写真 店員さんってホントいろんなタイプの方がいるものです。やたらと話しかけたり、はたまた無愛想で不機嫌だったり…。今回は、ちょっとカチンときた店員に遭遇した後、予想外の展開が待っていたエピソードを紹介します。
◆年の差夫婦の小さな悩みごと
今回お話を聞いたのは、真矢さん(仮名・27歳)。夫とは一回り以上年が離れるいわゆる「年の差婚」で、夫の年齢は50歳だそうです。共通の趣味がきっかけで結婚にまで至った夫との関係はおおむね良好であり、夫が経営する不動産会社の経理を任され真矢さんは幸せな日々を過ごしていました。
「ただ一つ悩みの種がありまして…。童顔な私と貫禄のある夫が一緒にいると、街でよく親子だと勘違いされてしまうんです」ともらす真矢さん。
そんなある日、二人は郊外のアウトレットモールにショッピングへ行くことに。その目的は、もうすぐ誕生日を迎える真矢さんのプレゼントを買うことで、秋物のコートをおねだりしている真矢さん。お目当てのブランド店に入り早速夫と品定めを始めました。
「店内は、他に年配の女性がいるだけで洒落たBGMが流れとても落ち着いた雰囲気でしたね。だからこそ、あんな声が聞こえてしまったのでしょうが…」と、高級感のあるお店には満足していたものの、真矢さんの顔はどこか曇り気味。
◆店員のひそひそ話や態度にモヤモヤ……
実は、夫と品定めをしている時に、後ろの方でなにやらヒソヒソと話し声が聞こえたそうです。
「えっ違うって…」
「そっかな…」
その言葉が気になった真矢さんがとっさに振り向くと、スタッフは口を慌てて閉じその場を離れていきました。そのあからさまなしぐさに真矢さんは些か不快感を覚えたものの、気を取り直した矢先、レジ裏の方からまたもや雑談っぽい声が。
「親子?」
「パパ活だよ」
といった声が真矢さんの耳に入ります。
「言葉の端々から察するに、どうやら私と夫の関係をスタッフ同士で詮索しているみたいでした」
あまりいい気はしなかったものの、素敵なモスグリーンのコートを見つけたので、試着をお願いするためにレジへ向かった真矢さん。
◆店員の不用意で無神経な発言にカチン
いざお会計という時、店員の口から耳を疑う様な言葉が飛び出し、真矢さんは眉間を押さえます。
「『お父様と一緒にいらしてお買い物ができるなんて素敵ですね』って、会計を担当してくれた子が言ったんです」
その後、「私の父と大違いです」とその店員は続けたそうですが、言った本人もすぐさまその場の空気を少し感じたようだったと真矢さんは苦笑交じりに言います。
どちらでも構わなかった真矢さんでしたが、一応夫であることを会計スタッフに軽く伝えたそう。
すると、その女子スタッフは目を見開き、驚いた様子で、「老け、いや、お歳を召して、あ、えと……」と、悪気は無さそうではあるものの墓穴を掘るワードを連発してしまいました。
「さすがにそれを聞いて私も我慢の限界がきて、一瞬カチンと頭にきてしまいました…。でも、極めて真面目な形相でしかも真っ赤になっているそのスタッフの様子を見かねた夫がフォローに入ってくれたんです」
◆夫の真摯な対応に愛情を再確認
夫は怒ったり不快感をあらわにしたりするようなことは一切せず、いたって穏やかに、
「客のプライベートな部分はできるだけ話題にしない方がよいですよ」と、ゆっくりとした口調で伝え、続けて、「夫婦に年齢なんて関係ないんだよ。お互いにとって一番大切な存在だったらね」と、優しくスタッフを諭したのです。女子スタッフはそれを聞くとキョトンとしながらも、商品を包装して手渡してくれました。
帰り際、一部始終を見ていた店長らしき人物と会計を担当した女子スタッフが出口までやってきたそうです。そして、今回の失礼な応対と言動を深く陳謝し、女子スタッフは涙ながらに深く挨拶をしたそうです。
◆他人の目は全く気にならなくなった
帰路の車中で「お互いにとって一番大切な存在…」と夫のセリフを復唱した真矢さん。夫の運転する横顔を覗き込み、とても頼もしさと夫婦の絆を感じたといいます。
「そのせいもあってか、他の人にどのように見られるかは全く気にならなくなりましたね。夫には本当に感謝しています」
そう語った真矢さんは、明るい笑顔を見せてくれました。
今回の一件のように、言葉を口に出すという行為は時に人を傷つけ、また時に人と人との絆をさらに深めるきっかけとなるようです。何かを言葉にする際には、言葉の力の重大さをきちんと心に置いておくべきかもしれませんね。
<文/大杉沙樹>
【大杉沙樹】
わんぱく2児の母親というお仕事と、ライターを掛け持ちするアラフォー女子。昨今の情勢でアジアに単身赴任中の夫は帰国できず。家族団欒夢見てがんばってます。