温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」の後継機「GOSAT―GW」のイメージ(JAXA提供) H2Aロケットに搭載される温室効果ガスの観測衛星「GOSAT―GW」は、地上では全容把握が難しい大規模な排出源を宇宙から特定する能力を備える。国立環境研究所(国環研)の谷本浩志・地球システム領域長は「発電所や工場からの排出を直接捉えることができ、温室ガス削減対策に役立つ」と期待を寄せる。
今回の衛星は、人工衛星「いぶき」の1、2号機に続く3号機に当たる。温室ガスの約9割を占める二酸化炭素(CO2)とメタンの濃度を測定するだけでなく、化石燃料を燃やす際に生じる二酸化窒素も同時に観測することができる。これまで国単位が限界だった排出量の把握も都市単位で可能になる。
得られた高精度の観測データは国環研が解析し、国内外に無償で提供する。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」では、締約国に2年ごとに温室ガス排出量を報告する義務を課しており、政府は各国にデータの活用を促していく考えだ。谷本氏は「CO2の削減が待ったなしという状況で日本が先駆けて(衛星を)打ち上げることには非常に大きな意義がある」と強調する。
11月にはブラジルで国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)が開かれる予定。政府は、技術的、資金的な制約がある途上国の排出量推計を支援しており、会議の場などを通じて、衛星データを用いた算定手法の国際標準化も目指す。