機関砲(76ミリ砲の可能性)を搭載した1万トン級の中国海警船(海上保安庁提供) 2025年版防衛白書は、台湾周辺で活発化する中国の軍事演習の動向を分析した。台湾有事を念頭に置き海域を封鎖する作戦で、海上の法執行機関とされる中国海警局の役割がより重視されている可能性に言及した。沖縄県尖閣諸島で領海侵入を繰り返す海警船についても、装備や運用能力が増していることを警戒した。
白書は台湾を包囲、封鎖する軍事演習への海警参加を中国が公表したことを踏まえ、「海警局を前面に展開させ、(武力攻撃に至らない)グレーゾーン事態で封鎖する可能性がある」と指摘した。海警は中国軍の最高指導機関である中央軍事委員会の指揮下にあるが、海上保安当局として警察権を行使する立場を強調し、台湾封鎖時に米国の軍事介入を回避する狙いがあると考えられる。
24年5月の軍事演習で海警が台湾東部海域で活動したことや、同年10月の演習で台湾の重要港湾などの封鎖・管理が訓練され、海警が台湾全周をパトロールしたことを例示。台湾を取り囲む形で演習区域が設定されたことなどを踏まえ、軍と海警が連携して船舶の航行を制限し海域を封鎖し、台湾を孤立させるとの見方を示した。
海警が所属船舶の大型化や76ミリ砲などの軍艦並みの武装化を図り、1万トン級の巡視船2隻を保有している可能性も記述。尖閣諸島領海に侵入したり、領海外側の接続水域を航行したりする海警が「砲」を搭載していることも指摘した。
白書は、24年に接続水域で確認された海警船の活動日数が過去最多の355日に達したことにも触れ、「尖閣諸島周辺において力による一方的な現状変更の試みを執拗(しつよう)に継続している」と強く懸念した。