
恋愛映画を見ていると、「この登場人物の行動はありえない!」「ちょっと共感できない……」などと、思ったことはありませんか。理解できない関係性や感情の揺らぎを体験できるのも、映画だからこその醍醐味でもあります。
今回は、映画ライターが「理解できないのに、なぜか最後まで引き込まれた恋愛映画」を紹介します。全て「Amazonプライム・ビデオ」で視聴可能な作品をピックアップしているので、気になる人はチェックしてみてください。
●きみの鳥はうたえる
映画『きみの鳥はうたえる』は、函館を舞台にした佐藤泰志氏による小説が原作となっています。柄本佑さん、石橋静河さん、染谷将太さんの3人が出演し、ある夏の青春と曖昧な3人の関係を描いた作品です。
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主演の「僕」(柄本佑)は、友人の静雄(染谷将太)と同居しながら、本屋で働く佐知子(石橋静河)と関係を深めていきます。佐知子はどちらの恋人でもないものの、2人の男性の間を自由に漂い、どちらも拒まず選びもせず、自由気ままに生きています。
この映画の魅力は、物語がはっきりと進行していくわけではないところ。結末も受け取る人によって感じ方が異なるのではないでしょうか。
佐知子の流れるような性格と行動にやきもきする人もいると思いますが、何にもとらわれず、気になる相手と名前のない関係を築けることに憧れを抱く人もいるのではないでしょうか。
日々が淡々と流れ、感情が激しくぶつかる場面もないのに、登場人物の関係性に不思議と目が離せなくなります。見終わったあとも「結局あの3人は何だったんだろう……?」と感じる人も多いはず。佐知子の軽やかなマインドと行動に少し憧れを抱きつつも、現実では「理解できない!」と思うかもしれません。
●愛がなんだ
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『愛がなんだ』は、2019年公開の日本映画で、今泉力哉監督作品です。角田光代さんの同名小説が原作となっています。主演は岸井ゆきのさんと成田凌さん。その他、深川麻衣さん、若葉竜也さん、筒井真理子さんらが脇を固めています。
物語は、岸井ゆきのさんが演じるテルコが、成田凌さん演じるマモルに一途すぎるほど尽くす様子から始まります。
仕事中でもマモルからの連絡を最優先して、呼び出されれば深夜でも飛んでいきます。マモルにとってテルコは「都合のいい女」でしかないと分かっていながらも、テルコは「ただそばにいたい」という思いだけで行動してしまうのです。
そんなテルコのまっすぐすぎる恋心は、どこか滑稽で、でも純粋さに憧れも抱きます。
本作の“理解できない”のポイントは、「なぜそこまで?」と疑問に抱くほどの主人公テルコの愛し方です。映画として第三者視点から冷静に見るからこそ、テルコの行動や気持ちが理解できない部分があります。
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とはいえ、自然体の演技が光る俳優陣の掛け合いがリアルで、大好きな人のために取る行動の痛々しさと、恋人になれないもどかしさを表現した共感できる部分もある作品ですので、気軽に見てみてください。
●シャニダールの花
『シャニダールの花』は、今回紹介する映画の中で最も異色のラブストーリーともいえます。石井岳龍監督が手がけたSF的な世界観をベースに、物語が繰り広げられます。綾野剛さんと黒木華さんが主演し、身体に「花」が咲くという不思議な現象に向き合う女性たちと、それを研究する男の関係が描かれています。
女性の感情が花として身体に現れるという設定自体が現実ではありえないものの、恋愛感情を抱いた瞬間に身体に花が咲くという不思議な現象は、映画を見ていて引き込まれるポイントでもあります。
綾野剛演じる研究者の無機質で無関心なように見える視線と、黒木華演じる女性の感情の波が交錯するなかで、2人の関係が曖昧になり、距離感が徐々に変化していきます。
独特の設定なので理解できない点があるものの、最後まで目が離せませんでした。2013年公開の映画ですが、今も変わらず不思議な感情にさせてくれる映画です。
今だからこそ楽しめる、フレッシュな綾野剛さんと黒木華さんの演技や雰囲気も見どころです。
●まとめ
今回紹介した3作品は、いずれもAmazonプライム・ビデオで視聴可能です。じっくり考えさせられる映画を見たいときや、映画ならではの恋愛ストーリーを楽しみたい人はぜひチェックしてみてください。