2025年PPIHCパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムの第103回大会は、まさに“Race to the Clouds(雲に向かうレース)”を象徴する悪天候に翻弄されることに 今季も全長12.42マイル(約20km)、156のコーナーを制覇するべくアメリカ・コロラド州に全13カ国からドライバーが集結した、2025年PPIHCパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムの第103回大会は、まさに「Race to the Clouds(雲に向かうレース)」を象徴する悪天候に翻弄されることに。
残念ながらスタート地点の麓より約3分の1に位置するグレンコーブでフィニッシュする短縮決戦とされた日曜は、注目の新型『スーパー・マスタング・マッハE』で挑んだロマン・デュマ&フォード・パフォーマンスがパイクスピーク・オープン部門を制覇し総合2位。そして総合最速ランナーに贈られる“キング・オブ・ザ・マウンテン”の称号は、約7年ぶりの参戦となったイタリアのヒルクライム名手、シモーネ・ファジョーリが手にしている。
セクションを3分割したおなじみの公式練習、予選走行が続いてきた前週には、平均してドライのコンディションが保たれていたが、山で何が起こるかは予測できず、その変化に翻弄されなければならないという点は世界共通に。
歴史を振り返っても、麓では日差しが照りつける暑さを観測しつつ、標高1万4115フィート(約4000m)の“マウンテン”山頂に近づくにつれ霧雨や雪に見舞われることもあり、悪天候時には安全上の理由から山頂への道路の一部が通行止めになることもあった。
迎えた6月22日の第103回大会は残念ながらその例に倣うことになり、山頂では時速80〜100マイル(約130〜160km/h)と推定される強風がコースに土埃や岩を吹き付け、スタートは大幅にディレイ。最終的に運営側はレース短縮を決断し、勝負はロワーセクションのみで争われることとなった。
これにより、大会の歴代記録保持者であるデュマは2018年に樹立した記録に挑戦することができず。最終的に3分42秒252のタイムでクラス制覇は果たしたものの、その眼前にたったひとりのライバルが立ちはだかる。
そのドライバーこそ、デュマが2018年に『フォルクスワーゲンID.R』で7分57秒148という総合レコードを記録した背後で、自身初参戦ながら『ノルマM20 SF PKP』を駆り8分37秒240という素晴らしいルーキータイムを叩き出していたファジョーリだ。
ここで総合2位という輝かしい成績を収めルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞していた男は、当時と同じくアンリミテッド部門からエントリーし、今回は2018年式『ノヴァ・プロトNP01バルダール』をドライブし3分37秒196をマーク。復帰戦で新たな部門タイトルと総合制覇の栄冠を獲得してみせた。
今季大会前の時点でも、ファジョーリは総合9分を切るタイムを記録したわずか5名のドライバーのうちのひとりであり、セバスチャン・ローブ、リース・ミレン、ロビン・シュート、そしてデュマに並び、大会のエリートグループに名を連ねていた。
そのフィレンツェ出身の山岳スペシャリストは、欧州のヒルクライム・シーンで数々の栄誉に輝き、ヨーロッパ・ヒルクライム選手権で11度の王座を獲得している。イタリアのトレントからモンテ・ボンドーネのヴァソンまでを結ぶ『トレント-ボンドーネ』のトラックレコード保持者でもあり、延べ12回もの優勝を果たしている。
そのほか総合3位にもイタリア出身のルーキー、ディエゴ・デガスペリ(ノヴァ・プロトNP01バルダール)が入り、アンリミテッド部門2位。地元コロラドスプリングス出身のダン・ノヴェンブレ(ウルフGB 08s TCスペシャル)がオープンホイール部門を制し総合4位に入った。
また、昨季2024年に続き「パイクスピークほど生きている実感を得たことはないわ。だって人生で一番怖くてクレイジーな体験だから」と、今年もホンダ北米法人のプログラムによりHRC USのメンバーとして参加したキャサリン・レッグもDE5型アキュラ・インテグラ・タイプSをドライブして総合31位、タイムアタック1部門の9位でフィニッシュ。さらに水素燃料電池車のホンダCR-V e:FCEVで参戦した2020年のアンリミテッド覇者、吉原大二郎もエキシビジョン部門3位で大会を終えている。
[オートスポーツweb 2025年06月25日]