2025年FIA F2第7戦シュピールベルク 宮田莉朋(ARTグランプリ/TGR-DC) 6月27〜29日に行われた2025年FIA F2第7戦シュピールベルクに臨んだ宮田莉朋(ARTグランプリ/TGR-DC)は、前戦バルセロナに続く2戦連続入賞を目指した。ただ、フリー走行は9番手、予選はリバースグリッド対象外の13番手に終わり、初日から暗雲垂れ込める。
「クルマのパフォーマンスは悪くない感触でした。とは言っても、それ以外の要素が多い週末で、フリー走行からストレートのスピードがありませんでした」と、宮田はレースウイーク後の取材で振り返った。
土曜日のスプリントレースで宮田は12番グリッドからスタートした。ただ、2周目のターン3にて、宮田の背後でアクシデントが発生する。
ターン3へのブレーキングでサミ・メゲトゥニフ(トライデント)がオーバースピードでアービッド・リンドブラッド(カンポス・レーシング/レッドブル育成)のインに飛び込んだ。2台は接触し、勢いそのままメゲトゥニフのマシンは跳ね上がり、リンドブラッドのアウト側、宮田の背後にいたルーク・ブラウニング(ハイテックTGR/ウイリアムズ育成)のマシンの上に乗り上げ1回転するアクシデントに。
国際映像はターン3上空のドローンでその一部始終を捉えており、目を覆いたくなる瞬間だった。2台のマシンのヘイローが触れる、危ういアクシデントだったが、ヘイローが彼らを守り、ブラウニング、メゲトゥニフは無事だった。
「すぐ後ろでのアクシデントで、結構大きな衝撃音だったのですぐに何かが起きたと思いました。ひとまずドライバー全員が無事だったということが、何よりですね。今年は結構荒れているなと思った場面でもありました」と、宮田はアクシデントの瞬間を振り返った。
スプリントレースは30分近い中断を経て4周目にリスタートを迎えた。11番手でリスタートを迎えた宮田は、直後のターン3でセバスチャン・モントーヤ(プレマ・レーシング)にかわされ12番手に後退する。その宮田の背後でオリバー・ゲーテ(MPモータースポーツ/レッドブル育成)がディーノ・ベガノビッチ(ハイテックTGR/フェラーリ育成)に追突し、ベガノビッチがストップ。これでセーフティカー(SC)導入となった。
8周目に2度目のリスタートを迎えると、宮田の前はランキング首位につけるアレクサンダー・ダン(ロダン・モータースポーツ/マクラーレン育成)、そしてビクトール・マルタンス(ARTグランプリ/ウイリアムズ育成)となる。ダンとマルタンスはたびたびサイド・バイ・サイドの戦いを続け、宮田はチャンスを伺う。
15周目、ターン3でダンがマルタンスをかわし10番手に浮上。サイド・バイ・サイドからコースオフしたマルタンスはターン3の立ち上がりで出遅れた。DRSの後押しもあった宮田は、その隙を見てターン4でマルタンスにアウトから仕掛けた。ただ、マルタンスはブレーキを遅らせて11番手を死守する。入賞圏外とはいえ、ARTグランプリの2台は激しいテール・トゥ・ノーズの戦いを続けた。
宮田は25周目にゲーテにかわされ13番手でファイナルラップを迎えた。ただ、ファイナルラップのターン3で4番手につけていたアムーリ・コルデール(ロダン・モータースポーツ)が単独スピン。そこに6番手争いを展開していたガブリエレ・ミニ(プレマ・レーシング/アルピーヌ育成)、ジョン・ベネット(ファン・アメルスフォールト・レーシング)、レオナルド・フォルナローリ(インビクタ・レーシング)が追突し、一気に4台がリタイア。宮田は9番手に浮上しチェッカーを受けることになった。
そして7番手でチェッカーを受けたゲーテに対し、ベガノビッチへの追突で10秒のタイムペナルティが課され、宮田は繰り上がりの8位で1ポイントを獲得。前戦バルセロナのフィーチャーレースに続く2戦連続の入賞を果たした。
「今回は本当に運良く1ポイントを獲れました。そこはポジティブですけど、それ以外の要素があまりにも多いレースでしたね」と、宮田。ただ、日曜日のフィーチャーレースは一転、運が向かない一日となってしまう。
先述したとおり、宮田はフリー走行からストレートスピード不足を始めとした問題に悩まされていた。そして、その症状はフィーチャーレースのフォーメーションラップ終盤、ピットエントリーも過ぎたタイミングでピークを迎えてしまった。グリッドについても症状は改善されず。グリーンシグナルが点灯しても宮田はスロー走行で、ピットに向かうしかなかった。
「SCを出さずにピットまで戻れただけ、まだ運がよかったとは思います」と、そう話す宮田の言葉数は普段の取材よりも少なかった。なお、このフィーチャーレースでは複数台が何らかのトラブルでマシンを止めており、宮田と同じくミニもオープニングラップ終盤にピットに戻り、その道中にはマシン後方から白煙を巻き上げた。その様子は国際映像に映し出されたとおりだ。そして宮田もピットに戻り、マシン後方から大量の白煙を巻き上げた。
思い返せば1年前、シュピールベルクのフィーチャーレースでは3台がフォーメーションラップ時にストール。さらには宮田を含む4台がマシントラブル(オートスポーツweb調べではソフトウェア系)でレースを終えていた。今回のトラブルの原因は不明だが、宮田とチームが介入できない要因でのリタイアだけに、その悔しさは計り知れない。とはいえ、翌週には第8戦シルバーストンが迫っている。
「クルマのパフォーマンスは少しづつ良くなっています。そこはしっかりと信頼して臨みます。とはいえ、シルバーストンはレッドブルリンクよりもストレートが長くて多いので、ストレートスピードが非常に重要になります。まずはストレートスピードが周りと同じレベルのパフォーマンスに戻ってほしいですね。それがきっかけで、フィーチャーレースは1周もできませんでしたので……そういったことがないよう、心の底から願っています。そこは自分もチームもどうしようもできない部分ですから」と、宮田。
「まずは何もトラブルが起きず、普通のパフォーマンスで走りたいと願っています。しっかりと、気持ちを切り替えてシルバーストンに臨みます。みなさん、いつも応援ありがとうございます」
F1直下ゆえに、1戦1戦が参戦ドライバーの今後のキャリアを、そして人生を左右すると言っても過言ではないFIA F2。それだけに、チームやドライバーが触れることができない部分でのトラブルは、見たくはないものだ。
[オートスポーツweb 2025年07月01日]