フェラーリ敗戦も連勝継続/ペナルティで有利に/レース前に優勝していた鉄人etc.【第5戦決勝後Topics】

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2025年07月17日 06:50  AUTOSPORT web

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2025年WEC第5戦サンパウロ6時間レースには、3日間で8万4741人が来場した
 南半球のブラジルで、7月11〜13日に開催されたWEC世界耐久選手権第5戦『サンパウロ6時間レース』。2025年シーズン後半戦のオープニングとなった同イベントでは、12号車キャデラックVシリーズ.Rがポール・トゥ・ウインを達成し、ハーツ・チーム・JOTAの姉妹車である38号車とのワン・ツーでキャデラックのシリーズ初優勝に華を添えた。ここでは戦いの舞台となったインテルラゴス・サーキットから決勝後の各種トピックをお届けする。

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■ハイパーカークラス初の2社で優勝

 ハーツ・チーム・JOTAは、キャデラックに待望のWEC初優勝をもたらし、英国チームはこれをワン・ツー・フィニッシュで達成した。サム・ヒグネットとデビッド・クラークが所有する同チームは、昨季2024年の第3戦スパ・フランコルシャン6時間レースでポルシェ963とともに勝利を収めた後、ハイパーカーチームとして初めて、異なるふたつのメーカーで勝利を挙げたチームとなった。

 ウィル・スティーブンスは両レースで優勝し、ノーマン・ナトは昨年のWECスパをベルリンでのABB FIAフォーミュラE世界選手権コミットのため欠場した後、レベリオン・レーシングとともに2020年のローン・スター・ル・マンで勝って以来、初めてトップクラスで表彰台の頂点に立った。なお、ナトは今週末、フォーミュラEのベルリンE-PrixよりもWECでのドライブを優先していた。

 ナトは次のように述べた。「昨年はベルリンにいて優勝を逃した。今日もフォーミュラEはベルリンでのレースだったが、僕はここブラジルにいる」。このフランス人ドライバーは2019年の上海(LMP1)と翌年のCOTA(LMP1)、2022年モンツァ(LMP2)、そして2025年サンパウロ(ハイパーカー)と4つの異なる大陸で計4回のWECクラス優勝を果たしている。

 アレックス・リンのドライブでポールポジションを獲得した12号車キャデラックVシリーズ.Rは、2012年の初開催以来、サンパウロ6時間レースの全優勝車がフロントロウからスタートしているという記録を維持した。

 JOTAのチーム共同オーナーであるヒグネットは、スティーブンスが開始1時間目にタイヤ空気圧違反でドライブスルーペナルティを受けた後、戦略を変更せざるを得なかったことを明かした。これにより、最初のフルサービスピットストップが早まり、四輪交換が行われた結果、リンの最初のスティントでは右側のみ新しいタイヤが装着されることとなった。

 2位でフィニッシュした38号車ドライバーであるアール・バンバーは、姉妹車12号車のペナルティが、実際には最終的な優勝者に長期的に有利に働いたと見ている。「タイヤの空気圧に関するペナルティがアンダーカットにつながり、戦略的に彼らを助けたと思う」とバンバーはSportscar365に語った。「僕たちのクルマもその戦略をとる予定だったので12号車と交換したんだ。しかし正直なところ、12号車は週末を通して僕たちよりひとつ上の階層にいた」

 リンとともにキャデラックのWECコミットが始まった2023年からプログラムに参加しているバンバーは、待望の結果に喜びを表した。「キャデラックのプログラムとして、ワン・ツー・フィニッシュを達成できたことは、とても誇らしい瞬間だと思う。サム(ヒグネット)とDC(デビッド・クラーク)がこのプロジェクトに参加し、シーズン終了前に優勝できたことを嬉しく思うし、本当に感謝している。プログラムに関わる全員が勝利を喜んでいると思うよ!」


■前回記録は2000年まで遡る

 キャデラックがフェラーリ499Pの連勝記録を『4』で止めた一方、ダラーラ製シャシーのプロトタイプは、今シーズン無敗を維持している。これは、イタリアのコンストラクターがフェラーリとの技術提携に加え、キャデラックLMDhカーのベースとなるシャシー製作も同社が手掛けているためだ。日曜日の勝利は、WECにおけるダラーラベースのLMDhカーにとって初の勝利でもあった。

 週末のキャデラックの勝利は、アメリカのメーカーが国際スポーツカーレースで最後に総合優勝を飾った2000年のニュルブルクリンク1000km以来の快挙だ。当時ALMSアメリカン・ル・マン・シリーズの一部だったこのレースでは、デイビッド・ブラバムとヤン・マグヌッセンが『パノスLMP-1ロードスターS』で勝利を収めている。

 ポルシェのLMDhファクトリーディレクターであるウルス・クラトルは、5号車ポルシェ963に乗るジュリアン・アンドラウアーが終盤に猛追し、最終ラップでセバスチャン・ブルデーの38号車キャデラックをあと少しで追い抜きそうになったにもかかわらず、レースで3位と4位に終わった2台のポルシェ・ペンスキーのワークス963よりもキャデラック勢が「単純に優れていた」ことを認めた。

 クラトルは、ポルシェによるレース終盤の追い上げは、963により適した涼しいコンディションが影響した説明した。「彼は非常に僅差のところまで迫った」とクラトルは述べた。「もっとも近づいたときは0.6秒差くらいだったと思うが、その後トラフィックに引っかかってしまった。レース中盤は見てのとおり苦戦を強いられた。しかし、気温が下がると状況は好転した」

 両ファクトリーポルシェにとって唯一の問題は、ケビン・エストーレがドライブ中にピットレーンの速度違反で、6号車に5秒のペナルティが加算されたことだった。「彼は単に早すぎるスタートを切っただけだ」とクラトル。「結局のところ、私たちはほとんどミスは犯していない。3位と4位なら問題ない」

 シェルドン・ファン・デル・リンデは、レネ・ラストとマルコ・ウィットマンとシェアした20号車BMW MハイブリッドV8で、フルコースイエローの手順違反によるドライブスルーペナルティから立ち直り、終盤に2台のプジョー9X8を追い抜き5位でフィニッシュした。

 BMW MチームWRTのチーム代表であるヴァンサン・ボッセは、Sportscar365に対し次のように語った。「また“残りのクルマの中では最高”と言える結果だろう。力強いレースができた。ドライブスルーペナルティを回避できれば、なお良かったが、それがなかったとしても順位が上がることはなかっただろう。5位は今日できることの中で最高のリザルトだったと思う」

 一方、姉妹車の15号車は、ブレーキ関連の問題でガレージに戻らざるを得なくなり、序盤に約20周を失った。ボッセは、チームがブレーキシステムを修理したものの、ヨーロッパに戻って部品の詳細な検査ができるまでは、問題の根本原因は分からないだろうと述べた。


■リタイアせず再出走した理由

 35号車アルピーヌA424も、バッテリー故障によって序盤で競争を中断しなければならなかった。「どのシステムも機能していなかった」とフェルディナント・ハプスブルクは語った。「ブレーキの感触が悪く、エンジンも適切に制御されていなかったので、ピットに戻るしかなかった。その後、バッテリーの状態がわからなかったため、バッテリーを車両から完全に切断できるまでコースに戻ることでできなかった」

 35号車は後にレースに復帰し都合200周を走ったが、総合最下位でのフィニッシュに。レースリーダーからは42周おくれた。ハプスブルクによると、レースへの復帰は来月のローン・スター・ル・マンに向けてクルマが輸送される前に、潜在的な「根本的な問題」をチェックするためであったという。

 14位と15位でフィニッシュしたトヨタ・ガズー・レーシング(TGR)は、2021年のハイパーカークラス導入以来、初めてドライバーとマニュファクチャラーの両選手権ポイントを得られずに週末を終えた。

 TGRヨーロッパのテクニカルディレクター、デイビッド・フルーリーは次のように述べた。「予想どおり、キャデラック、ポルシェ、プジョーの週末だった。ポルシェとプジョーの間にBMWが1台入ったが、おおむね月曜日から予測できた明確なヒエラルキーだった。そして、我々は戦いのなかにいなかった」

 マンタイ・ファースト・フォームの92号車ポルシェ911 GT3 Rは、LMGT3クラス6位でフィニッシュし、シリーズランキングでのリードを広げた。ライアン・ハードウィック/リカルド・ペーラ/リヒャルト・リエツ組は現在、トップ10圏外でフィニッシュしポイントを獲得できなかった21号車フェラーリ296 GT3(ビスタAFコルセ)のトリオに13ポイント差をつけている。

 一方、87号車レクサスRC F GT3は、サンパウロでの勝利によってランキング4位に浮上した。同車のドライバーであるホセ-マリア・ロペスは、WECの現在の両カテゴリー(ハイパーカーとLMGT3)で勝利を挙げた最初のドライバーとなっている。また、チームメイトのラズバン・ウンブラレスクは、彼自身と選手権史上初のルーマニア人優勝ドライバーとなった。

 ルイ・アンドラーデは、81号車シボレー・コルベットZ06 GT3.Rの最後から2番目のピットストップでタイヤ交換を行わないというTFスポーツの決定が、LMGT3クラスでの2位フィニッシュにおける重要な要因だったと評価した。

「その時点で戦っていた85号車ポルシェ911 GT3 R(アイアン・デイムス)よりも少し深いスティントに入っていたため、燃料の面で少し有利だった」とアンドラーデはSportscar365に語った。「ここではオーバーテイクが非常に難しいので、トラックポジションが非常に重要であることは分かっていた。そこで、そのわずかなアドバンテージを活かし、短いピットストップで彼らを抜き去ろうとしたんだ。それが功を奏した」

 プロトン・コンペティションのフォード・マスタングGT3は、2台ともリタイアとなった。88号車は3時間目にフロントダンパーの問題で、77号車は残り1時間15分の時点でエキゾーストの問題に見舞われガレージに入っている。アイアン・リンクスの61号車メルセデスAMG GT3エボは、マスタング以外で唯一のリタイア車両だった。


■スパ、ル・マンに続きサンパウロも観客増

 元F1ドライバーで“鉄人”の異名を取るルーベンス・バリチェロは、ブラジル国旗を振って36台のマシンにフォーメーションラップ開始の合図を送った。LMGT3のポールポジションを獲得したエドゥアルドの父親である彼は、金曜日と土曜日はインテルラゴスにはおらず、NASCARブラジルシリーズの2ラウンドに参加し、カスカベル国際サーキットでのレース1で勝利を収めた。

 一方、エドゥアルド“ドゥドゥ”・バリチェロは、10号車アストンマーティン・バンテージAMR GT3エボを駆りレース最終盤に85号車ポルシェを抜いてクラス表彰台を獲得した後、『グッドイヤー・ウイングフット・アワード』を受賞した。

 エドゥアルドは、表彰台の最後の位置を巡って争ったアイアン・デイムズのドライバー、ミシェル・ガッティンのディフェンスを称賛した。「彼女はとても良い仕事していた」とSportscar365に語ったバリチェロJr.。「彼女は普段からあのように素晴らしい仕事をしていると思う。だから、彼女が(怪我から)ふたたび立ち直っているのを見ることができて、本当に嬉しかった。良いバトルだったが、最終的には皆が勝ちたがっているんだ」

 WECは、7月11日(金)から13日(日)まで3日間の週末の観客数が8万4741人であったと報告した。これは2024年のインテルラゴス復帰戦に集まった7万3205人を上回るものだ。

 シーズン第5戦が終了し、WECはサマーバケーションに入る。次のレースはアメリカ・テキサス州のサーキット・オブ・ジ・アメリカズで行われる『ローン・スター・ル・マン』だ。開催日は9月5〜7日となっている。

[オートスポーツweb 2025年07月17日]

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