世界は偽物だ」と言われて、そのまま黙っているとは思えない。必ず何か、本物と偽物の関係をひっくり返すような、突拍子も無い行動をとってくれるのではないかと思う。
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ということで、残り一話となった『GQuuuuuuX』だが、自分としては『GQuuuuuuX』世界がただの「『機動戦士ガンダム』の偽物」ということで終わらない展開を期待したい。それをやってのけるだけのポテンシャルが、マチュの破天荒さにはあるはずだ。
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笑ゥせぇるすまん 実写ドラマ化(写真:cinemacafe.net)251
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