“黒字”を維持したまま「廃業」する企業も…事業を「託したい側」と「継ぎたい側」をつなぐ事業承継マッチング支援とは？

杉浦太陽と村上佳菜子がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより」（毎週日曜 7:30〜7:55）。「学びと成長」をコンセプトに、毎回さまざまなゲスト講師をお招きして、明日の暮らしがもっと豊かになる情報や気になるトピックをひも解いて、今よりもちょっと成長することを目指す番組です。

6月22日（日）の放送テーマは、「託したいと継ぎたいをつなげる。事業承継マッチング支援」。日本政策金融公庫（略称・日本公庫）の事業承継支援室長 永沼智佳（ながぬま・ちか）さんから、事業承継マッチング支援の取り組みやメリットについて伺いました。

（左から）杉浦太陽、永沼智佳さん、村上佳菜子

◆多くの企業が黒字のまま廃業

日本には約337万社の企業があります。一方、2024年に休業や廃業、解散した企業は調査開始以来、過去最高となる6万件を突破しました。そのなかには、コロナ禍や物価高で経営不振に陥り、廃業に至るケースもありますが、半数以上が黒字を維持したまま廃業している現状があります。要因はさまざまですが、その1つに“後継者問題”が挙げられます。

経営者が引退したあと、後継者がその事業を引き継いで継続することを「事業承継」と言いますが、親族や親族以外の従業員などに引き継がない場合、第三者に譲渡する「第三者承継」という方法があります。しかし、なかなか希望にあった後継者が見つからず、そのまま廃業してしまうケースが少なくありません。

第三者承継は、事業を託したい側と継ぎたい側、双方に大きなメリットがあります。事業を譲り渡す側のメリットとして、永沼さんは「廃業する際、設備や在庫の処分などで費用がかかってしまいますが、こうした場合の費用が不要です。それだけでなく、多くの場合は事業を譲渡することで対価を得ることができますが、同時に従業員の雇用を守り、これまでの取引先を引き継ぐこともできます」と説明します。

また、事業を承継する側のメリットとして事業の初期投資を抑えられる点を挙げ、「事業承継により、既存の店舗や設備を受け継ぐ場合、新たに設備投資をおこなうよりも、コストを抑えられる可能性があります。熟練の従業員や販売先、仕入れ先、培ってきた技術・ノウハウなどの経営資源も受け継ぐことができますので、ゼロから事業を始めるよりも、立ち上げ時間の短縮や経営の安定を早期に実現できる可能性があります」と解説します。

黒字の状態で廃業することは、当事者だけでなく地域にも悪影響を及ぼす恐れがあります。例えば、地域に根ざした商店が廃業すると、住民の交流の場が失われたり、買い物が不便になるなど、住民の生活にさまざまな影響が出るかもしれません。場合によっては、廃業した商店の取引業者の倒産リスクが高まることもあります。

◆「事業承継マッチング支援」サービス内容を紹介

小さな商店の廃業であっても第三者承継が検討されないのは、深刻な問題につながります。そこで日本公庫は、後継者がいないため事業を譲り渡したい小規模事業者と、創業や事業拡大に向けて事業を譲り受けたいと考えている方をつなぐマッチングサービス「事業承継マッチング支援」を2021年度よりスタートさせました。

このサービスは、譲り渡し希望の方も譲り受け希望の方も無料で利用できるのが特徴で、利用するには事業を譲り渡したい方、事業を譲り受けたい方どちらも、日本公庫のWebサイトにある事業承継マッチング支援のページから申込手続きをおこなって登録する必要があります。また、申込手続きについては全国152ヵ所ある日本公庫の最寄りの店舗に電話で問い合わせることも可能です。

登録後、譲り渡し希望の方はサイト内に事業内容や希望条件などの情報を掲載して、後継者を募集することができます。一方、譲り受け希望の方は、サイト内に掲載されている「後継者募集企業」のなかから、希望する事業者を探すことができます。相手が見つかった場合、日本公庫が双方に交渉を希望するかを確認し、面談などの手順を踏んで両者が合意となれば契約締結となります。

このサービスでは、すでに事業を営んでいる方だけでなく、これから創業を希望する方でも「事業を譲り受けたい人」として利用が可能という特徴があります。さらに、事業を譲り渡したい方が相手探しをする場合、同種のサービスでは会社名を伏せることが一般的ですが、このサービスでは、希望に応じて会社名を公表して後継者を募集することもできます。

会社名を公表するメリットについて、永沼さんは「譲り受け希望の方は事前に情報を集めることができますので、自分の希望に合ったものかどうかの判断がしやすくなり、ミスマッチを防ぐことができます。また、事業を譲り渡したい側は、会社名を伏せている場合に比べて、自身の魅力を具体的に伝えられることができます」と説明します。なお、事業承継マッチング支援では累計で約1万7,000件の登録があり、そのうち331社が成約しました。事業承継マッチング支援のサイトでは、さまざまな成約事例が掲載されています。

最後に永沼さんは、日本公庫が全国各地で開催しているオンラインイベントを紹介し、「イベントでは、事業を譲り渡したい企業の経営者が会社名をオープンにして登壇し、事業の内容や事業への想い、後継者に期待することを伝えています。また、譲り受けたい参加者は、その場で質問することも可能です。今年は7月の兵庫県から始まり、全14県で開催予定です。開催日時などは、紹介したサイトで順次ご案内していきますので、ぜひご覧になってください」と呼びかけました。

番組のエンディングでは、杉浦と村上が今回学んだ「事業承継マッチング支援」について復習。2人が特に注目した点をピックアップして発表します。まず村上は“事業承継マッチング支援のWebサイトを見たら「やりたい」が叶うかも！”とスケッチブックに書きます。続いて、杉浦は“事業もマッチングできる時代 託したい×継ぎたい”とポイントを挙げ、「『事業承継マッチング支援』に興味がある方は、日本政策金融公庫のWebサイトをご確認ください！」とコメントしました。

（左から）杉浦太陽、村上佳菜子

＜番組概要＞
番組名：杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより
放送日時：毎週日曜 7:30〜7:55
パーソナリティ：杉浦太陽、村上佳菜子
番組Webサイト：https://www.tfm.co.jp/manabiyori/
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