「自動車保険に入っていたのに」ひき逃げに遭い骨折、収入ゼロに…しかし車外歩行中は“保障対象外”だった 被害者が直面した盲点とは

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2025年06月22日 08:10  まいどなニュース

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歩行中に交通事故に巻き込まれることも… ※画像はイメージです(DragonImages/stock.adobe.com)

「自分は被害者なのに…なぜ?」

【写真】スーパーの駐車場 買い物カートがよそのクルマに激突→警察「事故証明は出ません」→保険会社「対象外です」

たった一度の交通事故で人生が一変。思わぬ「保険の落とし穴」に落ちて途方に暮れる被害者が増えています。実は歩行中の事故、あなたの保険では補償されないかもしれないのです。一体どういうことなのか、ファイナンシャルプランナーの金子賢司さんに聞きました。

近所のスーパーへ徒歩で買い物に出かけた40代の女性Aさん。横断歩道を渡ろうとしたところ、右折してきた車に巻き込まれ、転倒しました。ドライバーは一時停止せずそのまま逃走。

Aさんは約6mにわたってはね飛ばされ、骨折などの重傷を負い、入院と手術が必要に。左足骨折により、入院約2カ月、松葉杖生活が4カ月。骨盤輪骨折により長時間座ることができなくなり、在宅勤務もままならない。その後も、軽度外傷性脳損傷(MTBI)により、集中力も低下し、職場復帰が困難になってしまいました。

「自分の保険も役に立たず…」車外歩行中は対象外だった衝撃

Aさんが金子さんのもとへ相談にやってきたのは、事故から約1カ月後。

「加害者が見つからず、治療費がすぐに請求できない。休業補償が受け取れないので、生活にも支障をきたしかねない。Aさんは困窮していました」(金子さん)

Aさん自身も自家用車を所有していたため自動車保険(対人対物無制限、人身傷害特約付き)に加入していましたが、この人身傷害特約は車内事故のみを補償対象とする限定的なタイプでした。また、健康管理への備えとして医療保険(入院日額5,000円の60日型)にも加入していたものの、入院給付金として約30万円が支払われたのみで、通院費や休業損害については保障されませんでした。

「自分は被害者なのに…」と納得できない様子のAさん。年収約300万円はゼロになり、旦那さんが収入をカバーするために残業を増やすことに。また、子どもの世話も旦那さんが一手に担うことになったと言います。

最近の自動車保険には無保険車傷害特約が基本的に付帯されていますが、この特約には重要な制約があります。適用されるのは死亡や重度後遺障害の場合に限られ、入院や治療の段階では支払いを受けることができません。また、後遺障害の認定を受ける必要があります。政府の保障事業(無保険車・ひき逃げ救済)の利用も可能ですが、治療が完全に終了した後にのみ請求でき、支払いは遅い傾向にあります。

このような保険の限定的な補償内容により、Aさんは実質的な経済的支援を受けられず、さらなる経済的困難に直面することとなりました。医療保険でまかなわれなかった差額ベッド代や通院費などは、旦那さんのボーナスで支払い。通院の交通費約20万円はクレジットローンを利用したそうです。

「Aさんは、被害を受けた側なのに、自身の経済的負担が大きいことにショックを受けていました。貯めておいた子どもの学費を取り崩さないとまかなえない。加入している保険で何とかなると思っていた、と話していました」(金子さん)

 今すぐ確認すべき!保険の「落とし穴」を避けるポイント

金子さんによると、多くの人が見落としがちなポイントがあるといいます。

「自動車保険の、自動車搭乗中のみ補償するプランと、歩行中も補償するプランとでは年間数千円程度しか変わらないケースが多いです。例えば、月額30万円程度受け取れる所得補償保険が、職場の団体割引を使えば千円程度で加入できます。

また、無保険車傷害特約の内容をしっかり確認しておくことも大切です。無保険車傷害特約があっても、必ずしも無保険車との事故に巻き込まれても安心というわけではなく、後遺障害認定が出るまでは支払われません。民間の医療保険は、あくまでも手術や入院をカバーするためのものとの認識を忘れないでください。

実際、交通事故の種類別発生状況において人対車両の事故は12.8%(2023年)*と約1割を占めるというデータも出ており、めったに起こらない事故とは言えません。

自身が家計を支えている場合は、“働けなくなって収入が減ったり無くなったりしたときのリスク”も考慮して、所得補償保険や就業不能保険も検討すべきでしょう(※収入保障保険と混同しないこと)。 政府保障事業があっても、支払うまでには相当な期間を要するため、それまでのつなぎ資金を用意しておく必要があります」(金子さん)

*出典:損害保険料率算出機構|自動車保険の概況

◆金子賢司(かねこ・けんじ)/ファイナンシャルプランナー 東証一部上場企業(現在は東証スタンダード)で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間約100件のセミナー講師なども務める。

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