「500万円で河崎実に映画を撮らせる」 日本橋三越の酔狂な企画がまさかの落札 ひかる一平主演「還暦高校生」にあふれる昭和愛

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2025年06月27日 11:10  まいどなニュース

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“バカ映画の巨匠”こと河崎実監督(撮影:石井隼人)

「タイトルは映画の顔です」

【写真】1960年代〜1980年代に制作された「青春学園ドラマ」へのオマージュです

“バカ映画の巨匠”こと河崎実監督が、元アイドル・ひかる一平43年ぶりの主演映画を撮った。その名も『還暦高校生』(6月27日公開)。

舟木一夫の赤い制服で

バカバカしいと思う反面、否応なしに目と心が惹きつけられる秀逸過ぎるタイトル。題名を聞いただけでニヤリとしてしまう。

「歌手の舟木一夫が赤い制服を着て『高校三年生』を歌っている姿を見た友達が、ビールを飲みながら『還暦高校生っていいよな』と言ったのが全ての始まり。ちょうどひかるさんも還暦だったので、これで決まりだなと。映画はタイトルが全て。そこさえ決まれば、後はそこに物語をはめ込んでいくだけ」

これまでの河崎監督作のタイトルを振り返ってみよう。

 『いかレスラー』『かにゴールキーパー』『ヅラ刑事』『地球防衛未亡人』『突撃!隣のUFO』『松島トモ子 サメ遊戯』。

何をどう考えれば思いつくのか、珍妙かつ予測不可能な単語が並ぶ。このネーミングセンスの妙が、河崎監督ならではの持ち味だ。

「連想からかけ離れた無関係なものを足すのがアイデアの糸口。カメラ付き携帯と同じ発想です。電話にカメラが付くなんて昔は誰も想像しなかったでしょう?タイトルは映画の顔ですから、そこの段階で観客に『おっ!?』と思わせないとね」

発端は三越の福袋企画

『還暦高校生』は、42回留年を繰り返す還暦高校生・椎名(ひかる)の昭和臭漂う熱血スクールライフを描く青春ムービーだ。ひかるを主演に、『3年B組金八先生』の腐ったミカンこと直江喜一、少年アイドルグループ・ビッグマンモスの森井信好、『ウルトラマン』の古谷敏ら懐かしの面々が脇を固める。

内容・キャスティングもさることながら、制作された経緯も規格外。きっかけは日本橋三越伊勢丹の新春福袋企画「河崎実に500万円で映画を撮らせる」という珍商品だった。

「三越の福袋といえば、歌舞伎俳優との食事権とか高級着物だとかセレブリティなものばかり。それが何を勘違いしたのか、俺に500万円で映画を撮らせる権を売った。買う人なんていないだろうと思ったら、長谷川摩美という方が買ってくれて『メグ・ライオン』(2020)が撮れた。そして第2弾となる今回も長谷川さんがまた買ってくれて『還暦高校生』の制作が決まった」

『いかレスラー』が自殺を止める

事実は小説より奇なり、とはこのことだ。

「第1弾では2人が入札してくれて、今回は何と6人が入札。ならばその全員に売って3千万円で映画を作ればいいのに、それはダメだと。厳しいね」と苦笑いしつつ「制作費500万円、撮影は3日間だけれど、ただのインディーズ映画ではない。三越お墨付きの立派な映画。自分の予想を超えるものが完成した」

奇抜なタイトルと見た目の出オチだけで終わらないのが、河崎映画の底力。

「地方の映画館で舞台挨拶をしたら、『いかレスラー』を観て自殺するのを止めたという人がいた。たまにそういう人に会うけれど、俺は人の命を救っている。こんなにくだらないことをして生きていていいんだと勇気を与えているらしい」

河崎実監督作とは尊い映画なのだ。

「俺がバカ映画を作れているうちは平和な時代だということ。お客さんには『いい加減にしろ!』と総ツッコミしながら笑い転げてハッピーな気持ちで観てもらいたいね」

(まいどなニュース特約・石井 隼人)

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