小泉今日子・森口博子・渡辺真起子、視聴者を惹きつけた“未婚女性”の哀愁《続・続・最後から二番目の恋》

1

2025年06月24日 20:10  週刊女性PRIME

  • 限定公開( 1 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

週刊女性PRIME

『続・続・最後から二番目の恋』小泉今日子・森口博子・渡辺真起子の3人組(同番組公式Xより)

 11年ぶりに放送され、視聴者から熱い支持を得た『続・続・最後から二番目の恋』がついに最終回を迎えた(※ネタバレ注意)。

 千明(小泉今日子)はテレビ局を定年退職してドラマ制作会社を興し、和平(中井貴一)は鎌倉市副市長に就任。最後まで登場人物たちの名言や、長倉家の絆に感動させられた本作だったが、小泉今日子・森口博子・渡辺真起子の3人によるコミカルな女子会シーンも、毎回尺は短いけど、このドラマには欠かせない名場面だった。

未婚女性3人組の欠かせない名場面

 千明、啓子(森口博子)、祥子(渡辺真起子)は若い頃から気が合う未婚女性3人組。千明はテレビ、啓子は出版、祥子は音楽と近い業界で働いていることもあり、ちょくちょくお洒落な店で女子会をしては、仕事や恋の愚痴を言い合ってきた。

 第1シリーズ時点での3人は45歳。互いに独身だし、3人で鎌倉の古民家でも買って一緒に暮らそうと盛り上がるが、いざとなると啓子と祥子は恋人や仕事を理由に断り、千明だけが移り住んだのがこのドラマの発端だった。

 この時点から「若い頃、45くらいの先輩って嫌だったもんね」「死ねババアとか言われてるんだろうね」と自分たちを客観視していた3人。だけど「45にもなったら、据え膳食わぬは女の恥よ」といった赤裸々な会話は勢いがあって小気味がよかった。

 48歳になった第2シリーズでは管理職になり、「はんこばっか押してるうちに定年が来るよ」と悪態をつき、新橋のオッサンたちと飲んだくれるシーンもあった。そして穏やかに年を重ねた老夫婦を見て「そっち側に行こうと思えばいつでも行ける自信があったんだけどさ。なんか最近、もう行きたくても行けない世界になってしまったのかなあ、みたいな」「でもさ、その分こういう生き方してたから手に入れたものもあるわけでさ」と、諦めと悟りの境地に達していた。

 そして59歳になった今回。

「あたしたちの業界、マジでやばくない?」と、コミック&アニメ頼みになっている三業界の衰退を愁うことからスタート。「こういう関係は続けようね。こういうのがないと私生きていけない」と友情を確認し合う。

 しかし5話では、3人の先輩であるみか(香坂みゆき)が登場。定年前に出版社を辞め、制作会社を興したみかは、千明を仕事に誘い喜ばせるが、どうやらそれはお金を投資させるための詐欺まがいの話だったことが判明する。

 8話では啓子が、定年と同時に退職することを告白。「頑張って会社に残ったところで居場所がないんだよね。これがこう、悲しいくらいに間違ってなくて」と無理して明るく話すが、「ま、何が言いたいのかと言いますと、…友達でいてね」と泣き出してしまうシーンは、森口博子ってこんなに芝居がうまかったのかと思わせるほど真に迫っていた。

 祥子は10話で、自分を外した仕事のメッセージグループが存在し、そこに送ったつもりで、若手が祥子のことを「老害」呼ばわりしたメッセージが“誤爆”で届いてしまう。「明日から仕事行きたくない」と落ち込む祥子の姿は痛々しかった。

 こうした彼女たちのエピソードに共感した視聴者は多かったのではないか。バブルを20代半ばで体験し、中でもイケてる業界にいた3人は仕事が面白く、経済力もあったから、結婚の必要性も感じずに、気づいたらこの年齢になっていた。

励まされた視聴者

 筆者(50代・男性)は彼女たちより5歳ほど下で性別も異なり、20代からフリーランスだが、思い当たる節は山ほどある。短期的にどこかの職場に入って仕事をする機会があると、流れに乗れず隅の方にいたり、若手に必要以上に気を遣っているベテラン社員を見かけ、会社で生きていくって難しそうだなと感じる。自分の加齢と業界の衰退が重なった閉塞感はフリーランスも同様で、「昔、石炭産業に従事していた人はこんな気持ちだったのか」とすら思ってしまう。会社に所属していない分、足場はもっと脆弱で、筆者もため息をついてばかりだ。

 確かに年齢が原因で、新しいシステムなどについていくのが大変な部分もあるけど、自虐で言うほど本当は衰えてもおらず、仕事のスキルは上がり続けて、総合的に見れば今が最高だという自覚もある。それでも弾かれていってしまう。これはきっと先人たちも経験してきたことで、今ベテランを弾いている若手も遠くない未来に経験することなのだろう。今はただ自分たちの番がきただけなのだ。常に年齢相応の壁と闘ってきた千明・啓子・祥子3人のシーンに励まされた視聴者は多いに違いない。

 実を言うと筆者は、今回のシーズン3(続・続・)は、ちょっといい話になりすぎてしまった気もしていた。和平をはじめ、登場人物みんなが名言を連発し過ぎて、感動過多な印象を受けたのだ。

 1・2では千明と和平がそれぞれ、女と男の言い分を言い合っていた。女性の言い分も理解できるけど、我々男は普段言われっ放しなので、「和平頑張れ、よく言った!」とも思い、自分ならどう言い返すかと、脳が刺激を受けていた。

 3ではそれが減ってしまい、それは千明と和平が互いを認め合うようになったからなのだが、少し物足りなく感じていた。そんな中でも、女子3人のシーンは変わらず刺激的で楽しかった。最終回では千明がふたりに「うちに住まわせてあげてもよくってよ」と話す場面もあり、そうなったらまた楽しそうだ。千明と和平の関係だけでなく、定年を迎え、ちょっと苦境に立たされている彼女たちの将来を見守るためにも、ぜひ「続・続・続・」の放送を期待したいと、最終回を観て思った。
 
 最後に蛇足になるが、ずっと気になっていたことを一つだけ。和平が中学生の時にエロ本を見つかって、「母親に7時間詰められた号泣事件」というのがあり、最後は母親の周りできょうだい全員が号泣した、という話が笑いと感動のエピソードとして何回か劇中で出てきたのだが……。

 和平が3のスタート時点で63歳で、双子の万理子(内田有紀)と真平(坂口憲二)は48歳と、両者には15歳の開きがある。号泣事件が1977年のことだというので、和平が中3だとしても、まだ万理子と真平は生まれていないか0歳で、兄弟が母親の周りに集まって号泣するという図にはならないのではないか。2人が成長した後にその事件を聞かされたとしても、万理子が見てきたように囃し立て、真平が「あったね〜」と懐かしそうに言うのは、ちょっと反応が違う気がするのだが、どうだろう?

 もし私の見方が間違っているなら、どなたかご教示いただければ幸いである。こんな細かすぎるツッコミをしたのも、熱烈な『二番目』ファンゆえなので、どうかご容赦のほど。

古沢保。フリーライター、コラムニスト。'71年東京生まれ。『3年B組金八先生卒業アルバム』『オフィシャルガイドブック相棒』『ヤンキー母校に帰るノベライズ』『IQサプリシリーズ』など、テレビ関連書籍を多数手がけ、雑誌などにテレビコラムを執筆。テレビ番組制作にも携わる。好きな番組は地味にヒットする堅実派。街歩き関連の執筆も多く、著書に『風景印ミュージアム』など。歴史散歩の会も主宰。

    ランキングエンタメ

    前日のランキングへ

    ニュース設定