写真 梅雨時はジメジメと湿度が高く出かけるのが億劫になってしまうなど、マイナスのイメージがつきまとう季節ですよね。
ですが悪いことばかりではなく、梅雨がきっかけで素敵な出会いを掴める場合もあるようです。今回はそんな女性のエピソードをご紹介しましょう。
◆雨の日、偶然会った元同僚からデートの誘い
会社員で独身の佐藤明穂さん(仮名・29歳)は、ある休日、近所のお気に入りのパン屋さんにいたところ、不意に背後から声をかけられました。
「それは以前同じ部署だった男性・井上さん(仮名・男性/28歳)で、びっくりして『本当に偶然だね』とお互いの近況をしばらく立ち話していたんですよ」
すると唐突に「あ、もしお時間あればこれからドライブでもしませんか?」と誘われたそう。
「悪いけど私は井上さんのことが、嫌いというほどではないけど、さほどタイプではなかったんです。それで、『連日の雨で気が滅入ってて、ちょっとそんな気分じゃないかな。湿度で前髪がうねっちゃうのが気になって、すぐ帰ろうと思っていたところだから』と梅雨のせいにして断ろうとしたんですよね」
◆カチューシャをプレゼントするので出かけませんか?
ですが井上さんは「ちょっとだけ待っててもらえますか?」とスマホを操作すると、明穂さんに笑顔で「だったらカチューシャをプレゼントするので今日は僕に付き合ってくれませんか?」と引き下がりませんでした。
「え、カチューシャってどういうこと? とその謎の誘い文句にちょっと興味が湧いてきて。そこまで言うのなら井上さんが普段どんな風に女性をエスコートしてくれるのか試してみるかと気まぐれでOKしてみたんです。タイプじゃないので緊張もしないし、危ない人ではないのは分かっていたので」
◆雨の中、向かった“まさかの場所”は
雨の中車を走らせてたどり着いた先は東京ディズニーランドだったそう。
「まさかいきなりこんな夢の国に連れてこられるとは思ってもみなかったので、かなり驚きましたね」
そして着く前に井上さんがスマホでチケットを取ってくれていたので、スムーズに中に入ると……。
「すぐに可愛いミニーの耳カチューシャを買ってくれたんです。確かにそれで髪のうねりはおさえられたし、そういうことだったのか! と単純にワクワクしましたね。あと井上さんのミッキーの耳カチューシャ姿も絶妙で、思わず吹き出してしまいました」
◆タイプじゃなかった彼がかっこよく見えてきた
そして雨だからか園内はいつもより空いていたため、2人はさほど並ばずに次々にアトラクションを楽しむことができました。
「雨の日のディズニーってこんなに楽しいものなんだなと初めて知りました。水たまりに反射したイルミネーションは幻想的だし、レストランやお土産売り場も空いていて快適で……。
そうこうしているうちに、だんだんとひとつの傘に一緒に入って私のためにプランを練ってくれている井上さんが、かっこよく見えてきてしまって」
◆雨のディズニーを楽しみ尽くした2人は……
さらに井上さんは、明穂さんの好みを最優先にして的確なコースをえらんでくれていたそう。
「でも私が『ちょっと寒くなってきたからやっぱり屋内のアトラクションがいい』とか『お腹すいた』と言うと、臨機応変にバンバンプランを変更してくれるんです。そんな柔軟なところもいいなと思いましたし、何より、梅雨で憂鬱(ゆううつ)だった私を連れ出してこんな楽しい気持ちにさせてくれて本当にありがとう! って心の底から思えたんですよね」
そして雨のディズニーを楽しみ尽くした2人は、帰りの車中で自然と次のデートの約束をしていました。
「それから何度かデートを重ねて、今では井上さんとお付き合いをする仲になりました。彼となら暑い日でも寒い日でも台風でも一緒に居るだけで楽しく過ごせるような気がしたのが決め手になったんですよ」
「あの時井上さんの誘いを断らなかった自分を褒めてあげたいですね」と微笑む明穂さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop