51号車フェラーリ499P(フェラーリAFコルセ)と007号車アストンマーティン・ヴァルキリー(アストンマーティンTHORチーム) 2025年WEC第5戦サンパウロ 全8戦で争われるWEC世界耐久選手権は、ル・マンの激闘のあと戦いの舞台を南米ブラジルに移し、この第5戦『サンパウロ6時間レース』から2025年シーズンの後半戦をスタートさせる。走行初日はポルシェ963の6号車と同5号車がワン・ツーとなった金曜のインテルラゴスから、今大会に係る最新トピックをお届けする。
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■予想していたほどではない?
金曜日にインテルラゴスで開幕した『サンパウロ6時間レース』のフリープラクティスセッションでは、グッドイヤーの新しいイーグル・ハードコンパウンドタイヤが公式に導入された。これは今週末、LMGT3チームが利用できる唯一のオプションとなる。
グッドイヤーの耐久レース責任者であるマイク・マクレガーは、このタイヤの開発プログラムには、アルメリア、バルセロナ、ポール・リカール、スペイン南部のモンテブランコ・サーキットなど、さまざまサーキットで現在のLMGT3メーカー全9社が参加する7500kmのテストが含まれていたと説明した。なお、スパ・フランコルシャンでの2回のテストは雨のために中止となっている。
マクレガーはさらに、現在のタイヤは33パーセントが持続可能な素材で構成されていると説明し、2027年に新しいタイヤ群が導入される際には、これを66%に引き上げることを目標としていると述べた。
Sportscar365は、WECがインテルラゴスを最後に訪れて以来、このサーキットは2回の再舗装が行われている理解している。。1度目は昨年11月のF1サンパウロGP前。その後、今年の初めにバンプの苦情に対処するために追加の作業がサーキットの一部で行われた。
ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのドライバーであるケビン・エストーレは、再舗装されたアウトドローモ・ホセ・カルロス・パーチェ(インテルラゴス)が、今週末のレースに向けて多くの競合他社が当初予想していたほど、路面のグリップレベルを「劇的に」変えていないと述べている。
FP2でトップタイムを記録した彼はSportscar365に対し、次のように語った。「正直なところ、バンプの処理とアスファルトの一貫性において良い仕事をしたのは確かだ。しかしグリップに関しては、大きな違いはない。少しは良くなっているが、その一方で路面にはあまりラバーが載っていないので、今後路面が良くなるかもしれない」
フェラーリのパフォーマンスおよびレギュレーションマネージャーであるマウロ・バルビエリ氏は、新しい路面の結果としてタイヤの劣化が「わずかに低い」ように見えると述べている。彼は、気温が低くなっていることも助けになっている可能性があるとし、ふたつの効果を切り離すのは難しいとしながらも、「一般的に、路面はよりグリップがあり、より速いように見える。バンプの点では少し滑らかになっている。タイヤはより良い状態にあるようだ。タイヤに関しては楽観的で、劣化も少ないように見える」と説明している。
また、バルビエリは、「レース中に多くのハードタイヤを見ることになるとは思わない」と記者団に語り、「予想気温が下がっており、これはハードよりも間違いなくミディアムの方向に向かっている」と付け加えた。
昨年、トヨタがここで勝利を収めるのに役立ったミシュランのミディアムコンパウンドをレース全体で利用できるか尋ねられた際、ペンスキー・レーシングの競技ディレクターであるトラビス・ロウは、その結論を出すのはまだ時期尚早であると述べた。同氏はSportscar365に次のように語った。「セッションが進むにつれて評価していくと思う。明らかに、誰もが我々と同じことを見ている。最初のセッションで必要なデータを収集する目標を達成した。次のプラクティスを通じて注視していく」
■2台揃ってのトップ10入りは初
ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツは11日金曜のインテルラゴスでの両セッションでトップに立ち、フリープラクティス2では、6号車ポルシェ963を駆るエストーレがチームのワン・ツー・フィニッシュを牽引した。
このセッションでは、アストンマーティンTHORチームのアストンマーティン・ヴァルキリー007号車と同009号車が、それぞれ5番手と8番手タイムを記録した。WECの公式セッションで両車がトップ10入りしたのは、これが初めてだ。
ポルシェLMDhのファクトリーディレクターであるウルス・クラトルはSportscar365に対し、9月にサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)で開催される第6戦『ローン・スター・ル・マン』で、WECチームがドライバーの2名体制を継続するかどうかはまだ決定されておらず、チームマネジメントとドライバーの両方からフィードバックを求めていると語った。彼は、「COTAは非常に暑くなり肉体的に厳しいレースになる可能性があるため、ドライバーとの共同決定が必要」であると強調している。
ビスタAFコルセの54号車フェラーリ296 LMGT3は、ドライブシャフトに関連する問題が発生し、FP1でフランチェスコ・カステラッチのドライブ中に停止した。54号車は午後のFP2でコースに戻ったが、その後ターン9でマルコ・ウィットマンがドライブする20号車BMW MハイブリッドV8(BMW MチームWRT)と接触。ウィットマンはこの件で譴責を受けた。
一方、フェラーリAFコルセのチームマネージャーであるバッティ・プレグリアスコは、50号車フェラーリ499PがFP1でBMW LMGT3の1台とターン1で衝突し、スピンを喫し、ボディワークに損傷を負ったことを明らかにした。
先月、ル・マン24時間レースで優勝したロバート・クビサ(AFコルセ/83号車フェラーリ499P)は、伝統の一戦での勝利後、予想を上回るメディアからの関心が寄せられたと語った。「もちろん忙しかった。モータースポーツ以外でも、このレースがこれほど注目されていることに少し驚いたよ。今年のル・マンはレースだけでなく、その翌週にはメディア対応やイベント出演があり、非常に忙しいものになった。しかし勝てば良い代償だ」
■中継のグラフィックが変更に
31号車BMW M4 LMGT3(ザ・ベンド・チームWRT)は今週末、ブラジル国旗の色をあしらったスペシャルリバリーをまとっている。これは、母国でレースを行うアウグスト・ファーフスを称えるだけでなく、ブラジルの恵まれない子供たちへのクリスマスプレゼントを支援することを目的としたチャリティ募金の一環でもある。
ファーフスは次のように語った。「この活動は、僕が長い間続けてきたことだ。これは、ただ見た目の良い派手なクルマを超えたものだ。それをアピールするのは良いことだし、イエローとグリーンが日曜日に幸運をもたらしてくれることを期待している」
ハート・オブ・レーシングのチーム代表であるイアン・ジェームスは、LMH仕様のアストンマーティン・ヴァルキリーをまだ運転していないことを明らかにしているが、年末までにそれが実現する予定だという。
「LHM仕様はまだドライブしていないが、(トラックバージョンの)ヴァルキリーAMR Proは運転している」と彼はSportscar365に語った。「冬にシェイクダウンやフィルミングデーがあれば、やってみるつもりだ。きっと何周かステアリングを握ることができるだろう。今はパーツがたくさんあるので、運転しても大丈夫だろう!」
今週末からWECの公式放送で新しいグラフィック・パッケージが導入される。これには、リアルタイムデータを「合理化され、視覚を邪魔しない」形式で提供する「新鮮なオンスクリーンビジュアルアイデンティティ」が含まれる。これにより、予選セッション、例えばハイパーポール除外ゾーンなどがより明確に表示され、従来よりもわかりやすくなるという。
WECの公式YouTubeチャンネルで無料配信が行われるフリープラクティス3は、12日10時10分(日本時間22時10分)から行われ、その後14時45分(日本時間13日2時45分)から、決勝のスターティンググリッドを決定する予選とハイパーポールが実施される予定だ。
[オートスポーツweb 2025年07月12日]