産経新聞社提供 6月下旬に放送された『ダウンタウンDX』(読売テレビ・日本テレビ系)の最終回では、結局ダウンタウンの二人の姿は見られないまま32年の番組の歴史の幕を下ろしたことが話題となった。
3月から約2ヶ月間、体調不良のため休養していた浜田雅功は、『DX』以外の番組には復帰を果たし、休養前と変わらぬテンションで笑いを届けている。
いっぽうで松本人志の芸能活動の再開については今も実現できていない状況が続いている。
◆「ネットなら出演できる」のはなぜか
そんなところで思い出したのが、そういえばダウンタウンとしての今後の活動について、所属の吉本興業が今年の夏に向けネット配信サービス『ダウンタウンチャンネル(仮)』を開始することを発表していたが、あれはどうなっているのだろうか。
もう7月もなかばにさしかかり夏本場ではあるが、正式な続報はない。『女性セブンプラス』では「始動は今秋になる」と報道されてはいるものの、真偽のほどははっきりとしていない。
この「配信での復活」というかたちについては、シンプルに復帰を喜び歓迎する派、「テレビはオワコン、もう出なくてもいい」とネットを主軸にすること肯定派、はたまた「ネット落ち」のように冷笑する派など、いろいろな意見が見られた。
テレビからネットに活動の主軸を移行させた芸能人は少なくない。そのなかにはトラブル、スキャンダルなどによって活動を自粛した後、テレビへの復帰は叶わずまずはネットでという、松本人志に近いケースも珍しくない。
なんとなくそういうものだと受け入れていたものの、考えてみればなぜテレビは出られないのにネットならOKとなるのか。スポンサーが、という話もよく聞くが、ネットだって広告が入っている。なぜネットのスポンサーは大丈夫なのか。素朴な疑問が生まれてきた。
◆テレビとネットは責任の所在が異なる
テレビの人気バラエティなどを手がけるある放送作家にたずねてみたところ、スポンサーとメディアの関係性のようなものが、実はテレビとネットで根っこの部分が異なるのだと解説してくれた。
「まずテレビは、テレビ局が制作著作を行い、そのもとに番組があるという形になります。スポンサーは基本的にテレビ局や番組に対してつくもので、タレント等出演者個人につくものではありません。ですから、その番組の出演者に何か問題が起きた場合、その責任は番組、そして番組を作る局にあるということになるんです」
ここ最近では国分太一の一連の騒動で日テレ社長が謝罪会見をおこなったことが記憶に新しいが、これもそういうことだろう。
いっぽう、ネットの場合はというと……
「多くの芸能人の番組チャンネルを持つYouTubeをわかりやすく例としてあげますが、YouTubeというものは配信プラットフォームであり番組の制作者、著作者ではありません。YouTubeの番組広告は、個々の動画、チャンネルに対してそれぞれつくというかたちになるんです。責任は動画を配信する個人(またはチャンネル)にあるという考え方となります」
YouTubeで配信される番組も、それこそ玉石混交、“迷惑系ユーチューバー”という言葉もあるように、道徳的に首をかしげる内容や最初から炎上狙いのような内容のものも存在する。
しかしそれも、配信する側に責任があるため、その内容によって個々に判断され広告が外されたりチャンネルが配信停止になったりするということが多いという。
「もちろんYouTubeだけでなくTikTokなどもそうかもしれませんが、個人やチャンネル単位でやりすぎたなら、そのチャンネルそのものを停止させればいいという考え方であるぶん、テレビよりも基準はゆるめになる理由のひとつということになると思います」
◆AmazonプライムやNetflixなど課金ネットコンテンツの考え方
では、たとえばAmazonプライムやNetflixといった、課金ネットコンテンツの場合はどうなのか。前出の放送作家はこう言う。
「世間で好感度が下がった芸人さん、タレントさんなどが、アマプラやネトフリで面白いことをやったり発言したりして注目されることはあります。この場合は課金、お金を払ってでも見たいという人が見るコンテンツとなるので、実力に対して視聴者がお金を払い、スポンサーもつくというかたちになります。地上波テレビのように無料で流れてきて不快な気分になるという性質のものとは全く異なります」
ネットの動画チャンネルなどの視聴が大幅に浸透しているが、映像メディアの中心はもはやテレビではないということなのだろうか。
「テレビ離れとはいえ、テレビのある家庭はまだまだ主流派だと思います。
ドラマレビューや情報番組での発言の抜き出し、大きなスポーツの大会やイベントがあればテレビの中継などを中心に盛り上がったりすることからも、テレビがまだまだ世の中を動かしている部分はあると思います。
しかし、誰でもそれこそ家族がそれぞれにスマホで動画を見られる環境も浸透したいまは、従来のような優位性はなくなってきていると思います」
主な活動の場をネットにシフトしたお笑い芸人も少なくない。逆にネット動画の人気でテレビの人気者になるケースやそれぞれが有機的に作用するパターンもある。そんな流れのなか、ずばりダウンタウンも遅かれ早かれそういう時期が訪れていただろうか。
◆スキャンダル無しでもダウンタウンはネットに移行したか
「そこはなんとも難しいところですね」
と前出の放送作家は言う。
「『ダウンタウンチャンネル』も、行き場がなくなってしまったからと言われたらその通りだと思います。
中居(正広)さんの場合もそういう部分はありましたが、もしまた新たな重大なスキャンダルが発覚してしまったらと思うと、最初にお話したようなテレビ局というメディアの性質上、怖くてなかなか戻せないというところもあるでしょう。
松本さんのスキャンダルが発覚せずテレビに出られる状況が続いていたら、そうする必要なく、番組はどれも今も続いていたでしょうし、いくら時代の流れといってもネットに移る必要性は感じなかったと思います」
しかし、松本個人かダウンタウンとしてかはわからないが、ネットでの活動の頻度はいずれ増えたのではないかとみる。
「もちろん松本さんも今のコンプラ事情などからテレビではできないこと、ネットだからできることを考え、『ドキュメンタル』(Amazon)などに取り組んだと思いますので、ネットは自由度の高い表現の場のひとつという捉え方だったのではないでしょうか。
『ダウンタウンチャンネル』も、内容はまだ全くわかりませんが、おそらく課金コンテンツとして、動画配信のプラットフォームというよりはファンクラブのような存在として見たいファンがお金を払って見るというものになるのではないかと。
新作の動画が見られるのであればそれはもちろん楽しみですが、過去のコンテンツ、各テレビ局が権利を持っているようなものが見られるようなものであれば、それこそ番組著作権のあり方も含め、『ダウンタウンチャンネル』がきっかけとなり、新しい時代へと突入する可能性もあります」
何も見えていない状況ではあるが、もうしばらく動きを見守りたい。
<文・太田サトル>
【太田サトル】
ライター・編集・インタビュアー・アイドルウォッチャー(男女とも)。ウェブや雑誌などでエンタメ系記事やインタビューなどを主に執筆。