子どもに見せたくない「過激なエロ広告」が減った理由。“声を届けた人たち”が起こした変化とは

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2025年07月10日 09:00  女子SPA!

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女子SPA!

写真はイメージです(以下、同じ)
ネットを見ていると突然、性的な広告が目に飛び込んでくることがあります。子どもと一緒にスマホを見ているときや、ゲームの合間に表示されて「これはちょっと……」と戸惑ったことがある人も多いのではないでしょうか。

そんな中、電子コミック大手11社が加盟する「日本電子書店連合(JEBA)」が、4月末から性行為や裸、胸などが描写された電子コミックの広告を全年齢向けサイトでは掲載しないようにしたことが、6月4日の読売新聞で報じられました。

この背景には、性的な広告について「子どもに見せたくない」「関係ないサイトで表示するのをやめてほしい」といった苦情がJARO(公益社団法人 日本広告審査機構)に多く寄せられ、JAROがその数や内容を日本電子書店連合に伝えた、という経緯がありました。

こうした広告について、JAROには実際どんな苦情が寄せられ、どのように対応してきたのでしょうか? JAROの川名周事務局長に詳しく聞きました。

◆「JAROってなんじゃろ?」と思った人へ

今回のニュースを見て「JAROって具体的に何をしているんだっけ?」と思った方も多いのでは? 私たちの身の回りの広告に深く関わっている団体であるJAROですが、かつて「JAROってなんじゃろ?」というCMが流れていたように、その活動内容は意外に知られていません。

JAROは、広告に対する苦情や意見を受け付け、広告を確認したうえで広告主に伝えて自主的な改善を促す、民間の自主規制団体です。苦情や意見は、JAROのホームページの送信フォームや、電話、郵送、FAXで受け付けています。

◆「子どもに見せたくない」様々な立場から寄せられた“声”

川名さんによると、性的な広告に関する苦情は以前から年間300件前後寄せられており、「不快」「子どもに見せたくない」といった声が男女問わず届いていたといいます。

とくに2024年度には、苦情が前年比の2倍近くとなる705件に急増。この背景には、同年9月から始まった性的ネット広告に対するゾーニング(見る人の年齢や環境に合わせて、広告やコンテンツを表示する場所や時間を分けること)を求める署名活動の影響もあるとみられます。署名活動によって、JAROが苦情の窓口として広く認知されたことが件数増加の一因となったようです。

「苦情の内容としては、ご自身のお子さんが目にすることへの懸念や、お子さんと一緒にいるときに性的広告を目にしてしまったという声。また子どもへの影響について言及する方など、色々なご意見がありました。女性が多かったですが、男性からも沢山の声がありました」(川名さん、以下「」内同)

◆性的な広告、今回の動きのきっかけは

今回問題視されたのは主に「電子コミック」の広告でした。「関係ないサイトで、過激な性的バナー広告が表示されてびっくりした」など、皆さんも覚えがあるのではないでしょうか。

苦情の対象となった性的な広告の8割以上はインターネットに掲載されたもので、うち206件が電子コミックに関する苦情、広告主名が特定でき日本電子書店連合の会員企業とわかったものは110件でした。

「電子コミックの性的な広告に対する苦情の内容としては、『映画について調べていたら、漫画の性的な広告が出た』『ランチ情報の検索中に性的な漫画動画が表示された』など、日常的な利用のなかで突然表示される広告への不安が多く寄せられていました。

苦情の件数は広告主である企業別に集計しているのですが、電子コミックについては2023年までは広告主別に見ると苦情の件数はそこまで多くなかったのが、2024年下半期以降に件数が急増しました。これには、性的なネット広告のゾーニングを求める、オンラインの署名運動も大いに関係していると思われます」

◆「日本電子書店連合」の決断に至るまで

そこでJAROでは、特に件数の多い広告主や業界団体に対して「情報提供」を行いました。情報提供とは、広告主や関係する業界団体に対して、「こうした苦情が寄せられています」といった形で事実や意見を伝えることです。

「性的な広告については、2024年8月から2025年3月までに、苦情の件数の多かった広告主に対して情報提供を行いました。また、電子コミック広告に対する苦情は2024年11月に急増したので、2025年1月に2社へ伝えています。2社以外にも苦情は寄せられていたので、同年4月に『日本電子書店連合』に情報提供を行いました。

ただ、苦情の件数に一定の目安を設けつつも、数だけで判断するということはありません。内容が重大であれば1件でも広告主への情報提供を行うなど柔軟に対応しています」

JAROから情報提供があったあと、「日本電子書店連合」が会合を行い、性的広告──読売新聞の報道によれば性行為や裸、胸などが描写された電子コミックの広告について、全年齢向けサイトでの出稿停止が決定されました。

「あくまでも、JAROは苦情についての情報をお伝えしているだけなので、今回は『日本電子書店連合』の判断で決定をされました。我々は民間の自主規制団体ですので、警察機関のように何かを取り締まることはできません。ただ、今回は日本電子書店連合さんに、協力をしていただけたことはとてもよかったと考えています」

◆出稿停止報道のあと、JAROに寄せられた声とは

出稿停止の決定後、SNS上では「ホッとした」「遅すぎる」といった様々な反応が広がりました。また、2025年6月4日に読売新聞がこの件を報じて以降、JAROに寄せられる、性的広告に関する苦情の件数が増加したといいます。

「読売新聞の記事が出たあと、JAROに寄せられる苦情が増加し、性的な広告への苦情も6月11日あたりまでの時点で150件ほどありました。

これは、読売新聞さんの記事で、JAROが性的な内容を含む不適切な広告への苦情や意見を受け付けていることが書かれていたことで、JAROの活動内容の認知率が上がったのだと考えています。

今回のことがきっかけで、『性的な広告の問題についてJAROに苦情を寄せよう』と思ってくださった方が多いのだと思います」

また、「日本電子書店連合の会員企業の出稿は止まったけど、それ以外の企業は出稿を続けている」「いまだに不適切な広告が表示されている」などの指摘も多く、JAROが問題広告の窓口として、社会的な注目と期待を集めていることがうかがえます。

<取材・文/都田ミツコ>

【都田ミツコ】
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。

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