画像:松本人志(@matsu_bouzu)Xより
ダウンタウンがMCを務めた『ダウンタウンDX』(読売テレビ・日本テレビ系)が、6月26日に最終回を放送した。
◆『ダウンタウンDX』最終回の意外な幕切れ
1993年10月にスタートした同番組は、企画を変えながら現在まで1383回も放送。ゲストは延べ約1万5000人とされ、ベテランから若手まで多くの著名人が出演してきた。
歴史ある番組の最終回だが、31年8か月も続いたとは思えないほど質素な構成となり、ダウンタウンの松本人志、浜田雅功は新規で出演せず、ゲストが組分けされ車内ロケでトークを展開した。
ゲストとしては、「常連組」として河井ゆずる、山之内すず、勝俣州和、「おしゃべり号」でベッキー、森田哲矢、くわばたりえ、「オジサン号」で品川祐、石原良純、木村祐一、「イケメン号」で増田貴久、THE RAMPAGE の陣、河合郁人が参加した。
正直、番組に縁が深いゲストは勝俣、ベッキー、木村、石原くらいで、『ダウンタウンDX』に関する思い出話は薄い内容になっていた。SNSでも「え、これで終わり?」「テレビってつまんなくなった」というバッシングの声が多く挙がっている。
◆『ダウンタウンDX』が長寿番組になった理由
後味の悪い最終回を放送した『ダウンタウンDX』だが、そもそもなぜ31年8か月も続く長寿番組になったのだろうか?
同番組は放送開始当初、ダウンタウンが大物ゲストを迎え、緊張感と笑いを交えたトークを展開する番組だった。しかし、1994年頃からクイズ番組へのシフトチェンジやゲーム番組になったりと迷走。そんな中で、1998年にセットをリニューアルしてトークコーナーを強化したことで、現在まで続いた多人数ゲストでトークを展開する番組へと徐々に変化していった。
まず、同番組の魅力は圧倒的なライブ感だ。浜田は収録をスムーズに行うMCとして知られ、番組の放送尺に近い時間で収録を終えることで有名だった。通常、1時間番組の収録を1時間で終えることはないため、『ダウンタウンDX』は異例の番組だった。
この時間厳守の掟があることでトークがライブに近い形で収録され、独特な雰囲気を作り出すことに成功していた。これが同番組にしかない最大の魅力だろう。
さらに浜田がテキパキと進行するため、スタジオに緊張感が走り、ゲストはトーク内容をしっかり準備して収録に臨むこととなる。その結果、どの番組より短く面白いトークが次々と展開された。
そんな浜田だが、時間厳守を実行しながらゲストを萎縮させることはなく、どの出演者よりトークで大笑いを見せスタジオを率先して盛り上げていた。天才MCである浜田が緊張と緩和のバランスを作り出したからこそ、ゲストが自分の力量以上の結果を残せたのだろう。
◆ダウンタウンのコンビネーションと斬新な企画
また当然ながら、ダウンタウンのコンビネーションも番組の魅力だった。
浜田はスムーズな進行をしながら暴力的なツッコミや言動でゲストの面白さを引き出し、松本は的確なボケコメントを連発して笑いを何倍にも増幅させる仕掛けを披露。トーク番組ではほとんどない形のMCスタイルで、話がつまらないゲストの話題でもダウンタウンが巧妙に爆笑へ変えた。
この手法によって、同番組は何人もの名物芸能人を生み出すことに成功した。たとえば、最終回で品川祐や木村祐一が話題にしたが、梅宮辰夫、地井武男、中尾彬といった大御所俳優がバラエティ番組で活躍するきっかけを作ったのもこの番組だった。
ダウンタウンがゲストを面白く引き立てる技術によって、これらの大御所俳優だけでなく、バラエティ番組で活躍するキッカケを作った著名人は数多くいる。バラエティ業界に、貢献した番組だったと言えるだろう。
さらにスタッフたちの有能さも忘れられない。彼らが作り上げた数々のキラーコンテンツは番組を支える柱となった。
「スター覗き見ランキング」や「スターの私服」など、ゲストの私生活を明かす企画は他にない新しい切り口で大ヒットコンテンツとなった。また、「視聴者は見た!」で視聴者がゲストの私生活を暴露するという斬新な企画も展開され、バラエティの歴史を変えるようなエポックメイキングな企画を次々と生み出していった。
ダウンタウンの力量とともにスタッフたちの高い構成力が、この番組を他のトーク番組より一段上に押し上げる役割を果たしていたと言えるだろう。
◆最終回が映し出したダウンタウンの未来
さて、誰もが納得しない形で終了した『ダウンタウンDX』だが、今回の最終回で感じられるのは、ダウンタウンがもうテレビに戻ってこないだろうということだ。
現在、浜田は現場復帰して出演も可能であり、これだけ長く続いた番組なのだから松本もコメントを寄せてもよいところだった。しかし、最終回に一切関わらないということは、コンビとしてはテレビと決別したように見える。
コンビの活躍の場となる『ダウンタウンチャンネル(仮)』は今年秋頃に開局予定とされているが、ひとまず2人での活動はチャンネルに集約する、そんな意思が『ダウンタウンDX』の最終回に現れているのではないだろうか?
これまでいくつもの笑いを生み出してきた『ダウンタウンDX』の最終回に関与しなかったダウンタウン。テレビでコンビの活躍を見ることは、もう無いのかもしれない。
<文/ゆるま小林>
【ゆるま 小林】
某テレビ局でバラエティー番組、情報番組などを制作。退社後、フリーランスの編集・ライターに転身し、ネットニュースなどでテレビや芸能人に関するコラムを執筆