2023年F1シンガポールGP レッドブル共同オーナーのチャルーム・ユーウィッタヤー クリスチャン・ホーナーがレッドブルのモータースポーツ部門におけるすべての役職から解任されるという衝撃的な出来事が起きる少し前に、レッドブル本社の株主構成に変化があったことが分かった。
5月末にレッドブルGmbHの株主の持ち株比率に変更がなされた。現在では、主要株主二者が再び同等の立場に戻り、残りの株式を第三者が保有している。
1982年、ディートリッヒ・マテシッツが、アジアでエナジードリンク『クラティンデーン』を製造・販売していたタイの大富豪チャリアオ・ユーウィッタヤーと提携した時、マテシッツとユーウィッタヤーは、新会社レッドブルGmbHの株式の49パーセントずつを受け取り、残りの2パーセントはチャリアオの長男であるチャルームに割り当てられた。チャリアオが2012年に死去した際、その息子は父が持つ株式を相続し、結果としてレッドブルの筆頭株主となった。
しかし、マテシッツは大きな尊敬を集め、多大なる影響力を持っていたため、この株主構造の変化は、会社の体制には一切影響を及ぼさなかった。
CEOの座にとどまり、すべての重要な決定を下し続けたマテシッツだが、2022年10月に死去し、それによって状況は変化した。彼の息子マーク・マテシッツとチャルーム・ユーウィッタヤーの関係は、あくまで商業的なものであり、彼らの父親たちが互いに抱いていたような深い尊敬や完全な信頼に基づくものではない。
2024年3月、マックス・フェルスタッペンのマネジメントに後押しされたレッドブルのオーストリア側株主が、スキャンダルに関与したホーナーを解任しようとした際、タイ側の株主が、多数株主としての地位を行使し、ホーナーをその職にとどめた。
このことが、両陣営の協調体制に何らかの影響を与えたかもしれない。理由は明らかにされていないものの、5月末に、チャルーム・ユーウィッタヤーが保有していたレッドブルGmbHの株式の2パーセントが、ジュネーブに拠点を置く信託会社『フィデス・トラスティーズSA』に譲渡された。
レッドブルGmbHはこの件について、当然ながら「社内またはファミリーに関する決定については公にコメントしない」という発言で対応した。そのうえで広報担当者は、「この種の信託構造は、長期的な継続性を確保するために、大規模かつ成功した企業において広く確立された慣行である」と付け加えた。
この株式関連の変更は、マテシッツとユーウィッタヤーの間で結ばれた元々の契約の一部だった可能性もある。それによりユーウィッタヤーが自発的に筆頭株主の地位を手放したのかもしれないが、いずれにせよ、彼はレッドブルのモータースポーツ体制に関する決定を強行する力を失い、その結果、ホーナーをその役職にとどめることができず、マーク・マテシッツおよびその経営陣の意向を受け入れざるを得なかったとも考えられる。
さらなる詳細は今後明らかになっていくだろうが、現時点では、ホーナーの個人的問題によってレッドブルのモータースポーツプロジェクトに生じた混乱が、飲料会社としての組織構造にまで影響を及ぼしたように見える。そうだとすれば、レッドブルにとってモータースポーツ部門が極めて大きな存在になっているということだろう。
[オートスポーツweb 2025年07月17日]