政府の地震調査委員会は27日、日本海中南部(近畿・北陸沖)に分布する23カ所の海域活断層について今後30年以内の地震発生確率を公表した。マグニチュード(M)7の地震を引き起こす恐れのある長さ20キロ以上の活断層や断層帯が評価対象。いずれかを震源にM7.0以上の地震が発生する確率は16〜18%と評価した。
調査委では昨年の能登半島地震を受け、同年8月に日本海中南部にある海域活断層の位置や長さ、想定されるM値を前倒しで公表していた。
東西で2区域に分けた場合の同確率は、西部(近畿北方沖、北陸西部沖)の9カ所で4〜6%、東部(金沢平野西方沖、能登半島周辺、富山県沖)の14カ所で12〜14%だった。
平田直委員長(東京大名誉教授)は「今後30年で10%程度というのは、私たちが生きているうちに起きても不思議ではない高い数字だ」との見解を示した上で、「住宅の耐震化や家具の固定など改めて対応していただきたい」と述べた。
能登半島北岸断層帯(想定M7.8〜8.1程度)は昨年の地震で震源となったため、個別には発生確率をほぼ0%と評価。一方、同半島西側の海士岬沖東断層(同M7.0程度)と門前断層帯の一部区間(同M7.1程度)はいずれも1〜2%と23カ所の中で最も高かった。
平田委員長は「昨年のような地震は、能登半島北岸の断層帯ではしばらく起きないかもしれないが、それ以外で起きることは十分にある」と指摘。能登地震と別の断層が動くことで「同程度の揺れや津波が来るかもしれないと思って準備をしてほしい」と話した。
今回、富山県沖の富山トラフ横断断層(想定M7.0程度)は新たに活断層と認定し、発生確率は0.9〜1%とした。昨年8月に公表していた新潟県上越沖の断層3カ所については、地質の構造に違いがあることから次回に評価する。
長期評価と併せて、断層ごとの予測震度分布図も公表された。福井市では越前岬西方沖北断層(同7.5程度)、金沢市では羽咋沖東断層(同7.3程度)、富山市では七尾湾東方断層帯(同7.6程度)を震源とする地震が起きた場合、一部地域で震度6弱程度となる可能性があるという。
◇近畿・北陸沖の海域活断層
名称 地震の規模 長さ 30年確率(%)
【全体=M7.0以上の30年確率16〜18%】
【西部区域=同4〜6%】
1 沖ノ礁北方断層 M7.2 25 0.06〜0.4
2 経ケ岬沖断層 M7.4 36 0.2〜0.6
3 小浜沖断層 M7.4 33 0.1〜1
4 浦島礁北方北断層 M7.5 40 0.06〜0.4
5 若狭海丘列北縁断層 M7.0 21 0.4〜0.9
6 越前岬西方沖北断層 M7.5 38 0.2〜0.6
7 浦島礁北東断層 M7.1 23 0.07〜0.5
8 ゲンタツ瀬・大グリ南東縁断層帯 M7.7 52 ―
ゲンタツ瀬区間 M7.0 20 0.4〜0.9
大グリ区間 M7.4 35 0.2〜0.5
9 加佐ノ岬沖断層 M7.2 25 0.3〜0.7
【東部区域=同12〜14%】
10 羽咋沖東断層 M7.3 30 0.1〜0.3
11 羽咋沖西断層 M7.0 21 0.3〜0.7
12 内灘沖断層 M7.3 29 0.3〜0.8
13 海士岬沖東断層 M7.0 21 1 〜 2
14 門前断層帯 M7.5 38 ―
門前沖区間 M7.1 23 1 〜 2
海士岬沖区間 M6.9 18 0.1〜0.3
15 沖ノ瀬東方断層 M7.4 35 0.1〜0.2
16 能登半島北岸断層帯 M7.8〜8.1 94 ほぼ0
猿山沖区間 M7.1 24 ほぼ0
輪島沖区間 M7.1 23 ほぼ0
珠洲沖区間 M7.6 47 ほぼ0
17 輪島はるか沖断層 M7.1 24 0.2〜0.3
18 能登半島北方沖断層 M7.3 31 0.2
19 舳倉島近海断層帯 M7.8 64 ―
南西区間 M7.5 41 0.1
北東区間 M7.1 23 0.2
20 七尾湾東方断層帯 M7.6 43 ―
大泊鼻沖区間 M7.2 25 0.5〜0.6
城ケ崎沖区間 M7.0 21 0.7〜0.8
21 飯田海脚南縁断層 M7.3 31 0.1
22 富山トラフ西縁断層 M7.8 61 0.9〜1
23 富山トラフ横断断層 M7.0 20 0.9〜1
(注)政府・地震調査委員会公表。M(マグニチュード)と長さ(キロ)はいずれも程度。「―」は公表値なし。