
【写真】18歳になり背もぐんと伸びた城桧吏
■「翔は支えられる側から、支える側に成長」
映画版には、『おっパン』ファミリーが総登場。絶賛アップデート中の主人公・誠(原田泰造)、ボーイズグループの推し活中である妻・美香(富田靖子)、不登校から復帰した高校生の息子の翔、二次創作のBL同人活動をしている大学生の娘・萌(大原梓)。愛犬カルロスが見守るなか、沖田家の面々に降りかかる新たなる疑問や難題を描いたオリジナルストーリーが展開される。
「映画化」という一報を聞いた時、城は「またあの家族と一緒に撮影ができるんだ! 皆さんと会える!と楽しみになりました」と大喜びしたそう。「撮影現場では、スタッフの皆さんが『おかえり』と声をかけてくださって、『おっパン』の現場に帰ってきたんだなとすぐに実感することができました。『おかえり』と言っていただける現場に来られることもなかなかないことなので、ものすごくうれしかったです」と再会に感激しきり。
温かで、エネルギッシュなパワーがにじみ出ているような作品だ。「スタッフさん、キャストさん同士もものすごく仲が良くて、みんなで分け隔てなくお話をしたりしています。他の現場ではちょっと見ないくらい、騒がしい現場です」と楽しそうに撮影現場の様子を明かした城は、「(中島)颯太さんがいつも鋭いツッコミを入れて、現場を盛り上げてくれます。颯太さんは関西出身だからか、めちゃくちゃツッコミが早いんです」と一番のムードメーカーとして大地役の中島の名前をあげながら、「お芝居についての考え方もみんなで相談しながら、確認し合いながら進めています」とコミュニケーション豊富な現場だと語る。
城がドラマ版から演じてきた翔は、元野球部の高校生。父親の望む自分になれない葛藤や「自分は何者か」と悩み、不登校になって引きこもっていた。彼がメイクやかわいいものが好きだという自分を受け入れ、前に進んでいく姿を描いたドラマ版では、城が翔のひたむきさを体現して多くの視聴者の心をつかんだ。映画版では「翔くんはさらに成長しています」と城。「支えられる側から、支える側に成長しています。台本を読んだ時に、『これ、翔なの!? すごい』と驚きました。学年も上がり、周囲の人のことも考えられるようになって。『お母さんが大変だから』と、お弁当も作っています。めちゃくちゃかわいいお弁当なんです。翔は、周りのものを全部かわいくしたくなる」とキャラクターにたっぷりと愛情を傾ける。
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城自身、「翔の成長から勇気をもらっています」と打ち明ける。「僕は年上や年下の人には話しかけられるんですが、同い年の人に話しかけるのが少し苦手で……。翔がいろいろな人に話しかけたり、周囲の人を気にかけたりしているシーンを演じて、『自分も頑張らなくちゃ』と思いました。それから、自分から話しかけられるようになりました」とにっこり。「僕は一度、壁を越えるとそれからはたくさん話しちゃうタイプ。その壁を越える勇気をくれたのが、翔です」と大いに刺激を受けている。
また「翔と僕は、似たところがある」とも。「僕もかわいいものが大好きで」と目尻を下げながら、「小さな時からペンギンのぬいぐるみを集めていて。水族館で売っているぬいぐるみなんですが、まったく同じサイズ、同じ種類のものをずっと集めています。同じ種類のものでも、顔がちょっとずつ違うんですよ! 今、家に12匹います」とかわいい素顔を披露。「僕自身、自分の考えている常識が当たり前だとは思わずに生活しているので、自分の“好き”を追求していく翔を見て『これでいいんだ』と再確認しました」とそれぞれの“好き”があっていいと、本シリーズの放つメッセージに共感を寄せる。
メイクや髪型などアレンジを加える翔だが、「周囲の友だちからは『翔、かわいすぎる』と言ってもらえることもあって。メイクさんにかわいくしてもらって演じているので、『かわいい』と思ってもらえるのはとてもうれしいです。最初はグロスを塗るのが難しくて、はみ出して塗ってしまったりと苦労をしたんですが、今ではうまく塗れるようになりました」と新たな挑戦を果たしたシリーズでもある。城は「映画版の翔は、髪にいろいろな編み込みをしているのでそこも見てほしいです」と笑顔でアピールしていた。
■「好きだから、頑張れます」 俳優業の転機となった『万引き家族』是枝監督と今も交流
ハッとさせられるようなセリフも満載の本シリーズ。城は「“好き”だけではやっていけない」というセリフが胸に刺さっているという。「本当にその通りだなと思うんです。成長するためには、嫌なこと、苦手なことにも向き合っていかなければいけないんだと思えたセリフです。僕自身、お芝居は好きだけれど、難しいなと思うこともたくさんあります。お芝居には正解がないので、考えれば考えるほど幅が広がっていくものだと思っています」と悩みながら俳優業に向き合い、「好きだからこそ投げ出したくなることはありません。好きだから、頑張れます」と力を込める。
心に誠実に向き合った結果、翔はメイクで人を幸せにしたいという夢を抱き、邁進していく。城が俳優の道に進みたいと思ったきっかけをくれたのは、11歳で出演した第71回カンヌ国際映画祭のパルムドール受賞作『万引き家族』。「是枝(裕和)監督の『万引き家族』に出演させていただいたことは、僕にとってとても大きなことでした。そこからお芝居はすごく楽しいものだなと感じ、たくさんのお仕事をさせていただく機会も増えました」としみじみ。「みんなで一緒になって、同じものを作り上げていくことが楽しい」という俳優業の醍醐味を味わったと振り返る。『万引き家族』では台本を渡されず、芝居に挑んだ。「今となってみると、ものすごく新鮮なことでなかなかない経験をさせてもらったんだなと実感しています」。
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同作の大ヒット御礼舞台挨拶では、リリーから「このように話して」とばかりに耳打ちをされた城が、「宴もたけなわプリンスホテルでございますが……」と挨拶をして会場の爆笑をさらう場面があった。城は「あの出来事は、今でもいい意味で引きずっていて! 友だちと遊びに行って、そろそろ帰る時間かなとなった時に『宴もたけなわですが』と言っていたら、友だちから『何、それ?』と言われて。みんなは知らないんだ!と驚いたんです。でも面白くて、今でも結構『そろそろ宴もたけなわだね』とか言っちゃいます」と“父”からの影響を口にしながら、大きな笑顔。すばらしい出会いを重ねながら18歳となった城は、「いろいろな人に感動や共感、生きる力を届けられる俳優になりたいです」と未来を見つめていた。(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)
『映画 おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』は、7月4日より全国公開。スペシャルドラマ『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!SP』は、東海テレビ・フジテレビ系にて今夜6月28日23時40分放送。