写真/PIXTA 7月7日、ローソンはコンビニ店舗の駐車場を活用した車中泊サービスを開始すると発表した。キャンピングカーの保有台数は’24年時点で16万5000台と年々増えており車中泊先の供給不足にも対応。当面は、周辺にレジャー施設がある千葉の房総半島南部の6か所で実証実験がなされる予定だ。
◆アウトドア派か否かで分かれる賛否
このニュースを受けてネット上では、「夜間にトイレや買い物ができるのは安心感がすごい」「防犯面でもコンビニの明るい場所に泊まれるのはありがたい」「地方活性化にもつながりそうで良い取り組みだと思う」といった声が上がる一方、「周辺住民の迷惑にならないか心配…夜中にエンジン音やごみ問題が起きそう」「コンビニの駐車場が車中泊専用になると、普通の買い物客が停めにくくなるのでは?」「治安が悪化しないか不安」など、主にアウトドア好きの旅行者からは期待の声が大きいものの、地元住民や日常利用者からはマナーや治安面の懸念もみられる。
千葉県南房総市出身の元放送作家・鈴木おさむ氏は肯定派。旅は目的地だけが肝心ではない、その旅のすき間にこそ醍醐味があると持論を語る(以下、鈴木氏による寄稿)。
◆迷惑だったはずの車中泊を逆手に取るビジネス
コンビニが日本の景色をまた一つ変えるかもしれないサービスを始める。ローソンがコンビニ店舗の駐車場を活用した車中泊サービスを開始すると発表したのだ。
コンビニ側としては長時間駐車の車中泊は迷惑だったはずなのだが、それを逆手に取ってしまうビジネス。まずは千葉県内のローソン6店舗で、7月14日から実証実験としてスタートするらしい。24時間営業でトイレ、ごみ箱、電源も完備し、そして買い物にも困らないという安心感がある。
車中泊という言葉をこの数年でよく聞くようになった。インバウンド需要などでホテルの宿泊費が高騰している昨今、低予算で、かつ、「旅情」や「自由」を感じることができる。
だが、現実はそう甘くはない。深夜や早朝のトイレの不安、どこに停めればいいのかわからない駐車場、時には近隣住民とのトラブル。そんな不安が、一晩2500〜3000円(クレカ専用)という手頃さと、コンビニの“有人の安心感”によって、ぐっと軽減され、女性や子連れでも安心して利用できる。チェックイン18時、チェックアウト9時とルールはあるものの、それが旅にとっていい縛りとなるだろう。
◆ローソンで普段と違う“非日常”を
想像してほしい──夕暮れのロード、疲れた体を休めたいとき、たどり着いたローソン。車を停め、エンジンを切ると、静かな夜が訪れる。店内には明かりが灯り、買いたいものはすべて揃っている。コンビニで買った缶コーヒー片手に、つまみを頬張る。自由で愛おしいその時間。車内に敷いたマットから夜空を眺めれば、普段とは違う非日常を感じられる。
移動と滞在を兼ねる「車旅」に、コンビニという日常の象徴を重ねることで、新しい旅のかたちが生まれるだろう。実際、日本RV協会が認定するRVパークは全国で500か所を超えるが、コンビニとの連携は今回が初となる。駐車場の有効活用にもつながり、ローソンにとってもまた、新たな挑戦である。
僕は千葉県南房総市出身だが、とにかく駐車場が広いコンビニが多い。不動産の有効利用となるだろう。
旅は、目的地だけが肝心なのではない。意外と絶景で感動しきれないことも多々あった。その旅のすき間、夜の帳の下にある何げない場所や時間に、心は深く揺さぶられ思い出ができる。無人の道の駅より、「いま誰かがいる」安心、それこそが“新しい当たり前”として日本の新たな景色になる気がする。
この小さな革命が全国のコンビニにも広がったとき、そこには新しい旅の地図が広がるだろう。
【鈴木おさむ】
すずきおさむ●スタートアップファクトリー代表 1972年、千葉県生まれ。19歳で放送作家となり、その後32年間、さまざまなコンテンツを生み出す。現在はスタートアップ企業の若者たちの応援を始める。コンサル、講演なども行っている