バスケ男子日本代表 スタイルの異なる6歳差のPG兄弟・テーブス海&流河が揃って目指すロス五輪のコート

0

2025年07月04日 18:30  webスポルティーバ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

webスポルティーバ

写真

後編:バスケ男子日本代表、2028年ロス五輪への船出

トム・ホーバスヘッドコーチの下、2028年ロサンゼルス五輪へ再び始動したバスケットボール日本代表。今年は若手の発掘を意図した代表合宿への選手招集となっているが、なかでもテーブス海とテーブス流河は、異色の兄弟と言えるかもしれない。

年の差は6、ポジションは同じPGだが、そのプレースタイル、そして性格は異なる。

ただ、共に目指しているのは2028年ロサンゼルス五輪。兄弟揃っての目標に向かって、まずは第一歩を踏み出した。

【「まさか彼がこんなに早くA代表に呼ばれるとは」】

 なるほど、6歳の差があるというのもうなずける。

 ふたりの顔だ。21歳の弟・テーブス流河(米ボストンカレッジ)の顔を眺めると、なるほど21歳らしいあどけなさがありありと感じられる。

 一方、兄・テーブス海(アルバルク東京)も無論、そういった時期を経てきたはずだが、年齢とキャリアを重ねてきた今の彼にそんな無垢さはもはやない。

 高3と中1、と言い換えれば、確かに離れている。そんな兄弟が、8月のFIBAアジアカップへ向けて強化を進める男子日本代表の候補として同じコートで練習を続けている。昨年のパリ五輪にも出場している兄の存在はバスケットボールファンの間では馴染みのものとなっているが、その兄と同じジャージーを弟が身につける。

「いや、もう、めっちゃ、変な感じですね」

 7月5、6日に東京・有明アリーナで行なわれるオランダとの強化試合の事前合宿の最中、海は弟とともにプレーをしている状況について問われると、苦笑いに近いような表情でこのように答えた。

「仕事場に弟が来るって変な感じがします」

 違和感は、弟も共有するものだった。

「今日で(合宿は)3日目なんですけど、最初の2日間、本当に変な感じがして、今日やっと実感が湧いたという感じです」

 元プロ選手の父・BTテーブス氏(昨シーズンまで富士通レッドウェーブのHCとしてWリーグ連覇。今シーズンよりアイシンウィングスのディレクターに就任)を持つふたりではあるものの、同じチームでのプレーの経験は従前、なかったという。初めての機会が日本代表活動だというのも、彼らの背中に走るむず痒さを増したところはあったかもしれない。

 海はともにプレーをすることを「変な感じ」としながらも、弟がこれほどまでに早く代表活動に参加するようになるとは考えていなかったという。

「まさか彼がこんなに早くA代表に呼ばれるとは思わなかったので......もしかしたら自分が30歳までA代表に残っていれば30と24で一緒にやれるかなみたいなことは話していましたけど、まさか21ともうすぐ(9月で)27で実現するとは思っていなかったです。それは本当、彼が頑張った結果だなと思います」

 ここ数年は常に代表に呼ばれ、Bリーグでも強豪・アルバルク東京のエースポイントガードとして活躍する海だが、その彼をして同じポジションの流河の能力はほぼすべてにおいて自身を上回っていると言わしめる。

「自分の強みとしては、6歳上っていうところしかないんじゃないですかね。(あとは)経験と体(身長は海が188cmで、流河が184cm)くらいですかね。自分のほうが骨格というか、身長も大きいんですけど、流河は昔からですけど、兄よりスキルがあるってみんなに言われていました」

 選手によっては謙遜をするのかもしれない。だが、1年生から先発を担っていた報徳学園高から渡米し、現在では米大学バスケットボールの最上級リーグのひとつ「アトランティックコーストカンファレンス(ACC)」のチームでプレーをする流河は「お兄ちゃんよりスキルはあるという自信はあります」と外連味なく語っている。食事やトレーニングの成果のお陰でこの1年で12kg体重を増やし、肉体的なたくましさも身にまといつつある。

【兄弟マッチアップは「たぶん、トントンじゃないですか」】

 男子代表のトム・ホーバスヘッドコーチも、テーブス兄弟は「タイプが全然違います」と言いきる。

「海はフィジカルなPG。フィジカリティをよく使っていてパッシングもすごく上手。経験もある。流河のほうが速さをよく使っていて、海も悪くないんですけど、流河のほうがシュートがいい。面白い(存在)ですよ」(ホ―バスHC)

 当たり前のことながら、兄弟といっても別人格である。海もアメリカの大学(ノースカロライナ大ウィルミントン校)でプレーをし、卒業前にBリーグ(2019-20シーズン途中に宇都宮ブレックスに入団)に移っている。その頃の彼の年齢は今の流河と同じくらいであったが、今と変わらず成熟した落ち着きぶりを見せていた印象だ。

 世の中の「弟」がえてしてそうであるように、流河は若い頃の兄と比べても無垢であるように感じられる。ただ兄に言わせれば、子どもの頃の流河はもっと自己主張が強く、「自分のことを神様だと思っているんじゃないかっていうくらい自信満々だった」という。

「あのかわいい弟がこんなに大きくなってみたいな感じですかね。今はまったくかわいくないですね(笑)」(海)

 そんな具合に、憎まれ口を冗談めかしながら述べるが、海自身も言うまでもなく成長の途上にある。平均2.9分の出場で得点もアシストも挙げられなかったパリ五輪での悔しさから、アルバルクでも得点のバリエーションを増やすといった目的意識を明確に持ちながら個人のワークアウトに費やす時間を伸ばした。

「あの(オリンピックの)レベルになるとペイントの中に(NBAミネソタ・ティンバーウルブズのルディ・)ゴベアみたいな選手が待っているので、フローターとか利き手じゃない手でリズムを崩しながら決めるといったことが大事になってくるので、そういうことに取り組んでいます。あとは3Pですね。ドリブルからの3Pは特に課題だったので」(海)

 スキルがあるという流河にしても、大学1年生だった昨シーズンは平均8.5分の出場で同1.6得点だった。トップレベルでやれる選手となるためには、これからの向上こそが肝要となってくる。換言すれば、ここからが勝負だ。所属チームでも代表でもすでに立場を確立している兄は彼にとって「憧れている存在」だ。

 合宿では互いにマッチアップすることもあるそうだ。そんな時、どちらが優勢なのかを問われた流河は、兄に対しての素直な敬意を込めつつ、このように答えた。

「たぶん、トントンじゃないですか。自分がスコアする場面があったり、海が活躍する場面もあるので、どっちがどっちっていうのはないんですけど、彼はもう代表での経験を積んでいるので、本当に落ち着いたプレーをしているなというふうに感じています」

 合宿の参加選手らはアジアカップへ向けての選考の俎上にあるが、大学のシーズンがあり代表活動に頻繁に加わることができない流河にとっては今後、代表に定着していくためには重要な夏である。

 パリ五輪が終わってまだ1年でしかないが、テーブス兄弟が見据えるのは2028年ロサンゼルス五輪で日の丸を背にコートに立つことだ。実の弟とポジション争いをすることについても違和感が拭いきれない様子の海。自身も当然、パリでの雪辱を期す一方で、弟にも「成功してほしいという感情がある」と言う。

「やっぱり、ロスで河村(勇輝)とテーブス兄弟の3人のPGでいけたらなというふうには思っています」

 今後、河村を筆頭にPG争いは激しさを増していきそうだが、そのなかでタイプの違う選手であり人格であるテーブス兄弟がどこまで食い込んでくるのか、興味深い。

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定