「人と関わりたくないからほっといてくれ」“孤独死”現場を見てきた特殊清掃員が考える、社会から孤立させない方法

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2025年06月22日 09:20  日刊SPA!

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鈴木亮太さん(写真右)。画像提供:ブルークリーン
現在、「孤独死」の数は年間7万人以上にのぼる。内閣府の調査によれば、その中で死後8日以上経過して発見された遺体の推計として、2024年は2万1856人もいた。生前、社会的に孤立していたと思われ、誰にも看取られることなく亡くなることから「孤立死」ともいわれる。
都内を中心にさまざまな現場で特殊清掃を手がけるブルークリーン株式会社で働きながら、特殊清掃の実態を伝える登録者5万3000人以上のYouTubeチャンネル「特殊清掃チャンネル」を運営している鈴木亮太さんに、孤独死の実態や防ぐためにはどうしたらいいのか、日々の意識について詳しい話を聞いた。

◆人間関係が希薄な時代に増加する「孤独死」

高齢化社会の到来により、必然的に孤独死が増えていく。今後さらに身近な課題となってくるが、予防する方法はあるのか。

「家族や自治体が一丸になって老人を見守ることが重要です。本人が『人と関わりたくないからほっといてくれ』と言う場合もあるのですが、定期的に安否確認をする以外方法がありません。

高齢になってくると体調が悪くなって体力もなくなってくるので、掃除する気力が起きず部屋が散らかってくる人も多い。そして、その散らかった部屋を人に見せたくないという気持ちが出てきて、なおさら人との関わりを拒むわけです」

しかし、そこでただ放っておいてしまうというのはよくない。何か対策はないのだろうか。

「ご近所同士での付き合いがしっかりしていれば、どの人が孤立しているかわかります。また、昔は新聞を購読している人が多かったので、新聞配達員が夕刊を届ける際にまだ朝刊がポストに入っていると、『今日は新聞をポストまで取りに来てないぞ。おかしい』と気づいて、家のチャイムを押して中に入ってみたら倒れていたということが多かったんです。そこで救急車を呼んで助かることもあったと思います。そこまで長い時間死亡したことに気づかれないケースはあまりなかったはずですが……」

今は人間関係が希薄に。ニュースを知る手段が電子化し、新聞配達員との関係性が少なくなってしまった。

「同じマンションに暮らしていても、隣の人がどんな人か知らない、エレベーターで住人と居合わせても挨拶すらしない人が増えているといいます。むしろ挨拶しないのが当たり前になってきているようですね。他の住人がどんな人かわからないから恐いという意見が多いそうです。

でも自分たちが小さい頃って、挨拶をしないと『あそこに住んでるおじいさん、挨拶しても全然返してくれなくてたぶん相当な変わり者よ』みたいに噂になってたと思うんですけど、今じゃ真逆の感性になっています」

人に挨拶をする方が変に見られることが増えてしまった。

「本当はいい人の仮面を被った悪人なんじゃないかという考え方が流行っている感じがします。ネットを見ていると、『善人かと思ったのに騙された!』みたいなエピソードが書かれた記事が出てくることあるじゃないですか。ああいうのに影響される人って、意外と多いですよね。ウェブに載っていた内容を全て鵜呑みにしてしまう。

でも実際、自分の家の周りに住んでいる人って、意外と普通の、良識のある方が多い気がしませんか? なので、私は積極的に挨拶するようにしています。特に老人相手には率先して声をかけようと心がけていますね」

◆町内会や回覧板で定期的に生存確認できる機会を作る

最近は孤独死を予防するためのサービスが開発されたという。

「今は不動産屋の対策で部屋の照明に生体センサーや熱感知のセンサーをつけて、一定期間動きがなかったら警備会社に通報がいくなどのサービスも開発されています。ただ、そういったサービスはプライバシーはどうなのという問題もあり、あまり普及はしていません。国としても対策を検討しているそうですが、すぐに動きがあるとは思えません……」

とにかく他人の孤独死を予防するには1人きりにならずに生活できる環境を作り上げるしかないのか。

「ちょっと強制力を働かせることになるかもしれませんが、町内会で週に一回は集まるようにするだとか、アパート内で回覧板を作るとか、集まりの時間を作るとかが大事です。

労力を考えると難しいのかもしれませんが、他人の孤独死を予防する観点でみると、やったほうがいいことだと思います。家族・親族だと人間関係を拒むけど、他人となら打ち解けられるという人もいるので、なるべく近所と交流していく。それしかありません」

都心部に住んでいる働き盛りの世帯としては、仕事でもないのにそれなりの時間や手間がかかるうえ、数千円の会費まで徴収されてしまう自治会・町内会などの仕組みは「非常に大変」と思ってしまうかもしれない。だが、高齢者にとっては、まさに命に関わることなのだ。

◆“他人におせっかいをすること”の大切さ

また、孤独死が増える原因として未婚率の上昇もあるという。

「40代以降の未婚率が高いというのも孤独死の原因の一つではあると思います。最初は結婚していたが途中で離婚してしまった人とかも多いですが。パートナーや家族とのつながりが、孤立を防ぐ手段の一つになるかもしれませんよね。

死を防ぐというのは困難なことだと思うんですけど、早期に発見できれば死に至らなかったというケースもあります。でも突然死のような場合だと、どんなに周囲の人間とコミュニケーションを取ったところで、お風呂場でヒートショックのようなことが起きて突然死することもありますし。そういった場合は、第三者が目を光らせていても孤独死を予防することは難しいですよね」

世の中から孤独死を完全になくすことはできないが、個人が心掛けるべき意識はどのようなものがあるのか。

「これは“他人におせっかいをすること”に尽きると思います。私が子供のころって、夕方5時をすぎると『早く家に帰りなさい!』ってめちゃくちゃ怒ってくる近所のおばさんとかいたんですけど、そういう人が減りましたよね。

これって今のご時世的な問題だと思うんですけど、何かあるとすぐネットに晒されたり、すぐ批判されたりするじゃないですか。SNSを見てると、『関係ないのに注意された。腹立つ』みたいな書き込みも多いです。でも昔って、見知らぬ子供に注意するなんて別に珍しいことじゃなかった。

SNSの普及に伴って、“自分が起こす行動が周りの人にどう思われるのか”って、すごく敏感になっていると思うんです。そこを気にせず、ちょっと口うるさい近所のおばちゃんになるような意識を持つことが大事だと思います」

<取材・文/山崎尚哉>

【特殊清掃王すーさん】
(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「ブルークリーン」の創業に参画。これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦

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