写真 夏の風物詩である、そうめん(素麺)。暑くて食欲が湧かなくてもツルッと食べられるのが魅力ですよね。
今回は、そんな“そうめん”がきっかけで、彼との関係に亀裂が入ってしまった女性のエピソードをご紹介しましょう。
◆アプリで意気投合! 結婚を意識する相手と出会う
飯塚佳代さん(仮名・29歳・契約社員)は婚活アプリで知り合った加藤智也さん(仮名・36歳/メーカー勤務)とお付き合いをすることになりました。
「お互いに初めてマッチングした相手だったので、最初のデートから何か運命的なものを感じて、いきなり結婚の話題になって盛り上がったんですよね。そして2回目のデートの時にはもう智也さんにお付き合いを申し込まれOKしたんです」
智也さんのことを知るのはとても楽しく、話をする度に新鮮な発見があったそう。
「ですがちょっと引っかかるところがあって。実は智也さんて、とても食が細いんですよ。私は食いしん坊だしわりと食べる方なので……何だか恥ずかしくて、一緒に居る時には思いきり食事を楽しむことができなくなってしまったんですよね」
◆食事中に、素が出せなくなってしまった私
佳代さんがそれまでお付き合いしてきた男性は、よく食べる人ばかりでした。
「なので最初のうちは智也さんに対して『本当にこれしか食べないの? 嘘でしょ?』と毎回驚きましたが、それ以外は結婚相手として申し分のない相手なんです。だから、とにかく嫌われないように自分も小食の振りをして、1人になった隙にこっそりお菓子やカップラーメンで空腹を満たすようになっていったんです」
そんなある夏の日、智也さんが「今日の夕食は僕が作るよ」と佳代さん宅のキッチンでそうめんの準備をしてくれたそう。
◆麺を茹で始めた彼に「嘘でしょ?!」と思ったワケ
智也さんはよく実家で食べていたという、干し椎茸と鶏肉と長ネギの入った熱々のお汁を作ってくれました。
「『これに冷たいそうめんをつけて食べるんだよ』と智也さんが2人分の麺を茹で始めたんですが、なんとたった2束だけだったんですよ! あの細い束2つ! うちの実家はそうめんの時はいっぱい茹でて麺がくっつかないように一口サイズに丸めておいて、残ってしまっても翌日にお味噌汁に入れて食べたりしていたので衝撃的だったんですよね」
智也さん特製のつけ汁はダシが効いていて、そうめんとの相性も良くあっという間に完食してしまったそう。
「実は私、そうめんが大好物で……どうしても我慢できなくなって、智也さんが帰るようにさりげなく促したんですよ」
◆彼の帰宅後、思いっきり自分タイムを楽しむはずが
そして智也さんがいなくなるとすぐにそうめん3束を茹でて、残っていたつけ汁に温玉もトッピングし思う存分食べました。
「しかもお気に入りのYouTubeチャンネルを見ながら、超ごきげんな感じで」
そんなとき、気配を感じふと振り返ってみたら……。
「背後に悲しい目をした智也さんが立っていて、あまりのことに驚きすぎて飛び上がってしまいました。私の態度がおかしかったから、『もしかして浮気しているのかも?』と嫌な予感がして戻ってきたそうなんです」
智也さんは、完全に気を抜いてリラックスモードの佳代さんがお汁を豪快にはねさせながら大量のそうめんをズルズル食べてYouTubeを見ながら大笑いしたり歌ったりしている姿を見てドン引きしてしまったそう。
◆「本当に器の小さな男でごめんなさい」
「絶対に見られてはいけない私の核の部分を思いっきり晒してしまい、なんとかしようと言い訳しながら智也さんにすがりついたんですよ」
ですが智也さんは「本当に器の小さな男でごめんなさい。佳代ちゃんには他にぴったりの男性が必ずいると思うから」と慰め(?)ともとれる台詞を残すと、逃げるように去っていきました。
「すぐに謝罪のLINEをしましたが既読にもならず、そのまま音信不通で一度も話し合うことなく振られてしまいました。あの時のことを思い出す度に恥ずかしくて『わー!』と大声で叫びたくなるんですよね」とため息をつく佳代さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop