
日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』。伊藤博文暗殺事件を描く、謀略と裏切り渦巻く極限サスペンス!
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『ハルビン』評点:★4点(5点満点)
絵画的で映画的な極上のサスペンス
1909年10月に起きた、アン・ジュングン(安重根)による伊藤博文暗殺事件へと至る道程を、アンと仲間たち(「断指同盟」)の姿を追いつつ描くサスペンス映画であり、一種の「ハイストもの」映画でもある。
「ハイストもの」というのは「大掛かりな強盗などを行うため仲間を集め、計画を立てて、それを実行する映画」のことで、思いも寄らない障害が次々と発生し、せっかく立てた綿密な計画が機能しなくなるところにサスペンスが生まれる。
本作でもそれは同様で、調達した爆弾が無駄になってしまったり、国籍を偽っていたのがばれてしまったり、仲間と連絡がとれなくなってしまったりするが、そこにはアンを執拗に追いかける大日本帝国軍人がいつも関係している。
この軍人自体はフィクショナルな存在だが、このキャラクターに大日本帝国の非情さや強引さを象徴させたことで、アンと仲間たちが何を相手に闘争していたのか、という点がうまく表現できている。
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逆光を多用した絵画的な画作りや、さまざまな映画的工夫の数々も楽しく、とくに列車内で「カーブで一つ先の車両が左右に移動するため、そこに死角が生じる」ことを活用したサスペンスにはワクワクさせられた。
STORY:1909年10月、日本の政治家である伊藤博文が大連からハルビンに向かうとの情報を得た独立運動家・安重根(アン・ジュングン)。伊藤を抹殺するべく、彼は仲間と共に大連行きの列車に乗るが、日本軍に察知されてしまう......
監督:ウ・ミンホ
出演:ヒョンビン、パク・ジョンミン、チョ・ウジン、リリー・フランキーほか
上映時間:114分
全国公開中
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