
世の中には「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」だけでなく、「ヤバい男=ヤバ男(ヤバダン)」も存在する。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、芸能人や有名人の言動を鋭くぶった斬るライターの仁科友里さんが、さまざまなタイプの「ヤバ男」を分析していきます。
第44回 国分太一
株式会社TOKIOが、国分太一さんに複数のコンプライアンス違反があったということで、無期限の活動自粛を発表しました。
コンプラ違反の中身は“セクハラ”か
国分さんは『ザ! 鉄腕! DASH!!』(日本テレビ系)に出演していましたが、日本テレビ社長は会見を開き、刑事事件には値しない、反社との関りはない、第三者委員会は設置しないことを明らかにしましたが、被害者のプライバシー保護を理由に、どんなコンプライアンス違反がなされたかについては語りませんでした。
テレビ局とタレントのコンプライアンス違反と言えば、フジテレビの上層部が中居正広さんと女性社員の間に起きた問題を放置し、さらに記者会見も入場者を制限するなど、積極的な解決を図ろうとする姿勢が見られなかったことから、多くのスポンサー企業がCMを撤退させたことは記憶に新しいところ。日本テレビはフジテレビの二の轍を踏んではならぬとばかりに、早期に対応したというところでしょう。
国分さんの所属会社も国分さん本人も会見をすることはないので、真相はやぶの中ですが、これは国分さんにとって、とてもよくないことだと思うのです。TOKIOが解散するのだからもういいだろうと言う人もいるでしょうが、会見をしないことで、言えないほどのひどいことをしたのかと、かえって関心が高まってしまうからです。
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実際、YouTubeではすでに再生回数目当てとしか思えない、人々の関心を煽るようなタイトルの動画(でも中身はスカスカ)がたくさんアップされています。タイトルのどギツさについクリックする人が増えれば、再生回数が多いことでますます人の興味をひき、それが真実だと思いこんでしまう人もでてくるでしょう。このままでは芸能界への復帰が難しくなるばかりか、必要以上の不名誉を抱え込むことになるのではないでしょうか。相手のプライバシーに配慮しながらも、語れることはあるはず。今からでも会見を開いた方がいいように思います。
それにしても、国分さんのコンプライアンス違反とは何か気になります。6月21日配信の『NEWSポストセブン』は、国分さんがスタッフにわいせつな写真や動画をおねだりしたり、暴力的な行為を働いたと報じています。6月30日配信の『週刊女性PRIME』は、国分さんがアプリを通じて相手が男性や女性を問わず、猥褻な動画や画像を送りつけたり要求したりしたと報じ、6月25日配信の『週刊文春オンライン』は「国分太一『複数のわいせつ事案』男性ADを『全裸で川に』年イチ“恐怖のキャンプ 『松岡に恥をかかせる』イジメ仲間 山口達也を直撃」というタイトルで、これまた国分さんのセクハラを報じています。
週刊誌だけでなく、全国紙や通信社も関係者の話として「セクハラに類するもの」と報じていますので、詳細はもちろんわかりませんが、セクハラに該当するものであることはほぼ間違いないと考えていいのではないかと思います。
自分がセクハラをした自覚がない可能性
国分さんに限らず、人気芸能人が問題を起こすと、現場での裏話が明るみになることがよくあります。国分さんも、権力のある人にはペコペコするけれども、自分より立場の弱いスタッフには強く出るなど、相手の立場によって態度を変える二面性があると報じられています。
カメラの前では愛想よく、さわやかにふるまっているけれど、陰では自分より立場の弱いスタッフに悪質なセクハラを働いていた。こういうとき、メディアはよく“ウラの顔を持っていた”という表現をしますが、私はちょっと違う意見なのです。
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国分さんはセクハラとは何なのかを、本当にわかっていないのではないでしょうか。ですから、コンプライアンス違反と言われても寝耳に水で、自分がそんな違反をした自覚はなく、故に改めることができないという“ヤバさ”を持っているように思うのです。さらに言えば、これは国分さんだけでなく、旧ジャニーズ事務所全体の問題と言えるのではないかとも思います。
近年、スターとして一時代を築いたジャニーズ出身の芸能人の引退が相次いでいます。元TOKIOの山口達也さんは、2018年に自身がMCを務めるNHKの番組『Rの法則』で知り合った女子校生への強制わいせつ容疑で書類送検され、事実上、引退に追い込まれました。昨年は中居正広さんがフジテレビの女性社員に対して、意に染まぬ性的行為を行ったとし、自ら引退を発表しています。2人には自分より弱い立場の人に性暴力を働いたという共通点がありますが、私にはこれが偶然とは思えません。
なぜそのように考えるかというと、国分さんが在籍していた旧ジャニーズ事務所では、性加害やセクハラが蔓延していた気配があるからです。
2023年6月23日号『週刊文春』によると、亡くなったジャニー喜多川氏だけでなく、元マネージャーも10代の少年たちに性加害をしていたことを告白しています。
ある程度の権限を与えられていた元マネージャーは忙しすぎて精神的に追い込まれ、ストレスのはけ口が子どもに向いてしまったそうです。一度性加害をしてしまうと感覚が麻痺して罪悪感もなくなり「いいじゃん、いいじゃんという感じで、6人くらいとそういうことをした」と明かしています。
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また、ジャニー氏や元マネージャーなどの大人だけでなく、タレントの行動も今の感覚で言うならば性加害的と言えるのではないでしょうか。
今後、“第二の国分”が出てもおかしくない
元ジュニアの木山将吾氏による書籍『SMAPへ そしてすべてのジャニーズタレントへ』(鹿砦社)には、東山紀之さんはジュニアのパンツを下ろすのが好きで、背後からずりさげ、局部をもろだしになってよろけた少年の手を無理やり引いて、ジャニー氏のもとに連れて行ったというエピソードが掲載されています。東山さんがいつもそういうことをしていたわけではないでしょうが、性暴力というのは自分より下の者がターゲットになるという原則があります。
ジャニー氏が子どもを毒牙にかけ、その下にいる元マネージャーもストレスを理由に子どもに性加害をし、子どもの中の年長者が性加害とまではいかなくても、新入りを性的にもてあそぶというふうに、事務所内に性暴力が蔓延していたと考えることができるのではないでしょうか。
もしそうなら、山口さん、中居さん、国分さん個人の倫理観の問題というより、環境に問題があったと考えるほうが自然なことではないかと思うのです。
上述した『週刊文春』には、国分さんがスタッフの男性を全裸にして泳がせたという証言が掲載されていますが、イヤと言えない立場の人に冗談を装って性的ないやがらせをするという意味で、東山さんの行動と似かよっていると言えると思います。
考えてみると、10代の頃から性暴力と悪ノリの境目が曖昧な中に身を置き、若くしてスターとなって権力あるオトナにちやほやされ、ジャニーズ事務所が強権を奮っていた時代だったこともあって、マイナス報道がなされることもないわけですから、そりゃ自分たちのやっていることががいけないと言われても、ピンとこないだろうなと思うのです。
変わら(れ)ないタレントがいる一方で、時代はどんどん変化しています。テレビを見る人が減り、その代わり、SNSが力を持つようになってきました。テレビが芸能事務所などに忖度して、不都合なことを報じなければ、SNSの格好の獲物となり炎上するため、テレビもSNSを恐れているようなきらいがあります。強者の横暴を最も嫌うSNSにとって、ハラスメント系のネタは大好物ですから、週刊誌は追いかけるでしょうし、テレビ局はハラスメントを働くタレントとはさっさと距離を取ることが予想されます。
今回の国分さんの件の詳細が明かされないことで“ピンと来ていない芸能人”は変わるチャンスを得られないわけですし、これまで無自覚にセクハラをしていた人もいるかもしれませんので、今後、旧ジャニーズ事務所から第二、第三の国分さんが出ても不思議はないわけです。
ジャニーズ事務所が解体され、被害者への補償がなされると決まったことで、ジャニーズ問題は片付いた感がありますが、本当にそうなのでしょうか。ジャニー氏は少年たちの才能を見出し、たくさんのスターを世に送り出しましたが、同時に少年たちに“危うい性”も植え付けてしまった。そんな気がしてならないのです。この問題はかなり根が深いような気がします。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」