14年ぶりに改訂された管制交信ハンドブック(国土交通省提供) 羽田空港で昨年1月、日本航空と海上保安庁の航空機が衝突炎上した事故を受け、国土交通省は管制交信のポイントをまとめたハンドブックを改訂した。改訂は14年ぶりで、自家用機などのパイロットや若手管制官にも分かりやすいよう、イラストを多用した平易な表現に変更した。
改訂されたのは「ATCコミュニケーションハンドブック」。多発する滑走路誤進入を防止しようと、2011年に初版が発行された。
改訂版では、昨年の事故を念頭に、「ナンバーワン」などの離陸順に関する情報提供は有益だが、パイロットを焦らせる可能性があると指摘。有効性や心理的影響を考慮する必要があるとした。一方、パイロットの留意点として、離着陸時など運航の重要な段階では、その他の不要な業務を行わないよう求めた。
衝突炎上事故では、管制官が滑走路への進入を許可していないにもかかわらず、進入した海保機が日航機と衝突。海保機に乗っていた5人が死亡した。
運輸安全委員会が昨年末に公表した中間報告書では、海保機機長らが「進入許可を得た」と認識した背景として、管制官によるナンバーワンの指示や、基地からの無線連絡などを挙げていた。
同省担当者は「ヒューマンエラーを防止し、航空の安全安心につなげてほしい」と話している。
衝突事故を受け、海保や消防、自家用機などすべてのパイロット約4000人を対象に、管制官らとのコミュニケーション能力を高める訓練が義務付けられることになっている。3日には訓練内容を話し合う有識者会議の初回が同省で開かれる。年度内に結論を得るという。