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「歌謡界の女王」と呼ばれた美空ひばりさんが89年に52歳の若さで亡くなって36年。残した名曲の数々は今も多くの人に愛され続けている。全国各地に多くの歌碑や銅像があり、東京には自宅を公開した「美空ひばり記念館」がある。もうすぐ夏休み。モニュメントを巡る「ひばり聖地の旅」をするなら今がチャンスだ!【取材・構成=松本久】
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「住んでいた当時のままで何も手を加えずに真空パックみたいに保存してあります。母がいた空間や見た景色を体感していただいて、皆さんがそれぞれの思い出にふけっていただきたい」。ひばりさんの長男で「ひばりプロダクション」加藤和也社長(53)は記念館のコンセプトをこう説明する。
最初に目に飛び込んでくるのは庭にド〜ンと置いてある高級車キャデラックだ。「亡くなって自宅に戻る時も霊きゅう車ではなくて、これに乗って帰ってきたんです」と明かす。
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庭には四季折々の花が植えてあり「常に何かしら咲いているようにしています」。ひばりさんは花が大好きだった。
庭からリビングを見ると、愛用していた紫色のピアノが見える。「いつでも弾けるように調律してあります。『愛燦燦』や『川の流れのように』など晩年の曲の最終チェックはここでやっていました」。亡くなる約1カ月前に書いた生前最後の掛け軸もある。「『智聡厳翔』とあります。私の部屋に飾ってあったのですが、皆さんに見てもらえるように移しました」。23年末に亡くなった八代亜紀さんが描いた肖像画は「母の七回忌くらいの時にいただいたものです」。最後の東京ドーム公演で着た衣装も飾ってある。
応接間と仏間には靴を脱いで上がることができる。仏壇には「慈唱院美空日和清大姉」の戒名が刻んである位牌(いはい)があり、そばには89年に受賞した女性初の国民栄誉賞の盾や副賞の銀製水差しも。「ここで母にお参りをしていただいて、応接間で少しくつろいでいただければ」。
自宅を記念館として一般公開したのは11年前。以来、多くのオールドファンが“ひばりの聖地”に足を運んできたが、最近は20代の若者や外国人も多く訪れている。「母は『自分の歌を求めてくださる人がいる限りは歌っていたい』といつも言っていました。亡くなって36年になりますが、残した楽曲のおかげで今でも“現役の歌手”として扱ってもらえることにすごく感謝をしていると思います。こんなふうに今も気にしてもらえるなんて本人も思っていなかったと思うんです」と亡き母の胸の内を推しはかった。
友人を自宅に招くことが好きだったひばりさん。ここでは、不世出のスターの素顔とぬくもりに、友人気分で触れることができる。
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■美幌峠
北海道網走郡美幌町 北海道屈指の観光地である阿寒国立公園・美幌峠の展望台にある。屈斜路湖を望む景勝地。90年10月8日建立。
■リンゴ追分
青森県弘前市 主演映画「リンゴ園の少女」のロケ地としてゆかりのある弘前市。りんご公園内に02年5月18日建立。
■越後獅子の唄
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新潟市南区月潟 出演映画「とんぼ返り道中」の主題歌。廃線でなくなった旧月潟駅の横に03年6月21日建立。
■みだれ髪
福島県いわき市 87年に大病で100日余入院した直後の復帰作で「女王」の健在ぶりを示した。塩屋埼灯台下に88年10月2日建立。
■歌の里
長野県上伊那郡箕輪町 30周年記念曲を作詞した小沢さとし氏が、ひばりさんの功績を後世に残したいと98年5月17日建立。
■港町十三番地
神奈川県川崎市川崎区 京浜急行大師線「港町駅」にある。所属レコード会社「日本コロムビア」が創業をした地。13年3月1日建立。
■川の流れのように
高知県長岡郡大豊町 47年に同地でバスの大事故に遭遇し、療養後に「日本一の歌手になる」と願掛けをした。93年5月22日建立。
■一本の鉛筆
広島市 広島テレビ本社1階のロビーにある。同局の呼びかけで開催した「第1回広島平和音楽祭」で歌唱した。18年5月28日建立。
■有田音頭(チロリン節)
佐賀県西松浦郡有田町 有田焼創業350周年記念曲。町民が歌って踊れるご当地ソングとして制作した。15年11月14日建立。
■花嵐の港
那覇市 「悲惨な戦争のあった沖縄から平和を発信させたい」とのファンの思いから、がじゃんびら公園に設置。96年12月8日建立。
■永遠のひばり像
福島県いわき市の「ひばり街道」 シルクハットにえんび服で歌う幼少期のひばりさんの像。高さ153センチ。02年5月25日建立。
■永遠に輝く
福島県いわき市の「雲雀乃苑」 94年に制作した等身大のブロンズ像。京都太秦映画村内の「ひばり座」から24年10月17日移設。
■悲しき口笛
横浜市中区宮川町 横浜で生まれ育ったひばりさんをしのんで制作。横浜国際劇場のあった方向を向いている。93年12月21日建立。
■生誕記念碑
横浜市磯子区磯子 横浜開港150年記念事業の一環として、誕生の地である磯子に地元有志が設置。09年5月24日建立。
◆美空(みそら)ひばり 本名加藤和枝。1937年(昭12)5月29日、横浜市生まれ。49年に「河童ブギウギ」でレコードデビュー。「悲しき口笛」「真赤な太陽」「柔」「川の流れのように」などヒット曲多数。89年に52歳で死去するまでに1931曲をレコーディング。170本の映画に出演し、4600回の座長公演、コンサートを実施。89年に女性初の国民栄誉賞。
◆加藤和也(かとう・かずや)1971年(昭46)8月10日、東京都生まれ。88年に「ひばりプロダクション」社長に就任。「美空ひばり館」館長なども務める。著書に「美空家の歳時記」など。
◆美空ひばり記念館 東京都目黒区青葉台1丁目4の12。開館は月〜金曜午前10時〜午後3時。入館無料。8月は9〜17日まで休まず開館。【電話】03・5422・3358。
◆ひばりさんの眠る墓 横浜市港南区日野中央1の13の1 横浜市営日野公園墓地。
※歌碑と像は事務所公認のもの
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