トヨタの優位性が「消滅」/ダークホースはプジョー?/ル・マン優勝車を継続使用etc.【WECサンパウロ木曜Topics】

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2025年07月11日 16:40  AUTOSPORT web

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アウグスト・ファーフスと、病欠となるティムール・ボグスラフスキーの代役を務めるペドロ・エブラヒムという2名のブラジル人ドライバーを擁するザ・ベンド・チームWRTは、一戦限りのスペシャルリバリーを用意した。 2025年WEC第5戦サンパウロ
 WEC世界耐久選手権の2025年シーズン後半戦が、南半球のブラジル・サンパウロで幕を開ける。開幕戦から強さを発揮し、ル・マンも制したフェラーリがふたたび猛威を振るうのか、それともライバルメーカーが反撃の狼煙を上げるのか、注目の一戦を控えたインテルラゴスのパドックから最新トピックをお届けする。

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■ドライバーラインアップが大幅変更

 6月のル・マン24時間レースから4週間も経たないうちに、WECはサンパウロで活動を再開する。この6時間レースは、これまでのレギュラーシーズンレースと同様に36台のエントリーがあるものの、同じ週末にABB FIAフォーミュラE世界選手権とIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のイベントが重なるため、複数のチームでドライバーラインアップの変更が見られる。

 WECを欠場し、ドイツでのベルリンE-Prixに出場するのは、セバスチャン・ブエミ(8号車トヨタGR010ハイブリッド)をはじめ、ロビン・フラインス(20号車BMW MハイブリッドV8)、ジャン-エリック・ベルニュ(93号車プジョー9X8)、ストフェル・バンドーン(94号車プジョー9X8)の4名だ。この中、フラインスにのみ代役が立てられ、マルコ・ウィットマンがシェルドン・ファン・デル・リンデとレネ・ラストとともに20号車BMWをシェアする。

 ブエミがWECレースを欠場するのは、彼がトヨタ・ガズー・レーシング(TGR)のフルタイムドライバーになる前の2012年上海以来、初めてのことだ。このスイス人ドライバーはこれまでに90回のスタートを飾り、どのドライバーよりも多く出走している。一方、マンタイのリチャード・リエツ(92号車ポルシェ911 GT3 R)は今週末、クリスチャン・リードと並び、この世界選手権で2番目に多い89回目の出走を記録する予定だ。

 ハイパーカーエントリーのうち7台が“2ドライバーラインアップ”を採用しており、これは選手権史上最多となる。内訳はプジョーとポルシェ・ペンスキーの各ペア、アストンマーティンの2台、そしてトヨタの8号車だ。トヨタが2名体制で最後に出場したのは2017年のスパで、当時はホセ-マリア・ロペスがシルバーストンでの事故による背中の怪我から回復中だった。

 ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ(PPM)は、現役IMSA GTPチャンピオンのフェリペ・ナッセをリザーブドライバーとして現地に配置し、プジョー・トタルエナジーズではテオ・プルシェールが同様の役割を担っている。トヨタは、ホセ・マリア・ロペスをリザーブとしているが、このアルゼンチン人ドライバーはLMGT3クラスにアコーディスASPチームから参戦している。


■新社長は現地に来られず

 LMGT3クラスの変更点には、アメリカ人ドライバーのアンソニー・マッキントッシュが含まれる。彼は10号車アストンマーティン・バンテージAMR GT3エボ(レーシング・スピリット・オブ・レマン)でWECデビューを飾る予定だ。

 また、ペドロ・エブラヒムが、病欠のティムール・ボグスラフスキーに代わって31号車BMW M4 GT3エボ(ザ・ベンド・チームWRT)のステアリングを握り、中山雄一はウェザーテック選手権のためカナディアンタイヤ・モータースポーツ・パークにいるベン・バーニコートの代役として78号車レクサスRC F GT3(アコーディスASPチーム)に搭乗する。

 Sportscar365は、デレク・デブールが次戦のサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)で10号車アストンマーティンに戻ると理解している。しかし、マッキントッシュは富士とバーレーンでのシーズン最終2レースへの出場に関心を示している。

 アイアン・リンクスは、ル・マンでのアンドリュー・ギルバート/ローカン・ハナフィン/フラン・ルエダというラインアップを60号車メルセデスAMG GT3エボで維持した。これは残りのシーズンも継続する予定だという。

 同チームのメルセデスAMGシャシーは、両方とも5月のスパ・フランコルシャン6時間レースで使用したものと同一である。1989年のル・マンで優勝したザウバー・メルセデスC9へのオマージュとして塗装されていた3台のクルマはル・マンでの戦いの後、すべて競技から引退した。対照的にル・マンで総合優勝を飾った83号車フェラーリ499P(AFコルセ)は同一シャシーでサンパウロ6時間レースを戦う。

 PPMのマネージングディレクターであるジョナサン・ディウグイドは、最近ペンスキー・レーシングの社長に昇進したが、耳の感染症を患い飛行機に乗れないため今週末は現地にいない。しかし、ポルシェ・ペンスキーの競技ディレクターで最近NTTインディカー・シリーズも含む包括的な役割に昇進したトラビス・ローは、アイオワではなくブラジルにいる。


■LMDhの2メーカーが「非常に強い」

 インテルラゴスの名で知られるアウトドローモ・ホセ・カルロス・パーチェは、前年のイベント以降完全に再舗装され、アスファルトの補修も追加で行われた。昨年は、WECが2014年以来初めて4.309kmのこのサーキットに戻った年であった。

 ミシュランで耐久プログラムマネージャーを務めるピエール・アルベスは次のように述べた。「サーキットが完全に再舗装されたため、分析をほぼゼロからやり直す必要がある。フリー走行と予選中に各車の全ラップを分析し、新しいアスファルトとタイヤがどのように相互作用するかを正確に理解する。これによって戦略を最適化し、パートナーを最大限にサポートできるようになる」

 ハイパーカーチームには今週末、ミシュランのミディアムコンパウドとハードコンパウンドのタイヤが割り当てられている。一方、LMGT3チームはグッドイヤーの新しいハードタイヤを初めて使用する。この新しいグッドイヤータイヤはCOTAでの第6戦ローン・スター・ル・マンとシーズン最終戦のバーレーン8時間レースでも使用される予定だ。

 TGRヨーロッパのテクニカルディレクターであるデイビッド・フルーリーは、昨年ミシュランのミディアムコンパウンドでレース全体を走り切って優勝した彼らのアドバンテージが、再舗装によって消滅したと考えている。

「もちろん、ここでテストはしていない。今日の午後にトラックウォークをしただけなので、まだ分析が必要だ」と語ったフルーリー。「いくつかの測定を行ったが、タイヤについて明確な全体像を把握するためにはまだ分析を要する。昨年とは状況が異なる明確なリスクがある。昨年のような強力なアドバンテージは得られないだろう」

 彼はまた、トヨタのレースに影響を与える可能性のある、改訂されたBoPテーブル(性能調整表)についても言及した。「レース性という点でも非常に難しいと予想している。なぜなら、パワーが低く、重量が重いからだ。低速コーナーからの立ち上がりでは、他のほとんどのクルマについていくのに非常に苦労するだろう。しかし、フェラーリはほぼ同じ作動点にある」

 フルーリーは、今週末はキャデラックとポルシェが「非常に強い」と予測しており、プジョーも「机上では」再舗装の恩恵を受け、再浮上する可能性があると述べた。

 最近、FIA国際自動車連盟の会長選挙への立候補を表明したティム・メイヤーは、今週末WECのパドックにいる。メイヤーは、フォーミュラ1のスチュワードを務めた経験豊富なモータースポーツの役員でありFIAの幹部である。彼は先週末のF1イギリスGPで、現会長モハメド・ビン・スライエムの対抗馬として会長選に立候補することを正式発表した。

 WECのトラックアクションは11日金曜の11時(日本時間23時)のフリープラクティス1で始まり、同日15時45分(日本時間12日3時45分)スタートのフリープラクティス2に続いていく。初日の走行は各90分のプラクティスのみだ。

[オートスポーツweb 2025年07月11日]

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