予選からルベン・ヴォルト(ALMモータースポーツ/FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が最速を記録し、そのままレース1でポール・トゥ・ウインを達成 イタリアのミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリにて、6月27〜29日の週末に争われたTCRヨーロッパ・シリーズ第4戦は、予選からルベン・ヴォルト(ALMモータースポーツ/FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が最速を記録し、そのままレース1でポール・トゥ・ウインを達成。続くレース2ではシリーズ復帰の今季2025年よりアウディにスイッチしたテディ・クレーレ(チーム・クレーレ・スポーツ/アウディRS3 LMS2)がシーズン2勝目をマークし、ランキング首位に浮上している。
レースウイーク直前にTCRの権利保有者であるWSCから最新の告示があり、そのアウディとクプラ・レオンVZ TCRのBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)パラメータが変更に。前車は最低重量が1255kgから1265kgに引き上げられ、車高も70mmから80mmへ。後車も最低重量の1245kgが1255kgへと増量された。
そんな条件下で好調を維持したのがホンダ陣営で、今週末はTCRイタリアから3名がゲストエントリーするうち、昨季の世界戦メンバーであるマルコ・ブティ(MMモータースポーツ/FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)の同僚として戦う現TCRイタリア総合6位のヤコポ・ヒメネス(MMモータースポーツ/FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)や、サンティアゴ・コンセプシオン(RC2レーシングチーム/FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)らが予選セッション前半戦を牽引。そこへ上位6台中で唯一ホンダ以外のドライバーとなった開幕勝者ジェンソン・ブリックリー(モンラウ・モータースポーツ/クプラ・レオンVZ TCR)が絡んでくる。
しかし続くQ2ではシビックRを駆るヴォルトがあっさりと1分41秒771のベンチマークタイムを樹立し、そのまま誰にも破られることなく2023年以来となるポールポジションを獲得した。
「昨日からずっと調子が良かったし、あとはラップをまとめるだけで充分だった。そして、それが実現できたね」と安堵の言葉を漏らしたヴォルト。「幸運なことにQ2の最初のランで最速タイムが出て、続く2回目のランでは最初のセクターをミスしてしまった。ヒメネスも我々を追い上げていたが、彼がラップをまとめられなかったのも幸運だった」
「彼は今年すでにここ(ミサノ)で経験を積んでおり、クプラ勢もスタートは本当に良いから、彼らにも注意を払わなければならない。今日のレースは日没時に行われ、路面コンディションは30度の暑さで行われた今朝の予選セッションよりもずっと涼しくなる。前日の夕方の経験からすると、路面は日中よりもずっと速く、タイヤへの負担も軽減される。これはプラスで有利に働くだろうね」
その言葉どおり、夕刻スタートのレース1ではヴォルトが力強いスタートでホールショットを決めると、フロントロウに並んだヒメネスはダッシュに失敗して後退。クプラのブリックリーとホンダのコンセプシオンが追走してくる。
さらにその背後からはエリック・ジェネ(モンラウ・モータースポーツ/クプラ・レオンVZ TCR)が浮上して来たものの、残り2周で左フロントのパンクに見舞われ、表彰台目前の4番手から18位へ沈むことに。同じくブティも中盤にパンクチャーでピットインし、レースを終始コントロールしたヴォルトがブリックリーとヒメネスを従え“ライト・トゥ・フラッグ”を決めてみせた。
「(第2戦の)スパ以来、マシンのトラブルに悩まされていたが、世界戦『FIA TCRワールドツアー』の併催ラウンド以降は修正し、それ以来スピードは快調だ」と明かしたヴォルト。
「レースを通してタイヤをうまくコントロールできたし、このコースは熟知しているからダーティな条件では高速コーナーでグリップがまったくないことも分かっている。非常にアグレッシブなセットアップだったから最初の3周はマシンがあちこちで不安定な状態だった。でも、タイヤの初期のグリップが落ち着くとクルマはふたたび活気を取り戻し、少し差を広げることができたね」
一方、午前の予選でQ1敗退15番手に沈んでいたチャンピオンシップリーダーのジミー・クレーレ(チーム・クレーレ・スポーツ/アウディRS3 LMS2)とは対照的に、そこでQ2に進出して10番手を記録していた兄弟のテディは、続くレース2をリバースポールから発進するとチェッカーまで盤石のドライブで快走。セーフティカーの導入にも動じず、ジェネとブティを従え今季初のシーズン2勝目獲得ドライバーとなり、兄のジミーからランキング首位の座も引き継いだ。
「今回の勝利はまったく予想外だった」と、アウディの3チームがいずれもセットアップの適応に苦戦し、コーナーリングを得意とし直線でのスピードが伸び悩む特性により予選で沈んでいたテディ。
「とにかくダメージを最小限に抑え、ポイントを獲得したかっただけなんだ。予選では10番手だったが、ラップタイムが速くなくペースセッターから0.9秒も遅れていた。でもスタートが良かったし、フレッシュな空気の中にいられたのも大きな助けになった」と続けたテディ。
「今日のコース上で最速ではなかったのは確かだが、ミサノはオーバーテイクが非常に難しいコースだ。とにかく自分自身のドライビングに集中し、誰にもチャンスを与えないように努めた。とても良い結果だが、今日はどうしてこんなことになったのか、本当に理解できないでいるんだ」
「BoPが我々の助けになっていないのは確かだが、レースでいくらかポイントを稼ぐことは可能だと分かっていた。でも兄ジミーのマシンには週末を通して問題があり本当に残念だ。今週末はもっと良い結果に値していたのにね」
これで14ポイント差でポイントリーダーの座を奪ったテディ&ジミーのクレーレ兄弟に続き、ジェネがさらに4ポイント差で追う展開となったTCRヨーロッパ。ここから夏休みに入り、再開となる第5戦は9月5〜7日にレッドブル・リンクで開催される。
[オートスポーツweb 2025年06月30日]