「ドラマ『課長島耕作』の出演が決まったころ、たまたまNTTドコモのCMでも携帯電話を操る島耕作を演じることに。放送が同時期だったためにコラボ企画だと思われたのですが、じつは別々のところで連動していたのです」
こう振り返るのは宅麻伸さん。当時は“モテる上司”役が多かったため、課長島耕作のイメージにぴったりだったのだろう。
「上司役を演じるようになった『クリスマス・イブ』(TBS系)では、脚本家の内館牧子先生のイメージで、ボクはモテるけれども女たらし。対して島耕作では、困ったときに必ず助けてくれる美女が現れて成功していく会社員。“こんな運のいい男はいないよな”って演じながらも感じていました」
別れた妻の娘役を演じた安達祐実は、当時11歳の小学生。翌年の『家なき子』(日本テレビ系)で大ブレークした。
「幼いけれど、演技はしっかりしていてね。『お父さんが約束を破るからダメなの』と言った具合に、かわいいのにきついことを言ってくるんです。ストレートに心に入ってくるものだから、心が傷つくほど。撮影の待ち時間も、小学生相手に何を話していいのかわからず、しゃべりかけられません。まるで思春期の父娘です(笑)」
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上司の中沢部長を演じた竜雷太は、プライベートでも大先輩だ。
「竜さんがやっていた六本木のお店に、若いときには毎晩のように通ってね。ボクは竜さんが出演していた『太陽にほえろ!』(日本テレビ系)の裏番組『七人の刑事』(TBS系)に出演していたのに、すごくかわいがってくださって」
仕事に関して、直接、宅麻さんにアドバイスしなかったが、
「周囲のお客さんとの会話のなかで、ボクに聞こえるように『新人は現場に誰よりも早くに入れ』『メークとチャラチャラしゃべる時間があれば台本と向き合え』と教えてくれました」
『課長島耕作』で忘れられないのは、島の失敗により、中沢とともに謝罪するシーンだ。
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「土下座して、竜さんが裸踊りを始めるんです。で、ボクも怒りを感じながら、パンツ一丁になって竜さんに付き合う。こうした部下を思う上司像が、竜さんの人柄に重なりました」
『課長島耕作』は、2008年に高橋克典主演版も放送された。
「今度はボクが、中沢を演じることに。竜さんの先輩の温かさを参考にして楽しく演じました。一方、高橋くんは前の“島耕作”がいるものだから、ちょっと困った様子。申し訳なかったですね(笑)」
『課長島耕作』(フジテレビ系、1993〜1998年)
初芝電気ショールーム課課長に昇進した島耕作(宅麻伸)が、社内の派閥争いに巻き込まれながらも大活躍。同僚の久美子(清水美砂=現・美沙)やバーのママ・典子(斉藤慶子)との恋模様も描かれたザ・昭和のサラリーマン物語。当時の男性は家庭を顧みなかった。
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【PROFILE】
たくま・しん
1956年生まれ、岡山県出身。1979年、正式に俳優デビューすると、数多くのドラマ、映画で活躍。渋みのある演技で、憧れの上司役、理想の夫役として人気を博した。
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