【高校野球】九州国際大付の「スーパー1年生」岩見輝晟が40校の争奪戦の末、地元・福岡に残った理由

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2025年07月15日 18:10  webスポルティーバ

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 夏の甲子園出場をかけた球児たちの熱い戦いが本格化してきた。今年も、昨年の中学球界を騒がせ、鳴り物入りで高校に入学してきた「スーパー1年生」が早くもチームの戦力となり、全国各地でデビューを果たしている。

 福岡県で春3回、夏9回の甲子園出場を誇る九州国際大付の二刀流・岩見輝晟(いわみ・らいせ)外野手(1年)も、そのひとりだろう。

【夏の大会は背番号9でベンチ入り】

 岩見は背番号9で夏の福岡大会ベンチ入りを果たすと、7月11日、初戦となる3回戦の宗像戦に「3番右翼」で出場。3回一死から中前打を放つなど、3打数1安打2四球2得点の活躍で7対0、8回コールド発進に貢献した。
 
 188センチ、73キロ。身長は小6で177センチに到達し、高校入学後には2センチ伸びるなど、まだまだ成長途上だ。中学時代はヤング志免レッドスピリッツ(福岡)に所属。最速135キロの直球を投げ込む左腕として注目を浴び、福岡はもちろん、関東や関西の名だたる強豪約40校から勧誘を受けた。
 
 昨夏、京都国際の4番・主将として甲子園優勝に導いた藤本陽毅(ふじもと・はるき/糸島ボーイズ出身/現・中央大)や、横浜(神奈川)の最速152キロ右腕・織田翔希(おだ・しょうき/北九州市立足立中出身)のように、近年、福岡の有望中学生は県外の強豪校へ進学する傾向にある。ただ、岩見は地元から甲子園を目指す決断を下した。

「初めて観戦にいった高校野球の試合が、(2022年夏の)九州国際大付と筑陽学園の福岡大会決勝でした。そこで、九国が1対0で勝って、かっこいいなと。地元から甲子園に出て、福岡の方から応援されたほうがいいなと思って選びました」

 中学時代はマウンドで脚光を浴びたように、今でも「ピッチングのほうが得意です」と言い切る。それでも、高校では打撃のほうが先に注目された。

 入学までに、プロ野球選手がネクストバッターズサークルなどでつけるバットウエイトを使用し、高めを振り抜く意識で素振りを繰り返したところ、飛距離が飛躍的にアップ。今春の北九州市長杯では背番号19をつけ、準々決勝の折尾戦で先制本塁打を放つなど、3安打5打点の大活躍でチームの優勝に貢献した。

「バッティングはこの春から自分でもよくなったなという感じです。あまり引っ張りすぎないというところを意識しています」

【体重5キロ減でも球速3キロアップ】

 楽天、ヤクルトでプロを経験している就任2年目の楠城祐介監督も、その才能に目を丸くする。

「持っているものは本当にすばらしいです。投球がいいのは当然わかっていましたが、打つほうはそんなに目立った選手ではありませんでした。線が細いので、体の強化のために外野をやらせようと思っただけなのですが、北九州市長杯であれよあれよという間に打ってしまいました(笑)。パワーはないんですが、技術が高いので、打球が遠くに飛ぶんです。自分らの思いとは裏腹に、こんなにも早く注目されるとは思ってもいなかったです」

 夏の大会を前に通算3本塁打をマークした打撃も目を見張るものがあるが、今後は投手としてもさらなる注目を浴びることが予想される。下半身が開く悪癖を修正したところ、最速は138キロまでアップ。夏の大会前の練習試合では完封勝利も経験するなど、1年生ながら9回を投げきる完投能力も備わっている。楠城監督が続ける。

「(今春選抜出場の)広島商との練習試合でも途中から投げて、ノーヒットに抑えました。昨年までのエースだった田端竜也(現・青山学院大)の1年の頃と比べると、岩見のほうが完成度は高いです。現状で138キロ出ているので、3年生になったら、140キロ台中盤から後半まで出るんじゃないでしょうか。この夏も投手で起用する可能性はもちろんあります」

 まだまだ球速が出るということは、岩見自身が一番自覚している。中学3年の時点で体重は78キロあったが、初めて経験する寮生活などの影響もあり、73キロまで落ちた。そのなかで最速を3キロも更新したところに、大型左腕の非凡さを感じる。現在は高校生活にも慣れ、寮ではバスタイムでリラックスする余裕も出てきた。

「身長も190センチはいくかもしれないので、体重も83キロぐらいにして、高校を卒業するまでに150キロに到達したいです。まずはこの夏、投げることができたら140キロを出したいです。体を大きくしたらもっと球も速くなるし、打球も飛ぶようになると思うので、まずはしっかりご飯を食べることが目標です(笑)」
  
 投手用グラブの手の平部分には「感謝」の刺繍文字が躍る。両親はもちろん、自分の成長を陰から支えてくれる指導者、そして1年生から試合に出してもらうことへの感謝を忘れず、今後も二刀流でさらなる高みを見据えていく。

「この夏は3年生がラストの大会なので、投打の両方で活躍して、自分で勝つぐらいの気持ちでやっていきたいです。そして甲子園に行って優勝して、将来的には高校侍ジャパンにも選ばれて、ドラ1でプロに入り、メジャーに行くのが夢です」

 プロで参考とする投手や打者、目標とする選手は「特にいません」と即答する。自分が子どもたちから目指される「オンリーワン」の存在となるべく、長き戦いの幕は開いたばかりだ。

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