桐山照史「ジュリエットは時生でなければできない」 柄本時生、「見ていいよ」の言葉で「女子になれた」 「泣くロミオと怒るジュリエット2025」【インタビュー】

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2025年06月25日 11:40  エンタメOVO

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柄本時生【左/ヘアメーク:稲月聖菜(マービィ)/スタイリスト:矢野恵美子さん】と桐山照史【ヘアメイク:井上ゆか/スタイリスト:村田友哉(SMB International.)】 (C)エンタメOVO

 WEST.の桐山照史がロミオ、柄本時生がジュリエットを務める、Bunkamura Production 2025「泣くロミオと怒るジュリエット2025」が7月6日から上演される。本作は、映画『愛を乞うひと』の脚本などでも知られる劇作家・演出家の鄭義信が、2020年に書き下ろした作品。シェークスピアの名作「ロミオとジュリエット」を、物語の舞台を関西の戦後の港町に移し、全編関西弁のせりふに翻案した。初演に続き、ロミオを演じる桐山とジュリエット役の柄本に意気込みやお互いの印象などを聞いた。




−再演が決まったときの心境を教えてください。

桐山 シンプルに再演をさせていただけることがうれしかったです。僕は、初演に引き続き、再演に出演するということが初めてなんです。再演をさせていただけるのは、スタッフさん、そしてお客さまの声がなければできないものなので、とてもありがたいなと思います。ただ、すごくうれしかったのですが、再演が決まってすぐに時生に連絡して「どうする?」と。初演当時は僕たちはまだ30歳でしたが、当時の僕たちでも精神的にも体力的にも大変なお芝居だったので、今の僕たちがそれ以上のものをお見せできるのだろうかという不安があり、最初に時生に相談しました。

−それは、柄本さんと再びやりたかったということですね。

桐山 そうです。ジュリエットは時生でなければできないと思っています。残念ながら今回はご一緒できなかった初演のメンバーもいらっしゃいますが、今回もパワーアップしたメンバーが集まったと思います。

−ラブコールを受けた柄本さんはいかがでしたか。

柄本 全く同じ意見です。あの熱量で精神を使い切る作品をもう一度となったときに、一瞬、悩みました(笑)。自分の中でも今回は挑戦です。僕も再演ものをやるのは2回目で、以前は初演を超えようと精神をすり減らした記憶がありますが、今回はまた別のやり方を見つけられるのではないかと楽しみにしております。

−初演では、それぞれのキャラクターをどのように作り上げていきましたか。

桐山 僕は元々関西弁で話しているので、全編関西弁のせりふだとどうしても桐山に寄ってしまうんですよ。これまでもパブリックイメージでオファーしてくださることがあると、どう演じても自分自身に似てしまうところがありました。なので、この作品でもそうした怖さがありましたが、鄭さんが吃音(きつおん)という設定を入れてくれたので、自分とは全く違うロミオになったと思います。

−吃音というハンディキャップを演じるにあたってはどのような準備をされたのですか。

桐山 めちゃくちゃ勉強しました。人によって出方も違うので、本を読んだり、吃音の方にお話を聞かせていただいたりしながら役を作りました。吃音は頭の回転が速すぎるから出てしまうこともあるようで、その後にバラエティー番組に出演してツッコもうとしたときにも出てしまうようになって。口が癖になるのだと思います。

−柄本さんはジュリエットをどのように作っていったのですか。

柄本 初演を見てくださった方はご存じだと思いますが、鄭さんのおかげでできあがったのだと思います。僕のことをお客さんが認めてくれるせりふを物語の冒頭に鄭さんが作ってくださって。それに、女性のせりふがすでに書かれているので、それを話していけば自然とその気になるんです。流れに沿っていくという感じでした。

−ビジュアルでは意識したことはありましたか。

柄本 メークさんなどプロの方にお任せしていましたので、僕自身ができることは毛を抜くこと(笑)。ブラジリアンワックスを塗って、全身抜きました。

桐山 そこは大事やな(笑)。

−5年前の初演が初共演でしたが、お互いの印象は?

桐山 同じ事務所の人たちでも同級生が少ないんですよ。なので、ようやく同い年の役者さんとご一緒できるとすごくうれしかった記憶があります。初演が終わってからはそれほど頻繁に連絡を取っていたわけではないですが、久々に会っても当時と同じ感覚で、ラフに接してくれるし、接することができるので、それもうれしいです。ただ、がさつなんですよ、この男。僕の人生ではいなかった別枠を作った男です。

柄本 別枠を作ったんだ(笑)。

桐山 別枠だよ! 僕もサンダル族で靴下を履きませんが、時生も素足が好き。でも、僕はサンダルで来ても、稽古場では専用の靴を履くけれど、時生はサンダルで来てそのまま素足で稽古をし出すんですよ。ぺちゃぺちゃと入ってきて「私、ジュリエット」って急に始まるんで、心臓がザワザワしました(笑)。桐山照史の人生では出会ったことのない人。肝が据わりすぎている姿を見て、自分は今までぬるま湯に漬かっていたんだなと思ったほどでした(笑)。

柄本 この5年の間に気付いたんだけど…それは、親父が劇団をやっていて、子どもの頃、学校が終わると本多劇場に帰っていたからなんです(笑)。劇場をはだしで走り回って、劇団員のお兄ちゃんに鬼ごっこしてもらっていたんです。それが今でも抜けていないんだと思う。

桐山 いまだに覚えているのは、(初演で)最初に鄭さんが時生に言ったコメントが「お願いだから靴履いて」だった(笑)。鄭さんは自由にさせてくださる演出家さんですが、そこは言ってました(笑)。

柄本 今回は靴、持っていきます(笑)。

−柄本さんから見た桐山さんの印象は?

柄本 僕が想像していたより優しかったです。とにかく優しい人でした。

桐山 怖そうだなって思ってたの?

柄本 豪快なイメージがあったんですが、これほど人の気持ちをくみながら話してくれる人だとは思っていなかったんです。初演の写真撮影で「向かい合って話してください」と言われたときに、(桐山が)「どっちの目から見る?」って。僕が「右」と言ったら、「見ていいよ」と。そんなシチュエーションで楽な気持ちにさせてくれる人はなかなかいないと思うんです。こんなに優しい方だったんだと印象が変わりました。

桐山 それは、僕たちがメンバーと撮影をするときに編み出した技なんです(笑)。メンバー同士でも恥ずかしいんですよ。だから、「顔を見合わせた写真を撮らせて」と言われたときには、「ちょっとずつ顔を変えるから、どこが変わったか当てて」というゲームをしたり、何か話をしたりする。

柄本 そうなんだ。僕はそれがすごく助かったし、それで女子になれた。女子ってこんな気持ちかもって。

桐山 あはは(笑)。

−出演が決まった際に桐山さんが初演は「男子校の部活動のようだった」とコメントされていましたが、オールメール(男性キャストのみ)ならではの出来事やオールメールならではの魅力を教えてください。

柄本 何でも話せたよね。くだらないことばっかり話してた。

桐山 当時はコロナ前だったから、稽古終わったらみんなで飲みに行って。

柄本 行ったね。確かに男子校みたいだった。

桐山 それから、僕は基本的に差し入れはずっとお酒でした。そういうのもあってか、終わったらみんなで飲んで、ご飯を食べて帰る。それが一番、記憶に残っています。

−他の現場でお酒を差し入れることはなかったんですか。

桐山 なかったです。この作品は先輩もたくさんいらっしゃるので、どうやったら先輩との距離を縮められるのかを考えていましたし、先輩方も気を遣って話してくれたのを覚えています。「みんなで飲もうぜ」と。

柄本 みんなでお好み焼きにも行ったよね。もう帰ろうかとなったときに八嶋さんが来て「もう1杯だけ付き合って」となって。「行きます!」って、そういうのも男子校っぽくて楽しかったね。

桐山 楽屋や稽古場よりも、それが終わってからのことばかり覚えてます(笑)。

−最後に、公演を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。

桐山 自分の好きな世界観、ストーリーの作品なので、初演時も楽しみながら演じられました。お芝居はこんなにも楽しいんだということを教えてもらった作品です。今回新たなキャストの方々も集まってくださり、2025年バージョンを皆さまに届けられることはすごくありがたいと思います。前回、見ることができなかったお客さまも、前回も見てくださり今回も来てくださるというお客さまも、皆さんに楽しんでいただけるよう全力でお稽古して、パワーアップした「ロミジュリ」を届けられるように頑張ります。

柄本 再び「泣くロミオと怒るジュリエット」に挑戦させていただきます。とんこつのような、濃いめ濃いめに、一生懸命、力強く頑張らせていただくので、ぜひ楽しんで見ていただけたらと思います。

(取材・文・写真/嶋田真己)

 Bunkamura Production 2025「泣くロミオと怒るジュリエット2025」は、7月6日〜28日に都内・THEATER MILANO-Za、8月2日〜11日に大阪・森ノ宮ピロティホールで上演。


Bunkamura Production 2025「泣くロミオと怒るジュリエット2025」

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