37戸所有の不動産投資家が警告「管理組合の争い」が物件をダメにする…“ボロボロマンション”の実態と建て替えの難しさ

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2025年06月23日 09:20  日刊SPA!

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写真はイメージです(以下同)
―[FIRE投資家が教える「お金・投資」の本質]―
東京23区の中古ワンルームマンション中心に不動産投資を展開。現在、37戸の物件を所有し、時価資産額約10億円、年間家賃収入約4000万円の個人投資家・村野博基氏。実践してきた不動産投資を振り返って「不動産は管理で買え」と言います。管理がマズい中古マンション物件はどうなっていくのか。村野氏の経験を聞きます。

◆収益を左右する物件管理の重要性

「負けない」不動産投資を行っていると、物件の「管理」が何よりも大事になってきます。

ビジネスの基本は「収入を増やし、支出を減らすこと」であり、「それを継続すること」です。この基本は不動産投資の世界でも一緒。家賃を維持ないし上昇させつつ、管理費・修繕積立金等の出費を維持または下げなければ、安定したリターンは見込めません。

マンション投資の場合、家賃を頂いても管理費・修繕積立金が高額だと、結局は手元に残る利益は少なくなり、「何のために投資をしているのか!?」となります。物件の管理にコストがかかりすぎると管理費・修繕積立金が枯渇し、値上げ必至の状態に陥ります。そのため、支出はできるだけ抑えなければ利益を確保できなくなります。一方で、他の人に住んでもらい家賃を頂くためには、大規模修繕工事や給排水管の更新など、物件維持の工事に資金を投下する必要もあります。

しかしながら「支出を抑えつつ投下する」というバランスの取れていないマンション管理組合は少なくありません。残念ですが、経営センスを持ち合わせていない管理組合が多いのが実情なのです。安心安全に対するコスト意識が低く「管理費や修繕積立金が足りなければ上げればよい」という感覚で物事を進めると、必要性が低く高額な工事を行い、その原資のために管理費や修繕積立金が高く設定されていることも数多くあります。一方で「管理費・修繕積立金は安いほうが良い」と低く設定した結果、資金不足で適正な工事が行われず廃墟まっしぐら……という物件もあります。前者の物件に投資をすれば、当然のごとく利益は出ません。後者の物件の場合、廃墟になるまでオーナー同士でババ抜きゲームを強いられます。また、上記の2つの両方である管理費・修繕積立金が高いにも関わらず資金不足に陥るマンションもよく見られます。このような物件を購入し「マンション投資は妙味がない」と指摘される方も多いです。ただ、私からすれば「そんな物件を購入したらうまくいかないのは当たり前」としか言いようがありません。

マンション管理で大切なのは、適正な金額で適正に管理すること。そもそも、コンクリートは中に入っている鉄筋が錆びることで破損します。ですから、それを防ぐ適正な管理がなされていれば100年以上、駆体は持つと言われています。高温多湿な日本でも40〜50年でマンション躯体が必ず駄目になるわけではなく、建物が維持されるか否かは管理にかかっているといっても過言ではありません。

不動産の管理がマズかった場合、物件はどうなってしまうのでしょうか? 

◆管理が駄目だと建物はボロボロに

まず、管理で駄目になる物件は、そもそもきちんとマンション管理組合の理事会が機能していません。自分達の物件は自分達で守るもの。にも関わらず、「分からないからプロに任せる」「何もしない方が楽」と他人任せにする方が多いのです。この状態では管理組合はマンションの状況をまともに判断ができません。それでいて、いざ問題が発生したら文句だけを言うのです。

管理組合が機能せずに管理ができていない物件は、端的に言えば、必要な工事が山積みになり、管理費・修繕積立金が非常に高くなります。もしくは物件はボロボロになりながらも、修繕に必要なお金が集まらず「何もできない」状態になります。

物件がボロボロの状態の具体例を挙げてみると……。防水工事が上手くできていなければ共用部で雨漏りも発生します。応急処置的に雨漏りの箇所はビニールシートとチューブで排水せざるを得ません。エレベーターが修繕できなければ高層階でも毎日階段で移動する羽目になります。給水のポンプが駄目になれば、建物内に水を引く事もできなくなるので、水が出ずトイレも使えなくなるのです。

マンションがこんな状況になってしまうと当然ながら、その不便さに耐えかねて住む人は減りますし、家賃も安く設定をせざるを得ないでしょう。

「マンション投資は儲からない」「築古は廃墟になる」と話す方々は、まさにこのようなボロボロなマンションを所有してしまったのでしょう。こうなる前になにかしらの手を打つことはできたのでしょうが、売買を重視し「運用」を軽視する方は対処する気がないのかもしれません。長期保有を前提とした不動産投資では、管理をおろそかにすると残念な結果になると私は考えています。

◆必要な修繕をしたり建て替えしようにもモメる

マンションにおいては「管理規約」というルールが存在し、そのルールに従って物事を進めていくのですが、一般的には工事を行うにはマンション管理組合で行われる総会で決議を取り物事を決めます。小規模な修繕の工事の場合には「普通決議」といって、総会に出席した区分所有者の過半数、2分の1以上の賛成で実行ができます。

しかし、物件自体がボロボロになってから、慌てて管理費・修繕積立金を値上げして対処するのも難しいものです。過去に修繕をしてこなかった分のツケを払う必要が出てくるため、何倍にも値上げしてやっと普通の状態に戻せるかどうか……。そして何倍の値上げに耐えられる人ばかりではないため、そもそも管理費・修繕積立金値上げ議案の決議は相当にハードルが高いものだと思われます。

一方で「もうボロボロなので建替えよう」という話が出てくるかもしれません。ただし、建物を建て替える場合には、もっと決議の条件が厳しくなり、「区分所有者総数の5分の4以上」かつ「議決権総数の5分の4以上」が必要になります。

それでも何とかしなければなりません。とはいえ、ボロボロの物件の管理組合では、やり取りをするなかで「管理組合内の争い」が発生してきます。「今のままじゃマズいから修繕をしたり、建て替えに向けて対処しよう」という改革派と、「そうは言ってもお金は無いし、まだ住めるからこのままで」という守旧派に分かれた戦いが始まるのです。

◆マンション管理の崩壊と争い

管理が行き届かずボロボロならば、すなわち今までの管理が適切になされていない状況です。ですが、守旧派の人たちが実権を握っている内は「何もしていない」ので、争いは起きません。単なる問題の先送りですが「平和な時間」を過ごすことができるのです。しかしいよいよ「このままじゃ住み続けられない!!」と危機感を感じた改革派の人たちが現れると争いが発生します。「今のままでは駄目だから」と改善案を出しても、これまでを否定するコトになるので守旧派にとっては面白くなく、提案は拒否され戦いがはじまります。ご高齢な方のなかには「管理費の値上げは困るから、自分が死んだあとにして欲しい」と言い放つ人もいました。「ご自身が亡くなっても、他の人は生きてこのマンションを維持していかなければいけない」という想像力が欠如していることを残念に思ったものです。

もとを正せばマンションがボロボロになった責任は、それまで管理組合の実権を握っていた守旧派にあったはずなのですが……。外から眺めると改革派が争いを産み出しているように見えるというのはなかなか興味深い出来事です。その争いの責任はどこにあるのか、見極める目は持っていたいものですね。

マンション管理組合内に争いが発生すると、どのようなことが起きるのでしょうか。これは実際にあったケースですが、「現在のマンション理事会は適切に運営されていない!!」と怪文書がばら撒かれたり、役員選任の決議案に対して、委任状を偽装して改革派の理事長を辞めさせようとしてくる場合もありました。ときには「マンション管理組合の運営が不当である」と裁判所に訴えるケースもあります。このようなゴタゴタに嫌気がさして物件を売却したりする方が出てきてしまうと、さらに管理組合自体が機能しなくなり、マンションの管理はますます混迷を極めていくのでしょう。

そもそも、マンションの建て替えは決議を取るハードルが非常に高いもの。国土交通省の2024年時点の調査によると、これまで建て替えができたマンションは全国でも300件ほどです。

「保有しているマンションの管理状況が悪い」といっても直ぐに建て替えが出来るわけではありません。だからこそ、管理が良好な状態を維持し、そもそも争いが起きるようなことがないように、しっかりと管理組合の運営をしていかなければならないのです。

不動産において「管理」は非常に重要なものです。物件を購入する際には、事前に管理状況を確認することをオススメします。必ず「重要事項調査報告書」を取得し、「管理組合に借入がないか?」「必要な工事がちゃんと実施されているか?」といった項目を確認してみてください。これは投資用に限らず、中古マンションを購入するときには覚えておいて損はないポイントです。

<構成/上野 智(まてい社)>

―[FIRE投資家が教える「お金・投資」の本質]―

【村野博基】
1976年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、大手通信会社に勤務。社会人になると同時期に投資に目覚め、外国債・新規上場株式など金融投資を始める。その投資の担保として不動産に着目し、やがて不動産が投資商品として有効であることに気づき、以後、積極的に不動産投資を始める。東京23区のワンルーム中古市場で不動産投資を展開し、2019年に20年間勤めた会社をアーリーリタイア。現在、自身の所有する会社を経営しつつ、東京23区のうち19区に計38戸の物件を所有。さらにマンション管理組合事業など不動産投資に関連して多方面で活躍する。著書に『43歳で「FIRE」を実現したボクの“無敵"不動産投資法』(アーク出版)

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