ウランバートルの空港で、乳製品「アーロール」を口にされる天皇陛下=6日(代表撮影・時事) 天皇、皇后両陛下は6日からのモンゴル公式訪問を終え、13日に帰国された。滞在中、フレルスフ大統領夫妻と会見し、祭典「ナーダム」の開会式に出席。戦後80年に当たり、同国で亡くなった日本人抑留者を慰霊し、日本との架け橋となるモンゴルの若者をはじめ、幅広い世代と交流した。
▽モンゴルの文化に敬意
両陛下は初日の6日、首都ウランバートルの空港で、民族衣装を着た女性から乳製品「アーロール」を差し出されると真っ先に口にし、歓迎に応えた。
国賓としての公式行事が行われた8日、大統領夫妻主催の晩さん会では、大統領が「両国の友好関係の歴史に金字塔として刻まれる」と歓迎のあいさつを述べると、天皇陛下はモンゴル語を交えてあいさつし、国立馬頭琴交響楽団とビオラで日本の唱歌「浜辺の歌」など2曲を共演。会場から大きな拍手が送られた。
同国の歴史と文化に敬意を表するため、天皇陛下はチンギスハン国立博物館や仏教寺院「ガンダン寺」を訪問。元日本留学生が設立した日本式高専や学園、日本の支援で造られた水関連施設などにも足を運んだ。雨にも見舞われたが、乾燥気候の同国では「縁起が良い」と言い伝えられ、むしろ歓迎された。
▽抑留の歴史に光
8日の歓迎行事の後、両陛下は丘陵地に建つ「日本人死亡者慰霊碑」を訪れた。雨の中、両陛下は花輪を供え、深々と頭を下げて1分間黙とうをささげた。その後、差していた傘をたたみ、さらに一礼した。日本人が抑留された地での慰霊は歴代天皇初だった。
父がモンゴル抑留中に亡くなり、今回慰霊に立ち会った鈴木富佐江さん(88)は「今まで日が当たってこなかったモンゴル抑留者の魂が浮かばれた」と語った。
傘をたたんだ対応について、随行した宮内庁幹部は「傘を差した形での拝礼は、きちんとやるという観点からよろしくないとのお考えだったのではないか」と推し量った。
両陛下と11日に日本大使公邸で面会し、日本人抑留者資料館「さくら」を設立したウルズィートグトフさん(48)は、今回の訪問を機に、「モンゴルのいろんな年代の人が日本の抑留者のことを知ることになったと思う」と話していた。

フレルスフ大統領夫妻主催の晩さん会で、ビオラを演奏される天皇陛下=8日、ウランバートル

小中高一貫の公立学校「ウランバートル市第149番学校」を訪れ、ICT(情報通信技術)教室を見学される天皇、皇后両陛下=9日、ウランバートル(代表撮影・時事)

日本式教育を特色とする私立学校「新モンゴル学園」の訪問を終え、ダンスを披露した子どもに笑顔を見せられる天皇陛下=11日、ウランバートル(代表撮影・時事)

チンギスハン像前で、モンゴルのフレルスフ大統領夫妻(右)と手を振られる天皇、皇后両陛下=8日、ウランバートル(代表撮影・時事)

「日本人死亡者慰霊碑」に供花し、黙とうされる天皇、皇后両陛下=8日、ウランバートル(代表撮影・時事)

祭典「ナーダム」開会式に出席後、羊の骨を指ではじいて的に当てる競技「シャガイ」を体験される天皇、皇后両陛下=11日、ウランバートル