
「今、お米の在庫は30キロ。うちでは1回で5キロ使うので、あと6回分です。これまでは民間企業などから余剰物品の寄付などがあったので、こんなに食材に困ったことはありません。どうしたらいいのか……」
令和の米騒動
ため息まじりにこう語るのは、東京・荒川区でこども食堂を運営するNPO法人「いきば」代表の南谷素子さんだ。
いまだに原因も、具体的な改善方法も見つからない「令和の米騒動」。備蓄米の放出も含め、小泉進次郎農林水産大臣のアクションで事態は徐々に動きつつあるようだが、一番困っている人々の救いにはまだ程遠いようだ。
南谷さんのNPOと連携している一般社団法人「あじいる」では、フードバンクを立ち上げてから25年になる今年、初めて倉庫のお米が底をついたという。
「『あじいる』さんは、私たちをはじめとするこども食堂など、貧困や差別問題に取り組む団体に寄付でいただいたお米や食材を提供し、生活困窮者支援に取り組んでいる団体です。食材供給の大本でこのような状況ですから、本当に大変なことです」(南谷さん、以下同)
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南谷さんのもとには、本来なら6月になると、各地から前年の余剰分のお米が玄米の状態で届くという。現在はどこからも音沙汰がないそうで「申し訳ないと思いつつ、『余っていませんか』と連絡している状態」。
南谷さんを悩ませるのは、米不足とともに政府や自治体の「民間任せの現状」だ。
「農水省への備蓄米提供の申請には、『食育を行っている証明』が必要。その証拠としてチラシやポスターの提出が義務づけられています。私たちみたいに人を救うためにこども食堂を運営してきた側に対して、見当外れすぎる対応です。食育も大事ですが、まずは食べさせることが先ではないでしょうか」
申請できる米の量にも大きな差
また、申請できる米の量にも大きな差が。学校などの給食への交付1回に600キロ申請できるのに対し、こども食堂・こども宅食への交付は 120キロに制限されている。しかも、申請から米が届くまでに2か月程度かかり、使用実績の報告も必要とのこと。
「みんなが困っているのに悠長すぎますよね。こども食堂のような取り組みは、そもそも民間ではなく行政がすべきこと。確かに自治体から支給もありますが、指定の場所に取りに行かなくてはならなかったり、支給されたものの流れを細かく記録して提出しなくてはならないのです」
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今後の運営にも南谷さんの悩みは尽きない。
「私たちの食堂では1回につき40〜50食、『配食』つまりお弁当を作ります。ですが、コロナ禍の終息を受け、行政から『配食』から会場での『会食』への移行を求められています。しかし、人手や体力の面で、以前のように一度に大人数を集めて食事を提供することはかなり困難ですね。
こども食堂は地域の交流の場ではあるけれども、本来の存在意義や大変さを一切伝えていない『公益社団法人ACジャパン』のこども食堂のCMは、功罪があると思っています」
今年3月末、「こども食堂」の名づけ親で、13年前に東京都大田区でこども食堂を始めた近藤博子さんが自身のFacebookで「こども食堂から一線を引く」という決意を表明し、話題となった。近藤さんも南谷さんと同じく、行政による民間への下請け、押しつけ体制が続くことへの違和感が要因だと述べている。
こども食堂は現在、全国で1万か所を超えたという。小泉大臣も、備蓄米を置いているコンビニではなく、こども食堂を視察するべきではないのか。
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