2025年WEC第5戦サンパウロを制した12号車キャデラックVシリーズ.R 7月13日、WEC世界耐久選手権第5戦『サンパウロ6時間レース』の決勝レースが、ブラジルのインテルラゴス・サーキットで行われ、キャデラック・ハーツ・チーム・JOTAの12号車キャデラックVシリーズ.R(アレックス・リン/ノーマン・ナト/ウィル・スティーブンス組)が総合優勝。キャデラックにWEC初優勝をもたらした。
シリーズ最大のレースであるル・マン24時間から4週間、WECは2025年シーズンの後半戦に突入し、ここブラジルを皮切りにオースティン、富士、バーレーンで計4大会が行われていく。
そんな今季後半戦のオープニングとなったサンパウロ6時間レースは、12日土曜の予選でキャデラックがワン・ツーを形成。しかし、2番手につけた38号車は他車のアタックを妨害したとして1グリッド降格に。また、プロトンの99号車ポルシェも同様の理由で13番手スタートとなっている。
■序盤はポルシェが先頭走るも、ペナルティから12号車キャデラックがリカバー
迎えた決勝日は晴れ。気温は21℃、路面温度は28℃だ。地元出身の元F1ドライバー、ルーベンス・バリチェロのエンジン始動コールとフラッグ振動を合図に各車がグリッドを離れ、2周のフォーメーションラップのあと、6時間レースの戦いの火蓋が落とされた。
スタートではウィル・スティーブンス駆るポールシッター12号車キャデラックがポジションをキープするが、ターン8で5号車ポルシェが早くも首位を奪う。また、後方では93号車プジョーが20号車BMWをパスし、僚友94号車プジョーに次ぐ4番手に浮上している。
LMGT3クラスは、5番手スタートの95号車マクラーレンがレクサスのペアを含む計4台を抜いて順位を上げ、ポールシッターの10号車アストンマーティンに続く動きを見せたが、まもなく87号車レクサスに再逆転を許しその後は劣勢に。2番手の座を取り戻した87号車はスタートから20分後、ターン1でアストンマーティンをとらえてクラス首位に立った。
オープニングラップでトップに躍り出た5号車ポルシェが後続とのギャップを拡げるなか、スタートから40分過ぎにタイヤの内圧に係る技術違反のため、12号車キャデラックにドライブスルーペナルティの裁定が下る。これで2番手から4番手へダウンしたが、12号車は他車より10分ほど早く最初のルーティンピット作業を行い、全車のピット作業完了後には3番手に順位を上げている。
同じく2時間目にはミケル・イェンセン駆る93号車プジョーとアール・バンバーの6号車ポルシェの5番手争いが熱を帯びる。この争いは軽く接触する場面もありつつ、ポルシェに軍配が上がる。一方、トップを走る5号車ポルシェは一時、約10秒引き離していた38号車キャデラックに差を詰められ、スタートから1時間45分時点で完全に追いつかれる。さらに12号車も圧倒的なペースでトップ2台に接近し、2度目のピットイン直前には38号車をパスしてみせた。
3時間目に入ると、その12号車を駆るリンがトップに立ち、38号車が続いてキャデラックがワン・ツー体制を構築。5号車ポルシェが3番手、姉妹車6号車は4番手の94号車プジョーを追いかけている状況だ。一方、ここまで4連勝中のフェラーリ勢はペースが上がらず。トヨタの2台とともに序盤でワンラップダウンとなってしまう。
コース上に飛来したカイトと、LMGT3カーと接触して脱落した50号車フェラーリのパーツを回収するため2度フルコースイエロー(FCY)が入った同時間帯は、レクサスもLMGT3クラスでワン・ツー体制を築いた。なお、87号車が姉妹車を40秒弱リードしていたが、3回目のピットイン時にピットレーンでの速度違反がありレース折り返しの間際にドライブスルーペナルティを受けた影響で、直前に中山雄一が乗り込んだ78号車との差が12秒に縮まっている。
後半戦に突入してすぐ、首位12号車が3度目のピットインを敢行。直前のFCYが効いたか、計算上は最後の短い給油(スプラッシュ&ゴー)が不要に。約10分後にルーティンのピット作業に入った姉妹車38号車とのギャップは約8秒だ。3番手の5号車ポルシェとの差は17秒に開いた。トップ3の後ろでは6号車が94号車をかわして4番手に浮上し、トップ6にキャデラック、ポルシェ、プジョーがきれいに並ぶかたちとなった。これ以降ハイパーカークラスの上位は動きがほぼなくなり、5時間目の中盤でトップ2のギャップは54秒、首位から3番手は1分2秒と大きく開く。
レース終盤には2番手の38号車キャデラックに5号車ポルシェが接近しテール・トゥ・ノーズの争いに。この間に12号車が悠々とトップチェッカーを受け、キャデラックの初優勝をポール・トゥ・ウインで達成した。最後まで目が離せない展開となった2番手争いは、セバスチャン・ブルデーがポジションを死守。この結果、キャデラックは初優勝をワン・ツー・フィニッシュで祝うこととなった。
ポルシェ・ペンスキーの5号車と6号車が3位、4位で続き、5位には93号車プジョーをかわし、ラスト10分でロイック・デュバル駆る94号車プジョーを攻略した20号車BMWが入った。プジョーの2台は6位と7位。8位はル・マンウイナーの83号車フェラーリだ。トヨタ勢は小林可夢偉組7号車が14位、平川亮とブレンドン・ハートレーがふたりで戦った8号車は15位フィニッシュとなっている。
■レクサス中山組は惜しくも表彰台獲得ならず
LMGT3クラスは、レース中盤に中山がドライブする78号車レクサス対“女性チーム”の85号車ポルシェによる2番手争いが国際放送でも度々映し出され、このバトルの中ではポルシェが前に出るシーンも見られた。しかし、4度目のルーティンピットでレクサスが再逆転に成功する。さらに85号車はFCY手順違反のドライブスルーペナルティで順位を落としてしまう。
ワン・ツー・フィニッシュへの期待が掛かったレクサス陣営だが、ラスト1時間を前に81号車コルベットが87号車と78号車の間に割り込んでくる。さらに、フィニッシュまで30分を切って、見た目上のトップに立っていた85号車ポルシェが最後のピットストップを終えると2番手に。チェッカーまで14分、このポルシェを81号車のチャーリー・イーストウッドがターン1でパスして2番手に上がるも、こちらもトップは安泰。ラズバン・ウンブラレスク/クレメンス・シュミット/ホセ-マリア・ロペス組87号車が、レクサスにとってWEC初優勝となる記念すべきトップチェッカーを受けている。
2位は81号車コルベット。クラス3位表彰台は85号車ポルシェが獲得すると思われたが、最終盤に78号車レクサスをかわし4番手に上がってきていた10号車アストンマーティンがピンクのポルシェに強襲する。サンパウロ出身のエドゥアルド・バリチェロが残り5分で85号車の背後に迫ると、残り2分で逆転に成功したのだ。これにはグランドスタンドのブラジル人ファンが沸き立った。そのままチェッカーを受けたアストンマーティンが最後の表彰台を獲得している。
中山も乗り込んだ78号車レクサスは85号車ポルシェに次ぐクラス5位でフィニッシュ。終盤にペナルティを受けた佐藤万璃音組95号車マクラーレンは同9位となった。
WECの次戦第6戦は『ローン・スター・ル・マン』。アメリカ・テキサス州のサーキット・オブ・ジアメリカズ(COTA)での6時間レースは、9月5〜7日に開催される。
[オートスポーツweb 2025年07月14日]