東京都議選 既存政党は低迷、新興政党も明暗分かれる。政党の浮沈が激しい中、有権者の真の“目利き力”が問われていく

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2025年06月23日 22:20  まいどなニュース

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東京都庁のプロジェクションマッピング(2024年5月撮影・picture cells - stock.adobe.com)

2025年6月22日投開票の東京都議選の当選者は、都民ファーストの会31(+6)、自民21(−9)、公明19(−4)、立民17(+4)、共産14(−5)、国民9(+9)、参政3(+3)、東京・生活者ネットワーク1(±0)、無所属12となっています。(カッコ内は、告示前からの増減数。自民は告示前数に非公認6名を含む。)

 都ファは、支持層に加え、無党派層の最大の受け皿に

都ファは、支持層に加え、無党派層の最大の受け皿(2割)になりました(各社出口調査結果より)。 小池都政へのプラスの評価といえると思いますが、元々、税収の多い東京都は、基本的に「都政への不満」は大きなムーブメントにはなりにくく、都民向けに独自の補助金などもたくさんあります(保育料・高校授業料無償化、水道基本料金無償化、ゼロエミッションで戸建てに40万円、冷蔵庫に8万円補助等々)。

 前回都議選(2021年)では、小池都知事は、前年の知事選で候補者を立てなかった自民党への配慮などもあり、ほとんど表立った動きをしませんでしたが、今回は、精力的に都ファ候補と公明候補の応援に入りました。(最終日には、競合しない自民候補の激励にも行きました。知事就任以来、はじめてのことだそうです。東京都政においては、現状「都ファ、自民、公明」が、「知事与党」になります。)

 都ファは国政に候補者を出していませんので、今回都ファに投票した有権者は、次期参院選でどこに投票するのか、東京選挙区(及び全国比例)の結果を考える上で、重要な点です。(なお、昨年の衆院選で、独自候補を擁立しなかった都ファは、党の方針として、国民民主の候補者を支援しました。)

 逆風続きの自民議席数は過去最低

自民は、依然として逆風が続き、都議会議員の政治資金問題や現下の物価高騰への不満も響き、議席数は過去最低となりました。小泉農相効果も浮揚にまではつながりませんでした。自民の政党支持率は高いものの、各社の出口調査では、自民支持層の約半分が他党に投票した、と答えており、昨年の衆院選から続くこの傾向が、来月の参院選でどうなるかが、結果を大きく左右します。

 過去8回の都議選で、全候補者を当選させてきた公明は、2人候補を立てた大田区、そして新宿区で議席を失いました。

 公明や共産は、元々強固な支持層が存在するわけですが、支持層の高齢化の影響が指摘されています。もちろん、同じ問題は、自民、立民などにもあるわけですが、元々の支持者数の違いなどもあります。どの政党にもいえることですが、最近の若年層の政治に対する関心は決して低いわけではなく、この層に従来とは異なるアプローチをして、そして、実際に響いているかどうか、が党の趨勢にも影響を持つようになっています。

前回野党第一党であった共産は、議席を減らし、立民が野党第一党になりました。立民と共産で一定の(定数3以下の選挙区)候補者調整が行われ効果を挙げたといえますが、次期参院選含め、国政選挙ではどう調整していくのかが、鍵になります。

 着実に議席獲得した国民民主と参政

これまで都議会に議席の無かった国民民主が9、参政が3、新たに議席を獲得しました。国民民主は最近支持率低下傾向と言われ、また、参政は特殊な政党のような扱いをされがちですが、今回、両党とも、着実に議席を取ったことの意味や流れについて、よく考える必要があると思います。参政党には、以前は自民を支持していたような「強固な保守層」が流れてきています。

維新、れいわ、保守は、今回議席を獲得できませんでした。例えば維新は、2021年衆院選・2023年統一地方選で、大きく躍進し、支持率も高いという状況でしたので、与野党ともに、政党の浮沈というのは、本当に流動的だなと思いますが、それはまた、どの政党についても、上昇・下降ともに、また状況は大きく変わり得るということでもあるのだと思います。

 石丸氏の再生の道は、42人の候補者を立てましたが、当選者はゼロでした。公約を作らない、組織としてのバックアップの無さ、同じ選挙区に複数候補者を立てる、という基本的な選挙戦略に、やはり問題がありました。

 江東区、千代田区、八王子市では、どの政党の公認・推薦も受けていない無所属(※)の候補者がトップ・上位当選しました。それぞれ首長選に出て名前が浸透しているという事情はありますが、「どの政党もイヤ!」という有権者の受け皿になっている点は、注目に値すると思います。

(※)今回都議選の「無所属」候補の中には、立民等の既存政党の推薦を受けている、あるいは、政治資金パーティー問題で自民党の推薦を取れなかったが、本来は自民党、といった候補者も多くいます。

 また、選挙区ごとに政党の当選順位は、かなり違っており、(当たり前ですが、選挙というのは)政党だけではなく、候補者個人や組織の在りようにも大きく影響を受けることがうかがえます

 次期参院選にも色濃く反映

12年に一度、同年に行われる都議選は、「参院選の前哨戦」と言われ、2013年は、前年衆院選で自公が政権奪還の後、都議選・参院選でも大勝し、安倍長期政権につながり、また1989年は、都議選・参院選、翌年の衆院選で、社会党が躍進し、土井たか子委員長のマドンナ旋風を起こすなど、大きな政局につながりました。

 国政選挙では、都ファ候補の不在、地域による政党の支持動向の違いや、選挙制度の違い(参院選の各職域団体の組織力がモノをいう全国比例等)もあるとはいえ、上記で述べたような、今回の都議選結果から見えてくる種々の状況というのは、約1か月後に投開票日を迎える次期参院選にも、色濃く反映されるだろうと思います。

 そして、ちょっと論点は変わりますが、有権者の皆様が、ポピュリズムやルッキズム等に惑わされることなく、「真に国と国民のためになる施策を、責任を持って実現できる候補者や政党はどこだろうか」と見極めることが、ますます大切になってきていると思います。

 また、日本政治に特有の『毎朝駅に立っているから、あの候補者はがんばっている』という評価指標も、そろそろ考え直す必要があるのではないかと思います。

もちろん、わたくしも議員のときは、早朝の駅に頻繁に立っておりましたが、「駅に立っていること」それ自体では、なんら国や地域の方々のために意義ある仕事をしていることにはならず、国内外に困難な課題が山積する中、本来はその時間やエネルギーと、当人の見識や能力や経験を駆使して、実際に国や国民のために何事を為せるか、が大事なのであろうと思います。(もちろん、地域をくまなく回って、直接じっくりお話をうかがったり、様々な課題を直接把握し、解決に向け努力していくといったことは、極めて重要ですが、日本政治の“駅立ち挨拶”偏重は、残念ながら、そういうこととも違っています。)

◆豊田 真由子 1974年生まれ、千葉県船橋市出身。東京大学法学部を卒業後、厚生労働省に入省。ハーバード大学大学院へ国費留学、理学修士号(公衆衛生学)を取得。 医療、介護、福祉、保育、戦没者援護等、幅広い政策立案を担当し、金融庁にも出向。2009年、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官として、新型インフルエンザパンデミックにWHOとともに対処した。衆議院議員2期、文部科学大臣政務官、オリンピック・パラリンピック大臣政務官などを務めた。

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このニュースに関するつぶやき

  • 結局イエスマンの凡人だらけのバブル世代が定年退職するまではzzzなのよ。バブル世代が働き盛りの年齢のときに就活してたのが就職氷河期。
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