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国が2013〜15年に生活保護費を段階的に引き下げたことが、健康で文化的な生活を保障した生活保護法に違反するかが争われた2件の訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷は27日、減額を「違法」とする初の統一判断を示した。その上で原告への減額決定を取り消した。受給者側の勝訴が確定した。宇賀克也裁判長は「厚生労働相の判断には裁量権の逸脱・乱用があった」と述べた。
統一判断が出たことで、原告ではない全国の受給者が違法な減額の影響を受けていたことになる。受給者側は13年以降の減額決定の影響で受領できなかった規模は、17年度までに最大3000億円に上るとみており、判決後に国に適正な支払いと検証を求めた。厚労省は対応を検討する。
全国29都道府県で1000人超が起こした同種訴訟は結論が割れていたが、継続中の訴訟は、最高裁の判断に沿って違法判決が続く見通しとなった。
国は13〜15年、「生活保護費約670億円を削減する」として、生活保護費のうち日用品や水光熱費に充てる生活扶助費を減額対象とした。一般の低所得世帯の消費実態を反映させる「ゆがみ調整」で約90億円、物価下落率を反映させる「デフレ調整」で約580億円をそれぞれ削減するとした。訴訟では二つの調整の違法性が争われた。
小法廷はまず、生活保護費の見直しは過去に消費統計といった資料が用いられてきたことから、「手続きに専門的な知見との整合性があるかを審査すべきだ」との判断基準を示した。
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その上で、これまで受給者とそれ以外の国民の消費を比較し、生活保護費を見直す手法が原則だったのに、デフレ調整は物価下落のみを根拠として減額した点を問題視。見直しのために設置された厚労省の専門家部会にも諮られておらず、「合理性を基礎づける専門的知見が認められない」とし違法とした。
一方、ゆがみ調整は、専門家部会が示した見直しのための検証結果を踏まえていたことから「専門的知見との整合性に欠ける事情はない」とし適法とした。
判決は宇賀裁判長を除く4判事の多数意見。ただし、原告が求めた賠償請求は棄却した。宇賀裁判長はゆがみ調整も違法で、賠償請求も認めるべきだとの反対意見を付けた。
福岡資麿(たかまろ)厚労相は「判決内容を十分精査し、適切に対応する」とのコメントを出した。【巽賢司、肥沼直寛】
最高裁判決 骨子
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・「ゆがみ調整」は一定の合理性があり適法
・「デフレ調整」は合理性を基礎づける専門的知見が認められず違法。減額決定を取り消す
・国は漫然とデフレ調整を判断したわけではない。賠償責任は認められない
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