数週にわたり戦争編が続いていた『あんぱん』。戦後80年の節目にふさわしい、リアルで胸の痛む描写の数々について、そのすごみをライターの木俣冬さんに聞いた。
【1】視聴者が引くほど“戦争を煽る”ヒロイン
「過去の朝ドラ主人公の多くが戦争反対派であるのに、のぶは愛国の鑑として生徒たちにもそのような教育を施していく。挑戦的なキャラクターだと思いました。制作側の意図としては、今後描かれる『正義は逆転する』ということを際立たせるための人物像だと思いますが、見ている側には愛国主義ののぶにネガティブな印象を抱いた人もいたと思います。それでもあえて、視聴者に好かれるヒロイン像から距離を置いたことに覚悟を感じました。今田美桜さんは難しい役割を健闘されています」
【2】行きたくない戦争に行ってしまう同調圧力の恐ろしさ
「千尋は、いわゆる同調圧力と言われるものにより、戦争に行かざるをえない人として描かれています。同調圧力は現代社会にも通じることなので興味深かったです。結局、千尋は「戦争がなかったら」という台詞を3回も繰り返し、最後には「戦争さえなかったら」と言いました。戦争反対を朝ドラで描くことはしばしばありますが、当時、時代の空気にあらがえず流されていく人もいたことと思います。それを「戦争がなかったら」という言葉で伝えてきた描写は印象的でした」
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【3】娯楽で侵略・洗脳。暴力以上にリアルな戦争描写
「嵩が入隊した当初、15分の間に23回もビンタが出てきました。朝ドラとしてはなかなかない演出です。その後、嵩は絵の才能を買われて宣撫班勤務となります。宣撫班とは、医療活動や娯楽で日本軍に親しみを深めさせ、占領に協力させることを目的とした班で、実際にやなせたかしさんが所属していました。戦争は武力だけで行われるものではないという、リアリティを重視した内容だと思いました」
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